自分勝手なルール1
日陰者生活をしてきた俺が、学校一の美少女と仲良くなり、クラス一可愛い子とも仲良くなって、更にバスケ部エースのイケメンに啖呵を切る。
他クラスからそんな馬鹿いるの?みたいに、教室の人口密度が増していた。まるで檻の影に隠れる動物でも探しているみたいだ。
昨日の一件がここまで拡散するものなのか、人から人へ伝播して、中には面白半分に覗きに来た奴もいるだろう。
面倒だ。先生が来るまで廊下の隅でスマホでもいじっていよう。
「奏、おはよう。何見てるの?」
まりんが隣からスマホを覗き込む。
「おはよう、見ての通りだよ。皆、暇なのかね」
壁の花のように、誰もが俺の前を素通りしてたのに、花瓶を宝石に変えただけで、こちらを見始めた。
「皆が奏に注目だね。今どんな気分!」
「気が休まらない」
「分かる!気が休まらない。でも、奏といると不思議と気にならないわよ。ここに詩子も入れば、完璧な青春のワンカットの完成ね」
「……流石だな、まりん。俺も今、そう言おうと思った」
「そのフレーズ、私が前に使った奴じゃん。もしかして、私のことが好きになった?」
「俺はルールを守れる男……それは契約違反だ」
美少女という外箱を何よりも誇りに持ち、それを一切嫌いにならない。誰かが箱の中身を見つけて、箱ごと中身を捨てられないと、己の存在を肯定できない。
そんな呪いを自ら課した女の子は、誰からも美少女に見られようと演じている。
笑顔を絶やさず、時には弱音を見せ、言葉遣いも変えて、君はそんな素敵な私を捨てられると、問いただされている。
だから、俺は期待しない。
「そうね、君は私を好きにならない。こんなにも嬉しいことはないわ。安心して恋することができそうかも」
「それはそれは、尚更、スケベを排除しないとな」
「元気ないわね?もしかして詩子不足で眠いの!」
まぁ、癒しが足りないのは事実だな。
「リンちゃん、メェー君、おはよー!」
教室から出てきて、キョロキョロ周りを見渡し、俺たちを見つけるや否や、元気な挨拶をしながら手を振っている。
何の悩みもなく、俺達を笑顔で迎え入れてくれる学校のオアシスがそこにある。
「ねぇ、なんで腕を組んで、二本指立てて、手のひら向けてるの?」
「知らないのか、王子様の代表的な挨拶だぞ?」
戦闘民族の王子様だけど。
「なるほど、そうやって私の嫉妬を煽るってわけね。ワクワクするわね」
元ネタ知らないはずなのに、何で噛み合ってんのよ。




