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赤月詩子は友達が欲しい6


「それでね私、貴方に言いたいことがあるの」

 

 まだ少し怯えた表情で詩にゃんは次の言葉を待つ。


「私と友達になって!」


 脳に酸素を供給するために、深く呼吸する。思考回路がバグり始めてるな俺。


「な、何で、友達になりたいの?」


 狂人の虚声と取れていい告白だ。

 誰だって動揺は隠せない。


「至極真っ当な理由だ」


 つい言葉が出てしまった。


「流石ね、奏君。至極真っ当よ。詩にゃんは誰でもいいから臆病な自分を隠したかった。誰でも良いってことは、手をつなぐ相手のステータスなんて気にしない!これほど友達としてふさわしい条件はないわ」


 詩にゃんに抱きつきながら、頬と頬をスリスリしている。

 事態を全く理解してない詩にゃんはされるがままだ。


「意味が分からないよ」

「赤月詩子さん、貴方とは大親友になれるってことよ」 


 マリンは世界中の幸せを噛みしめるようによだれを垂らしていた。

 先ほどまで威圧的だった女の子が、一変して甘えてくるのだ。

 意味を理解できない詩にゃんは首を斜めに傾けた。

 詩にゃんの理解が追いついていない。このままだと話が進まないから俺が説明するしかない。


「マリンは美少女って外面を全く気にせず、誰とでも手を握ってくる詩にゃんをご馳走と思ったんだよ。

 詩にゃんは失っても妥協できる繋がりが欲しいから、相手のステータスなんて気にしない。それはマリンを一人の人間として評価することになる」


「そう、私を正しく評価してくれる人なのよ!」


 振り子のように右から左へ、首をかしげる詩にゃん。その素振りは庇護欲を沸き立たせるには十分な破壊力を感じた。



「………まさか、私と友達になりたいだけ、なの?」


 真実を告げ、罪を白日の下に晒した裁判官が、今や熱狂的な信者になっている。


「うん!」


 嬉しくて尻尾を振ってる犬みたいだな。


「それは……、えっと、いいよ?」


 ほっと、息を撫で下ろす。

 その安心さえ、絶対的美少女様の前では風前の灯だと彼女は知らない。


「駄目よ!」


 マリンのドスの効いた声が世界を凍らせた。

 安堵した矢先のこれだ。詩にゃんは震えていた。


 もはや、自分の常識では測ることのできない怪物を目の前にして、俺へと救いのSOSを込めた視線を送ってきた。


「私は詩にゃんと大親友になりたいの、替えの利かない唯一無二の大親友。私を代用品(スペア)になんてさせないからね」


 「ひっ……」


 俺は思わず頭に手を乗せる。

 マリンの瞳は詩にゃんを捕らえて、俺の角度からじゃ見えない。でも、あの時と同じなのは分かる。


「契約を交わさない。私は貴方と友達になりたい。けど、貴方は私を信用できない。だから、ここにいる奏君と友達になるの」


 狂気に次ぐ、狂気。マリンの言葉と言動に一貫性なんて感じない もはや、ビジネスというより恐喝だ。


「え、え……」


「貴方だって本当は『友達』が欲しいんでしょ? でも『友達』以上の関係は妥協できるリスクの範疇を超えている。貴方は『友達』が欲しい、寂しがり屋という依存性を悟られないように、ひとりぼっちを許さないように広く薄い関係で自分を守る、ひとりぼっちな自分すらも拒絶する。診断するなら、『ひとりぼっち拒絶症候群』かしら?」


 椿真鈴の独特的な診断が下された。



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