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Basketball Synergy  作者: 双鶴


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8/11

8話

体育館の空気は、試合前の緊張で張り詰めていた。

島内大会。千種寺中と湊波中の交流戦。

男子も女子も、今年は主力が揃っていて、勝ちに行けると期待されていた。


女子の試合が先だった。

美幸はスタメン。

試合開始の笛が鳴ると同時に、彼女はまるで別人のように動き出した。


鋭いドリブル。

迷いのないパス。

相手のディフェンスを切り裂くようなステップ。

そして、ゴール下でのシュートは、まるで時間が止まったかのように美しかった。


「美幸、ナイス!」

「やば、今日の美幸、鬼だな!」


ベンチから歓声が飛ぶ。

体育館の空気が、美幸のプレーに引き込まれていく。


でも、美幸の心は、どこか集中しきれていなかった。

瞬の姿が、頭の片隅にちらついていた。

男子の試合が控えている。

そのことが、なぜか気になって仕方なかった。


後半、わずかにパスのタイミングがずれた。

シュートの軌道が、ほんの少し甘くなった。

誰も気づかない。

でも、美幸自身は、はっきりと“切れの無さ”を感じていた。


試合は勝った。

美幸はMVPのように讃えられた。

でも、彼女の胸には、言葉にならないもどかしさが残っていた。


男子の試合が始まった。

瞬は、いつも通りスタメン。

序盤から、仲間のミスを完璧にフォローした。

リバウンド、カバー、パスの受け直し。

誰かが崩れそうになると、瞬が必ずそこにいた。


でも、彼自身のシュートは少ない。

アシストばかり。

引き立て役に徹していた。


「瞬、ナイスカバー!」

「さすが、瞬。見えてるなー」


部員たちは賞賛する。

でも、華やかさはなかった。

目立つのは、得点を決めた仲間たちだった。


試合後、相手校のコーチが声をかけてきた。


「君、瞬くんっていうの? すごいね。あのポジショニングと判断力、なかなかできるもんじゃないよ」


瞬は笑って「ありがとうございます」と答えた。

でも、心の中では、何かが引っかかっていた。


美幸のプレーが、どこか不安定だった。

誰も気づいていない。

でも、瞬にはわかった。

彼女の動きに、いつもの“芯”がなかった。


原因はわからない。

でも、何かが起きている。

それなのに、自分は何もできなかった。


「役に立てなかったな…」


瞬は、体育館の隅でひとりつぶやいた。


部員たちは、勝利を喜んでいた。

ハイタッチ、記念撮影、差し入れのジュース。

笑顔があふれていた。


圭子は、その輪の中に入りながらも、2人の違和感に気づいていた。

美幸の視線が、瞬を追っていること。

瞬の笑顔が、どこか空回りしていること。


でも、圭子は何も言えなかった。

自分の瞬への思いを、隠すのに必死だった。


その夜、体育館の照明が落ちる直前。

誰もいないベンチに、美幸のタオルが置き忘れられていた。

瞬はそれを見つけて、静かに手に取った。


何かが、少しずつ、ずれてきている。

でも、まだ誰も、それを言葉にできなかった。


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