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Basketball Synergy  作者: 双鶴


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6/11

6話

千種寺中の文化祭は、島の人たちも楽しみにしている一大イベントだ。

商店街の人々が屋台を出し、保護者が差し入れを持ち寄り、町内会のじいちゃんばあちゃんが体育館の隅で将棋を指す。

部活ごとの出し物も、毎年恒例の見どころになっている。


今年、バスケ部は「映像展示」と「体験コーナー」を担当することになった。

映像は、練習風景や試合の様子を編集して流す。

体験コーナーでは、フリースロー大会やドリブルチャレンジを行う予定だ。


映像編集係に選ばれたのは、瞬と圭子。

瞬は「俺、動画編集ソフトちょっと触ったことある」と言い、圭子は「記録係だから、素材は全部持ってる」と答えた。

自然な流れで、2人はペアになった。


美幸は、体験コーナーの準備係。

ボールの空気チェック、ゴールの設置、タイムスケジュールの調整。

体育館の隅で、空気入れを手にしながら、ボールの感触を確かめていた。


「瞬、あれさぁ…」

思わず声をかけそうになって、口をつぐむ。


いつもなら隣にいるはずの瞬が、今日は遠くの机で圭子と並んで作業している。

パソコンの画面を覗き込みながら、2人で何かを笑っていた。


その笑顔が、なぜか胸の奥をざわつかせた。


「…別に、どうでもいいし」


そう呟いて、ボールを強めにドリブルする。

その音が、体育館に乾いたリズムを刻む。


放課後、商店街の八百屋の奥さんが差し入れのミカンを持ってきた。


「美幸ちゃん、これ部活のみんなで食べてね。瞬くんにも渡してあげて」


「ありがとうございます。瞬は今、映像係でパソコンと格闘中です」


「そうなの?あの子、ほんとに気が利くよね。昨日も荷物運ぶの手伝ってくれてさ」


美幸は笑顔でうなずきながら、心の奥で何かが沈んでいくのを感じた。


その夜。

美幸は自室でプリントを整理していた。

文化祭のタイムスケジュール、体験コーナーの配置図、ボールの空気圧チェック表。

どれも自分が担当する仕事。

でも、手が止まる。


瞬の声が、頭の中で何度も響いていた。


「文化祭って、島の人たちが一番楽しみにしてるイベントだよな。だから、ちゃんと作りたい」


その真剣な顔。

そして、圭子と並んで編集していたときの笑顔。

あの距離感。

あの空気。


胸の奥が、じわじわと熱くなる。

理由はわからない。

でも、何かが気になって仕方ない。


美幸は立ち上がり、空気入れを手に取った。

ボールの空気は、昼間にチェックしたばかり。

でも、もう一度確認したくなった。

いや、確認する“ふり”をしたかった。


玄関を出て、隣の瞬の家に行き、瞬の部屋の前で立ち止まる。

中からは、PCのキーを叩く音がかすかに聞こえる。

ふと息を吐き、扉を開いた。


「瞬、入るよー」


「ん?どうした?」


「空気入れ、ちょっと貸して。明日の分、もう一回見とこうと思って」


「ほい、そこにある」


美幸は部屋に入るなり、床に散らばった漫画と靴下を見て眉をひそめる。


「片付けなよ、踏んでケガするよ。手伝うから」


「いいよ、これがお年頃男子の部屋だよ。むしろこの散らかりが俺の精神状態を表してる」


「それ、ただの言い訳」


「いや、芸術的混沌ってやつ」


美幸は空気入れを手にしながら、瞬の机の上に置かれた文化祭の編集メモに目をやる。

圭子の字で書かれた「美幸ちゃんのスロー再生、残したい」の文字が見えた。


「…ふーん」


瞬はベッドの上でゴロゴロ転がりながら、美幸を見上げる。


「Thank you, mam」


「は?誰がmamだよ。てかその英語、使い方間違ってるし」


「いや、俺の中では美幸は保護者みたいなもんだから」


「勝手に年寄りにすんな」


美幸は呆れたように笑って、空気入れを抱えて部屋を出た。

でも、心の中では、何かがまだざわついていた。


文化祭は、まだ始まっていない。

でも、何かがもう始まってしまった気がしていた。


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