NTRから始まる悲哀3(寝取り野郎の憂鬱)
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つづきの『ざまぁ』編です。連載にしておくべきでした(謝)
俺は長谷川俊樹。大学2年生だ。文学部に通っているが、別に文学には興味はなかった。進学を希望したのも遊べる学部という文系ならどこでも良かった。適当に講義に出席し、時には代弁を知人に頼んで単位を取り、楽して卒業する。
一番の興味は文系ならではの遊びサークルに参加して女を食いまくるという社会経験の為だった。彼氏が居ようが構わない。寧ろ彼氏や夫がいる方がゾクゾクする。俺のこういうのって、変な性癖だろうか?
メディアらが理系は根暗、社会人に大切なのはコミュニケーション能力だと嘯いて流行らせ、実際には優秀な人材ばかりの理系の奴らをコミュ社会弱者にして俺たちの様な遊び好きコミュ強だけの人材は大いに助かることとなった。一度理系の講義を観に行ったが、物理的な単位すらサッパリ分からなくて二度と接しまいと心に誓った。
「あれだな、マスコミでのコミュ強・崇拝は、理系の苦手なメディア人のでっちあげだな」
しかし、もちろん、そんなメディアを批判する正義感なんぞ持ってはいない。よくぞ流行らせてくれたと感謝するばかりだ。ふふふ、まるで馬鹿文系サークル不祥事の先輩たちが就職しているみたいだな。俺も大学卒業後はマスコミに就職して美味しい思いでもするかな。
だが、もう詳しい話をする必要もないだろうが、俺は前代未聞の謎事件に巻き込まれることになるとは神のみぞ知る出来事だった。堀の中に放り込まれた俺が思うに、結果的に為人が分からなかった自分の許容のなさに嫌気が走る。
元カノの斎藤清美が記憶喪失になって、それをチャンスだと体の関係のなかった清美を経験豊富と偽って二人きりになれるカラオケやホテルで初めての事をこなした。いや、こうも簡単にいくとは思わなかったがね。口だけで「二人の将来の為、結婚するんだから浮気をするな」等々、強引さを醸し出して言っておけば清美は愛情を感じてホイホイとどこにでもついてきた。
結婚? 有言実行? 責任? なにそれ、美味しいの?
俺は大学でもサークルに来ていた新入生に薬を飲ませて行為をし、それを動画に撮って保存していた。大量の素材が集まった。これらをネットに流して課金すればお金が簡単に集まるようになった。人気者の動画作者と一部界隈には尊敬されていた程だ。
「ふふ……、ちょろい、ちょろすぎる。社会で偉そうに出世するだなんて簡単だ。女は儲かる、こんな簡単な事にも気づかない連中なんてダメダメだろう。俺は勝ち組だ。世間は厳しいだなんて親も馬鹿だな。楽勝じゃないか」
世間の荒波も何のその、調子に乗っていた俺だったが、その先に地獄が待っていようとは、未だ気づかなかった。
・・・・・・・・・・
まず最初に清美から突然、別れを切り出された。
「トシキ君、あなた最低ね! 嘘をついて私とは別れていた筈なのに彼氏だと嘯いて、私の身体を弄んでサイテーよっ!」
「おい、どうしたんだ突然、清美のことを遊んだなんて全く心外だぞ?」
「ちょっとスマホ貸して。ロックを外してね」
「嫌に決まってんだろ? 彼氏彼女の関係でもプライベートは侵害するなよ」
「その中に私との行為の動画を盗み撮りしたでしょ! それを確認させて。動画がないなら、ないと確認するわ」
「や、やめろ! お前みたいな無神経な女とは思わなかった、お別れだわ、クソ」
「動画、あるのね? 見せられないのがその証拠。だって、泣いてる女の子が一杯いるもの」
「ふん、俺がフった女たちか。悔しがって俺を追いかけてる女たちだよ。そんなストーカー連中の悪評に踊らされて、バカな女だな清美は」
「じゃぁ、スマホの動画や画像を見せてよ。何もないなら隠さないで。それを確認するかどうかで私が別れるかどうか決まるのよ? それよりプライベートが大切っていうの?」
「プラーベートは常に守らねばならないもんだ。それを暴こうとする恋人の姿勢が許せないね」
「トシキ君は私のスマホを無断で覗いてたことあったよね? それはどうなの?」
「……くっ」
「あなたはね、自分がやる事には物凄く甘いの。他人が同じことをしたら許せないって、自己中心にもほどがあるわ!」
「知るか、もうお前とはこれっきりだ。最悪な女だったんだな、お前はさ」
「本当にクズな男ね……私の目は本当に曇らされていたわ」
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トシキの部屋にて新入生の女子学生:奈緒美と。
「ちょっと、トシキくん、このPCの動画って……、私とのことが出てるんだけど」
「ああ、お前との愛の行為は、将来、子供に見せるために記念にしなければならないと思ってな、保存しておいたんだ」
「待ってよ、消してよ。子供に見せるんだったら公園とかでのデート風景でしょ? 行為中の映像なんてありえないでしょうが……」
「子供への性教育だよ」
「消して! ねぇ、今すぐ消して!」
「ダメだ、しつこいなぁ。俺だけしか見ないんだから良いだろ?」
「駄目に決まってるじゃん! 止めてよ。人格権の保護を守ってよ! 消して!」
「いいから、俺だけが楽しむんだから。お前がいない時に寂しいから、その寂しさを紛らわせるのに必要なんだよ」
「動画や画像を保存したりされると、別れた際にリベンジポルノが怖いの。あなた以外の人がコレを流出させるかもしれないし、私を安心させてよ、消してよ」
「分かった。夜に削除やっておくよ。そもそも俺以外が観ないんだし、他人がこれを見ることは未来永劫ないぞ?」
「あのね、私より先にサークルに入った娘Aちゃんがね、新歓の飲酒で寝込んでヤラれてしまって動画を撮られたのよ。それを聞いて私も怖くなってるの。今すぐ、私の目の前で削除して、お願い!」
(チッ! バレたのか、Aのやつ、バラしたら動画を流出させると脅しておいたのに……、いや、もう流出させていたわ。結構なアクセス数で課金も多かったな。いい素材だった)
「ちょっとトシキくん! お願いよ、何考えてるの? まさか……」
「いや、俺だけが観て楽しむ、そう言ったろ。信じろよ。信用ないなぁ、俺の事、もっと信用してくれよ。愛し合った仲じゃないか」
「愛し合あったって、私は恋人同士になると思っていたのに、ただヤラれただけで何も恋人らしいデートや愛情も進展してないし、あなたのPCには私以外の女の子の動画が沢山あるのは何故なの?」
「あーもう、面倒くさいな、消してやるよ、ほら、よく観ておけ」
(まぁ、複数あるから問題ないしな)
「分かった。もう二度とトシキ君には近づかないわ。他の女の子も騒ぎ始めてるけど、私は知らないからね。少しでも良心があるのなら、女の子たちの行為の動画は消してあげて」
「騒ぎ始めてるって? はいはい、分かった分かった。もう帰れ」
このように、最近は面倒くさい出来事が多くなってきた。女どもは動画を消せ消せと煩いし。大事な収入源なのに『はい分かりました』と消せるかよ。保存は複数にしてあるんだよ。
トシキは危機管理能力を無駄なことに費やしていた。
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奈緒美たち新入生の女子たちは、酷く後悔していた。ヤリサーだとは知らず、勧誘されるままに所属し、新歓パーティにて酔わされ、寝込んだ隙に性行為を無理やりにされて動画を撮られたことに。
信じられなかった。メディアの報道も何故か少なくて、ヤリサーがそんなに酷い所とは知らされる機会すら少なかった。水面下では沢山の女子学生たちが泣いていた事だろう。もちろん、彼氏がいれば告白して彼氏も泣くし、親御さんの中には告訴すると警察へ駆け込んだ人も多かった。
しかし、こういう事が繰り返されているのにもかかわらず、狡い男子学生らは後を絶たず、被害は続出した。
トシキのPC及び外付けHDの中には、新歓をはじめ途中入部の被害女子らの睡眠レイプの動画に溢れていた。ほとんどの女子学生は泣き寝入りを強いられていた。何十人もの被害者がいるのにもかかわらず、どうしてなのか、普段正義感の発言をする論客といわれる人たちは食いつくことがなかった。
「あのね、正義感の発言をよくする良識人ぶった人達ってね、いざという時、本当に役に立たないのよ。でもね、たった一人でもいい、頼れる人がいれば世界は変わるわよ」
新入生たちの相談に乗っていた清美が発言した。大学のサークルというのは、主にその大学の学生らで構成されているが、他の大学から参加者がいないかというとそうではない。サークルによっては他大学生の参加を大歓迎するところも多いのだ。
「えっとね、問題の映像を持つ先輩たちの名前を教えて。そして暫く時間を頂戴。そうすれば全部消えるわよ」
「「本当ですか?」」
「うん。大丈夫だから泣かないでね。そして安心して待っていて頂戴」
「「はい」」
「それから、二度と同じ過ちはしない事。また彼氏彼女だからといって安易に行為をしないことね。また相手をよく観察して本当に信頼できるかどうか判断する事。経験が未熟だから男の判断がつかないなら、信頼するのは一旦止めることね」
清美がなぜか信頼される大人の女性になっていた。
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【時は流れる】
トシキたちヤリサーの面々は他大学の学生を含め全員が逮捕された。証拠の動画たちと共に。酒を飲まし、酔いつぶれる女子達、それを笑いながら仲間とスカートをめくる男たちの顔、全てがバッチリ記録されていた。裁判も簡単に終わる事だろう。
警察が着いて誠と清美たちはパトカーに乗せられ警察署へ、性行為をする度に薬を飲まされていた女子達は病院で検査を行うため無音の救急車で移動、追加のパトカーで関連サークルの加害の男たちが逮捕され拘置所へ。
その後、警察署にて事情聴取を長々と受けた。そして、後日、レイプなどの暴力行為のあった現場検証があるから呼び出しする場合もあるからねと教えられた。被告学生の各大学へも警察から連絡を入れる旨があり、この案件は事件化するとのこと。もちろん裁判が始まった場合も検察から呼び出しがあるかもという話をされて、誠たちは、ようやく解放されたが、事件の内容が性交渉の問題でもあるため裁判の参加は別室で被告らとは顔を合わせなくてもいいという配慮があるそうだ。
清美はじめ被害女子らは警察へ告訴状を提出した。被害届よりも強い書類で、これを受理した警察は必ず捜査しなければならない。捜査の結果、男たちに多数の犯罪の疑いがあり、証拠を積み上げ裁判所での刑事訴訟が始まる。
十数人もの逮捕者は被告人となり、次々と犯罪が暴かれていく。
「なぜ足がついた? 証拠となる動画はIP公開のない客すら一蓮托生・呉越同舟の課金エリアにあり、女たちが見つけることはまずない筈だ」
トシキらのサークルはやはり組織化されており、レイプ映像によるネット課金にて泡銭を得て遊行費や媚薬などのクスリの入手に使われた。サークルの大学生たちは、女の子を貪り食うという犯罪を繰り返しており、過去の被害者らも訴えを始め、複数の前科持ちが続出することだろう。
刑事裁判だけでなく民事裁判も増え、高額な賠償金、慰謝料が発生したが、ようやく現実を見たヤリサー連中は、親が自宅をはじめとする不動産を手放すまで楽観的であった。大学の風紀は改善していった。トシキは逮捕され拘置所送りとなっているが、女の子に与える酒類に混ぜて投薬した薬が麻薬系という事で、管轄の違う厚生労働省が出張ってきて事情聴取を繰り返した。麻薬系は厚生労働省の管轄、麻薬捜査官であり、警察官より強い捜査権を持っている。
「ちくしょー、どうしてこうなった!?」
民事裁判はゴネようとすれば最高裁まで長く掛かるのが一般的だが、刑事裁判は羨ましいほど早い。事件解決のために優先されるからだ。中途半端な法廷知識でノンビリできると高を括っていたトシキは思わぬ即決・断罪で唖然とするのであった。証拠が明らかだった裁判において国選弁護士に検察相手の控訴審は無理であろう。
拘置所から刑務所へと輸送された車内で彼は何を思うのか。反省するのか、ただ単に捕まったのも不運だと思っているのか、その心境は彼以外には分からない。
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トシキたちの逮捕直後にネットをはじめ、画像・動画を広げたキーマンらのPCやスマホからもレイプ動画たちが全て消えた。性行為に関する何もかもが消えていた。
「ねぇ、まことさん、指示された通りにしたけど、何かしてくれたの?」
「うーん、それがよく分からないんだ。何かしたとすると、たぶん、未来のボクかなぁ」
(意識が飛ぶ時が時々あって、未来のボクが乗り移っているんだろう)
ボクは大好きな人は大切にしたいし、自分だけの人であって欲しいと思っているが、トシキはそういう恋人がいる彼女を寝取るのが趣味だとか。自分の彼女は縛りたいのに、他人の物を欲しがるという子供みたいな男だったと思い起こす。
「変な会話よね、わたしたち……」
「そうだね、清美さん」
些細な出来事がいつの間にか何故か解決している、そんな与り知らぬところで起きた出来事。貴方にもそんな”いつの間にか解決していた”事ってないだろうか? もしあるのなら、未来からやってきたある薬を発明した人のせいかもしれません。
「ねぇねぇ、今度ね、大きな小動物の遊園地行かない? 私の友達を紹介するよ。 里江ちゃんっていうの。可愛い娘よ。可愛くて優しいからって直ぐに惚れちゃダメだよ」
「大きな小動物の遊園地って? ああ、あの大規模なテーマパークね。いいよ、行こう。僕ってそんなに惚れやすくないよ?」
「でも、きっと惚れちゃうんだもん。まことさんのタイプだし(しかも芸能人なんだよ)」
「フフ、じゃぁ、村越くんを誘おうか。彼は大きな小動物が好きだからね」
「村越くんかぁ、彼はちょっとマイペースでテーマパーク内をうろつきそう……」
「隠しキャラとか探すの好きだからなぁ、でも、そんなところは清美さんと性格が合いそうだよ」
「なっ!」
『いまだにあなたが好きなのに!』と頬を膨らませプイっとむくれてしまった清美だったが、何も気づかない誠。
鈍感系難聴主人公とは彼そのものであった。
「ム~~~~~~」
(せっかく胸元の開いたワンピースを着てきたのに! 褒めてもくれないし)
「機嫌なおしてよ、清美さん」
(今日は話をしに来ただけだ。清楚な彼女をエロい目で見ては駄目だ。キリッ)
こうして運命の分岐点は誰も気づかないうちに過ぎ去っていた。
将来、里江と一緒になった誠は、芸能界の膿を出すことに助力することになるが、それはまた別の話である。
↓ 清美
★トシキという人物像は実際に居て、文系・理系どころか大学、社会にも不要、それに気づかず犯罪を繰り返して、結果、前科10犯以上になったという男をモデルにしました。台詞も実際に彼が言っていた事です。