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転生爺のいんちき帝王学 〜日の目を見ずに生きてきた最強爺、隠居間際で弱小王女に拾われる〜  作者: 嶋野夕陽


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〈要塞軍〉を呼んだ目的

 場所は変わってブルトンの拠点。

 その場にいるのは、ブルトンと数人の配下。

 ラウンドと〈要塞軍〉の兵士たち。

 そしてグレイとクルムである。

 別に喧嘩をするために場所を変えたわけではないのだが、先ほどの殴り合いがあったせいで、やや緊張感のある空間が出来上がっていた。


「ブルトンさん、〈要塞軍〉の方には私の方からあらかじめ声をかけていました。工事が終わるまでの間、夜間の警備を頼めないかと」

「俺たちだって警戒くらいできる」

「はい、それはよく分かっています。ただ、いざ何かあった時に、公的機関でないブルトンさんたちが手出しをすると、他の勢力に付け込まれる恐れがあります。ですが、私が依頼した〈要塞軍〉の皆さんが対処した、という形にさえなれば文句をつけられるものはいません」

「騎士とか兵士に警備してもらわなかったのはなんでなんすかね?」


 ブルトン側のナンバーツーにあたる、メットが当然の疑問を呈す。

 おそらく今までも、国の事業なのに夜になるとちゃんと見てくれねぇんだくらいに思っていたのだろう。

 

「彼らは協力的ではありますが、基本的には中立を保っています。人数を考えても、常に夜間まで特別な警備をすることは難しいでしょう。ただ、王女である私の要請で、同じ国の軍にあたる〈要塞軍〉に、期間限定で警備を任せることくらいの融通は利かせられます」

「めんどくせぇな」

「面倒だな」

「面倒じゃのう……」


 ブルトン、ラウンド、グレイがほぼ同時に同じことを言った。

 クルムは一瞬、こんなのばかりかと空を仰ぎかけたが、我慢しつつ話を続ける。


「これで、警備の方で打てる手はすべて打ちました。……とまぁ、そんな事情があったので、ブルトンさんに喧嘩を売りに来たり、貧民街の西地区を取り締まりに来たわけでもなかったということです」

「まぁ、俺はブルトンを探しに来たんだがな」

「何言ってんだこの爺……」


 クルムは黙り込む。

 そうなのだ、これに関してクルムは何も文句を言うことができない。

 何せクルムは要塞軍に出した手紙に、『貧民街の中にめぼしい人材がいれば、〈要塞軍〉に勧誘してはどうでしょうか』と書いてしまっているのだ。

 一応誘い文句の一つではあったのだが、クルムも嘘をついて呼び寄せたつもりはない。

 本来は、ちょっと厳しめの犯罪者を〈要塞軍〉の方で引き取ってもらえないかと思っていたのだ。問題が先に起こってしまったので、仕方なくまずそうな指名手配犯は先に確保してしまったが、それらも後程ラウンドと引き合わせるつもりでいる。

 何せラウンドは、囚人を引き連れて旧アルムガルドへ赴き、しっかり〈要塞軍〉と〈リガルド〉という成果を作り上げたという実績がある人物なのだ。

 ある意味犯罪者に関するスペシャリストである。


「貧民街にも気骨のある者がいるだろう。〈要塞軍〉じゃそんな奴らをいつだって募集している。ブルトン、お前ならすぐに部隊長を任せてやってもいい」

「ああ? 誰がてめぇの下なんかにつくかよ!」


 二人がいがみ合っているところに、クルムは咳ばらいをしてから話に割って入る。


「〈要塞軍〉は立派な仕事です。給料もいいですし、なくならない仕事でもあります。もし希望する人がいれば、貧民街の住民の皆さんの、将来の仕事先として検討しても良いと思っているのです。正式に〈要塞軍〉の一員となるのは、〈万年祭〉がある程度落ち着いて、ラウンド様が〈リガルド〉に戻ってからになりますが」

「俺もまだまだ元気だが、次の世代を集めてこいとリゾルデに発破をかけられたからな! あちこち巡っていい奴がいたらどんどん勧誘するぞ! 王女よ、それでいいのだったな!?」

「はい、受けるかどうかは相手の自由ですので、無理強いはしないでください」

「はっは、拳を交えれば大体のことは分かる!」


 その拳を交えるのをやめてほしいと思ったのだが、あまり口出しをして上手くいかなくなっても困る。ラウンドの犯罪者をまっとうな軍隊に仕立て上げる技術というのは、他に代えがたい才能でもあるのだ。

 クルムは静かに口を噤んで、ラウンドの言葉をスルーした。


「ブルトンさんも色々と思うところがあるかと思いますが、今後は〈要塞軍〉の皆さんと協力して事に当たってください。よろしくお願いいたします」

「…………わかった。ただ、妙なことをしやがったら邪魔するぜ」

「活きが良いことだ! いつでもかかってこい!」


 ブルトンはラウンドの反応に、いらだたしげに舌打ちをした。

 グレイとはまた一風違った怪物爺さんに、ペースを乱されているのだろう。

 ブルトンも中々に年季の入った親玉っぷりをしているのだが、何せこのラウンドは、この調子で五十年も軍隊を束ねてきた個性の塊だ。

 ぶつかり合って勝利することは中々に難しい。


「ええ……では、改めてラウンド様にはお話がございますので、王宮の方までご同行いただけますか?」

「王宮か……、ま、いいだろう」


 ラウンドが一瞬難色を示したのは、王宮に碌な良い思い出がないからだろう。

 今となってはラウンドも伯爵。

 その拳を振り上げたら真正面から逆らってくる者などまずいないだろう。


 そんなラウンドにすら面倒だと思われる王宮は、やはり昔から変わらず魔窟であったに違いなかった。

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― 新着の感想 ―
ラウンドの相手はやりづらいだろうな。 お偉いさんが真正面から拳で勧誘してくるわけだ。
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