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転生爺のいんちき帝王学 〜日の目を見ずに生きてきた最強爺、隠居間際で弱小王女に拾われる〜  作者: 嶋野夕陽


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ごちゃごちゃごちゃごちゃ

「……結局、私の我がままでしかなかったのです。そんな我がままに、ジグ殿を……、たくさんの人を巻き込みました。選択したのはジグ殿ではなく、私です」


 ジグは戸惑ったような顔をしながら静かに話を聞いている。

 それを見ながらクルムは、ルミネのなかなかのしたたかさに舌を巻いていた。

 ジグが何も言えないところまで追い込んでいる。

 このまま上手くやれば自分に尽くしてくれたジグに罪悪感を背負わせなくて済むようになるし、話した気持ちが本当ならば、ジグを手にすることだってできるかもしれない。

 これが天然なのか、それとも策略なのかは微妙なところだが。


「私の周囲には昔から、私を一人の人間として接してくださる方はほとんどおりませんでした。私が興味を持ったことを口にしようものなら、『そんなことよりも』、学ぶべきものを学びなさいと言われて育ちました。私のくだらない話を親身になって、笑って聞いてくださったのは、ジグ殿だけでした」

「そんなことは……」


 ジグは当時のことを思い出してルミネの言葉を否定しようとしたが、確かにルミネの周りに付き添っていた者は、ルミネの行動に何かと口を出していたように思う。そのたびルミネは謝罪の言葉を口にして、素直に話を聞いていた。

 彼女が自分の行動を強く押し通したのは、誰かを助ける時くらいのものである。

 思い出してジグは改めて、ルミネの優しさが嘘ではなかったはずだと考える。


「もしかしたらこの人ならば、と何度もお呼び立てして護衛をしてもらいました。好いてもらえるよう頑張ったつもりでしたが……、ジグ殿は騎士団に忠誠を誓っていらしたようで、私だけの騎士にはなって下さいませんでしたね。そんなジグ殿が、私だけの者になってくれるかもしれなかった、たった一度きりの機会。それを見逃さなかった私は、きっとあさましい女なのです。ジグ殿が責任を感じる必要は一切ありません」


 かなり、露悪的な言い方であった。

 ルミネの立場ならばもっと自分の行動を前向きに伝えて、逆にジグを追い詰めて、責任をとらせるようなやり方もできたはずだ。

 しかしルミネはそれをしない。


 ジグの性格を完全に理解して博打に出ているのか、あるいは本当にそんな人間なのか。クルムには本当にさっぱりわからなかった。


「責任はすべて私がとります。ジグ殿は利用されただけなのですから、胸を張って騎士団へ戻ればよいのです。私の護衛も必要ありません。私のせいで失った十数年を取り戻すことはできませんが、せめて、これからはジグ殿の思うように生きていただきたいのです」

「……いえ、私は自分で決めて、選び、この十数年を過ごしてきたのです。ルミネ様がどう考えていたのだとしても、私はそれに優しさを感じ、私自身が騎士団を裏切ったのです。私こそ、あなたに好かれるような立派な騎士ではありません。責は私にあります」

「そんなことを仰らないでください」

「いいえ、こればかりは……」

「面倒くさいのう、お主ら」


 二人が仲良く手をつないだまま痴話げんかを始めたのを見て、グレイはいつの間にか椅子に座って足を組んでいた。頬杖をついて特大のため息までお見舞いしている。

 最悪の態度であるが、グレイらしい立ち居振る舞いであった。

 

「要するにあれじゃろ。ルミネが護衛してくれたジグのことを好きになって、ジグもルミネを守りたいってなったんじゃろ。うだうだ言っておらんで、さっさと決めんか。いい年こいた男女でごちゃごちゃごちゃごちゃと……」

「先生、言い過ぎです」

「言いすぎなわけあるか。今そんな話をしている場合じゃないじゃろうが。ほれ、ルミネ、お主はジグを好きなんじゃろ! 嫌いなのか!?」


 恫喝するように大きな声を出されて、ルミネはジグの手を握ったままピンと背筋を伸ばした。


「す、好きです!」

「夫婦になりたいのか!」

「そ、その……、それはその……」

「なりたくないんじゃな!?」

「なりたいです!」

「よし! ジグは!」

「グレイ殿、こんなやり方は……」

「わかった、お主は嫌なんじゃな、話は終わり!」

「そうは言ってないでしょう!」

「じゃあなるんじゃな?」

「ですから、そういう……」

「ルミネ、ジグはお前のことが好みじゃないそうじゃ」

「先生!」

「グレイ殿!」


 流石に言い過ぎだとクルムとジグが抗議する。

 ルミネ王女の目が潤んできてしまっている。

 今にも泣きそうだ。

 もはやただのいじめっ子、いや、意地悪爺である。

 しかしグレイは動じない。


「そもそもなんじゃお前、そんな手を握られてからに。独身なのか?」

「そうですが……」

「ルミネ以上にいい人間だと思う者に、これまでの人生で出会ったことがあるのか? 男でも女でも良いぞ」

「……それは、いませんが」

「じゃあ好きじゃろうが」

「好きというのは……」

「命かけられるんじゃろ。一生守りたいんじゃろ、ならそばにいるのが一番いいじゃろうが。ごちゃごちゃうじうじと、騎士だとか年の差だとか立場とか、どうせそんなことばかり考えておるんじゃろうが」


 ぐっとジグが黙り込むと、グレイはさらに続ける。


「好きか嫌いか! 二択ならどっちじゃ」

「それは、好きですが」

「ルミネに穏やかに、争いごとに巻き込まれず、自由に生きてほしいのじゃろう?」

「はい」

「じゃあ他人になど頼らずお主がそばで何とかせい。今ここで決めれば、無理を通してでも色々何とかしてやる。王位継承争いがうまくいったあかつきには、ルミネとお主は結婚じゃ、とクルムが言っておる」


 グレイがさらりとすべての責任をクルムに放り投げた。

 ジグが悪い奴だとは思っていないし、ルミネの境遇には多少同情もしている。

 それと同時に引っ込み思案でものを決められない二人にイライラしたから、八つ当たり気味に好き勝手喋っているだけでもあったが。


「……ええ、はい、そうですね。私としてもお二人が制限なく行動できる方が都合はいいですから。私が王になったあかつきには、ルミネお姉様の自由な結婚を認めるでしょう。ファンファお姉様にも自由恋愛を認めるつもりですし……」


 急に話を振られて、一瞬『は?』と言いそうになったクルムであったが、ぐっと言葉を飲み込んで冷静に考える。

 そうして、これはもしかして自分にとっていい流れになっているのではないかと気が付き、多少言い方を柔らかくして、グレイの言葉を肯定する。


「決まりじゃ。儂らはお主らに罪が及ばぬように行動する。お主らは儂らに協力をする。すべてがうまくいけば、恋愛でも結婚でも勝手にせい。話はそれで終わりじゃ」

「……ジグ殿……、よろしいのですか……?」

「急な話すぎて……、なんとも……」

「これ以上続けるのなら、お主ら二人とも張っ倒す」


 張っ倒す、と言いながら拳を握って立ち上がったグレイに、二人はぴたりと黙り込むしかない。

 そんな中でもぎゅっと手を握ったままなのだから、やっぱりルミネは強かなのではないかと、クルムは一人首を傾げつつ思うのであった。

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― 新着の感想 ―
前の王位継承戦のときは。ごちゃごちゃラブコメと思ったら、急に最悪の終わりになっちゃったのかな。
恋愛ものなら、ここからごちゃごちゃ続きそうなところを一蹴してしまうおじいちゃん、イイね!
爺様、GJ.
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