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転生爺のいんちき帝王学 〜日の目を見ずに生きてきた最強爺、隠居間際で弱小王女に拾われる〜  作者: 嶋野夕陽


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未練

「……いくら腕の立つ魔法使いだったとしても、ルミネお姉様の派閥にかなり力を割いていたことは間違いないと思われます。今後何かを仕掛けてくるにしても、規模はこれまでよりも小さくなるでしょう。その上で、【人形遣い】の牽制をする必要があると思います」


 クルムは冷静に状況を分析して、今後の方針を提案する。

 ホワイトが自分たちの派閥につこうがつくまいが、間違いなく【人形遣い】のやり方を気に食わないとは思っているはずだ。

 騎士団にはしっかりと動いてもらって、【人形遣い】が自由に活動できないように、国を挙げて取り組んでもらわねばならない。


「ジグ殿にはもう少し詳しく、人形遣いについて聞いておくべきでしょう。どのような魔法を使用できるのか、そして使用するための条件はどのようなものなのか。……ホワイト殿は、今後ジグ殿をどうするおつもりですか?」


 ルミネ王女のためとはいえ、ジグは十数年にわたって、騎士団の不利益になりうる情報を別勢力に流し続けてきた。そして民を脅かす可能性のある危険な存在を、ルミネ王女たった一人を守りたい一心で見逃してきている。

 ホワイトやグレイの存在がなければ、裏切っていた期間はもっと長く続いていたことだろう。力の足りぬ者が不正に気が付いた場合は、ルミネ王女を守るために、その存在を闇から闇へと葬っていた可能性すらある。


 少なくとも、教会勢力の暗躍によってバッハ侯爵やユゥバ子爵、それに騎士や街の人、スラムの住人だって命を落としている。


「罪は罪……、罰は……罰だ」


 ホワイトは言葉を噛みしめるように、数日前にグレイに言ったのと同じことを呟いた。歯切れが悪いのは、ホワイトの中にも迷いがあるからなのだろう。


「……そうですか」


 クルムがあっさりと引き下がると、ホワイトはまた表情を歪めて部屋の角を睨みつける。クルムが反論をしてきて、それに言い負けることを、心のどこかで期待していたのかもしれない。

 話を聞いた直後であるクルムもまた、実は心に迷いを抱えていた。

 事情を差し置いて普通に考えればジグは、たった一人のために多くの人間を陥れた悪人である。

 ただ、ゆるぎなき忠誠心を持った勇士でもあった。

 それを罪人として処分をして済ませるには、あまりに勿体ないと思ってしまっているのだ。


「……罪は罪です」


 意外と早く戻ってきたジグが、扉を開けてホワイトの言葉を繰り返す。

 その顔はげっそりとしていたが、どこか先ほどよりもすっきりしているようにも見えた。


「座る」


 スペルティアが椅子を指さすと、ジグは周囲に頭を下げてから、素直に椅子に腰を下ろした。その背後にまわったスペルティアは、両肩に手を置いて、ジグに治癒魔法を施し始める。


「ルミネ王女は助けられました。事情は団長にも知られたので、今後はきっと守っていただけるでしょう。事件の全容を王家に報告して、保護してもらってもいい。その中で私が裁かれるのは必然のことでしょう。長く裏切り続けてきた、騎士団の仲間に合わせる顔はありません」

「……そうだな」


 ホワイトがジグの言葉を肯定する。

 ジグはそれを受けてなぜだかほっとしたように笑った。


「あとは、団長がもう少し思慮深く動くようになっていただければ、私は何の未練もありませんからね」


 全てをやり切ったような晴れやかな顔。

 十数年の重圧から解き放たれたと考えれば、当然の表情なのだろう。


「……本当に未練はないのか?」

「ありませんよ」

「本当じゃな?」


 グレイに繰り返し尋ねられて、ジグは一瞬迷う。

 そうだと思い込んでいても、言われてみると何か見落としがあるのではないかと迷ってしまうものだ。そこで一つ思い至ったのは、これからルミネがどのように生きていくか、であった。

 穏やかな人柄で、治癒魔法の使い手ともなれば、きちんと守られてさえいればそれほど悪い人生は送らないはずだ。

 少なくとも一般的な王族としての生涯は終えられるはずである。

 これまで苦労してきたのだから、それくらいの穏やかな日常があってもいいはずだ。

 そこまで考えたところで、ジグは、自分の考えが全て希望的観測であることに気が付く。これから先はもう、何があってもルミネを守ることはできない。

 心に新たな迷いが生じたところで、スペルティアが「うるさい、邪魔。君も黙る」と短くグレイとジグに注意をする。


 治癒魔法を施している最中に会話をされると集中が乱されるのだろう。

 答えを返せぬままジグは黙り込む。

 グレイはジグの表情をじっと見ていたが、黙り込んだところでニヤッと笑って顎鬚を撫ではじめた。


 治癒が終わったところで、スペルティアはジグの肩から手を離した。

 そうしてひと息つくと、勝手にベッドへと戻っていく。


「なんじゃ、寝るのか? ルミネとやらを看ておかなくてよいのか?」

「私様の治癒魔法は完璧。疲れた。その娘は何度もここに来たことがある。目が覚めても驚いたりはしない」

「すみません、この部屋をしばらくお借りしても良いでしょうか?」

「好きにする」


 真夜中に叩き起こされたのだから、そもそも眠たいに決まっている。

 グレイとクルムの問いかけにさっと答えたスペルティアは、カーテンを引くと本当に二度寝に入り始めたようだった。


「さて、儂らはどうするんじゃ」

「……ジグ殿。【人形遣い】について、いくつか聞かせてください」

「もちろん構いません」


 クルムは部屋の中にある椅子を眠っているルミネの近くへ運んできて腰掛けると、魔法に詳しいグレイにあれこれと尋ねながら、【人形遣い】の魔法についての情報を聞き出していくのであった。

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ジグ殿にはシ◯アのマスクを被っていただく
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