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転生爺のいんちき帝王学 〜日の目を見ずに生きてきた最強爺、隠居間際で弱小王女に拾われる〜  作者: 嶋野夕陽


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グレイの推測

 グレイは、話し合いが終わって外へ出てきたクルムと合流すると、先ほどのジグの様子を共有する。


「ありがとうございます。野心があるようには見えなかったですか……。もちろん隠すようにするのでしょうけれど……」

「そうじゃなぁ……。儂にはあれがそれほどの悪人には見えんが」


 何やら過去の自分の行いが迷惑をかけていたらしいから、とかではなく、単純に悪事に加担することに向いているように見えない、という印象である。

 特に根拠もない感想なので、あまりあてにもならないが、口に出す程度には感じているという微妙な具合である。


「……とりあえず、様々な可能性を考慮してみます」


 クルムはしばらく悩んでいたが、結局情報から結論は出さずに、情報として頭にとどめるだけに決めたようだ。状況が錯綜していて、どれかに決め打ちをしていると瞬時の判断に支障をきたしそうである。


「面倒じゃのう、もう全員ぶん殴って聞いたほうが早いんじゃろうが」

「それは最終手段ですね」


 すぐに暴力に訴えかけるから、グレイには敵が多いのだ。

 そして過去には失敗している。

 クルムとしては、できるだけ味方を増やしながら事を進めたいところなので、いざという時以外にはグレイの暴力には頼りたくない。


 自身の区域に戻って仕事をしていると、今日もファンファが合流。

 今日の報告会の内容を垂れ流し始める。


「やっぱりルミネお姉様はいつもと変わらぬ印象でしたわね」

「そうですね」

「さっぱりわかりませんわ」

「私も、改めてお顔を拝見しましたけど、あまり印象は変わりませんでした」


 静かに、淡々と報告をするルミネ王女は、隙がなく、感情の薄い女性に見える。

 スペルティアの言葉を聞いてもなお、印象が覆ることはなかった。


「ドーンズさん、ニクスさん、ファンファお姉様が操られているとされていた時、普段とは違う様子でしたか?」


 二人は顔を見合わせて二言三言交わして答える。


「あまり変わらない印象でした。ただ、言動に多少の違和感はあったと思います。常に近くで見ていれば……、そうですね、今日は体調か機嫌が悪いのかもしれない、くらいには違和感を覚えるかと」


 ニクスが答えると、クルムは再び「そうですか……」と呟き考え込む。

 そうなるとむしろ、スペルティアが語った、昔は優しかったスペルティア像からは大きくずれてくることになる。

 次々と考えることが出てくると、時折クルムの頭の端に住んでいる悪い爺が『全員ぶん殴ってから考えればいいじゃろ』と提案してくるのだが、それをするとそこから先、全てを暴力で解決しなくてはいけなくなる気がする。

 チラリと現実の方の悪い爺を見ると、その顔には『そんなに悩むくらいなら、全員ぶん殴ってから考えればいいじゃろ』と書いてあった。

 良くない教育係である。


 片手間に仕事をしながらクルムが考えていると、ファンファが息継ぎして茶を飲んだ隙にグレイが口を挟む。


「そういえば……、ホワイトの奴が行方不明らしいのう」


 ファンファがカップを置いて恐る恐るグレイを見て、クルムが筆を置き、二人の冒険者にも緊張が走った。

 グレイ以外の全員がアイコンタクトで役割を押し付け合った結果、クルムが唾を飲んで真剣な顔でグレイに尋ねる。


「……殺してませんよね?」

「殺しとらんわ。儂を何だと思っておるんじゃ」

「あまり仲が良くないようでしたので」

「仲が悪いくらいで殺すはずないじゃろうが」


 仲が悪い上に余計なちょっかいをかけてきた者を、再起不能にしたことは何度もあるが、殺したことはない。あまり。

 まして王宮内でクルムがやめてくれと言っていることなのだから、流石に多少遠慮はする。というか、この間殴り合ったことで、ある程度すっきりしている部分はあるので、殺すほど腹も立っていない。


「さっき教えてくださらなかったので、てっきり勢い余って殺してしまったのをどう誤魔化そうと考えていらしたのかと……」


 あまりの言われようにグレイはピクリと眉を動かす。

 普段から疑われるような言動ばかりしているのが悪いのだが、どうやら心外だったらしい。


「ほう……、どうやらもう少し暴れてもいいようじゃな。ちょっと散歩に行ってくる」

「すみません、言い過ぎました。冗談です」


 立ち上がったグレイに対して、クルムは椅子に腰かけたまま謝罪をする。

 素直に謝るのならグレイも自分の弟子に迷惑をかけるつもりはない。

 ふん、と鼻を鳴らして席に戻った。

 

 二人からすれば日常茶飯事の軽口の叩き合いだが、ファンファたちからすればひやひやものである。

 クルムがかぶっていた猫が、ファンファの前では段々とはがれてきたと思えば信頼の証なのだが、それにしても心臓に悪い信頼である。


「しかしそうなると……、本当に何をされているのでしょう」

「今頃自分で今回の件の黒幕を探しておるのではないか?」

「まさか。…………先生、あの」

「なんじゃ」

「先生だったら自分で捜索に行きますか?」

「当たり前じゃろうが」

「…………あり得るかもしれませんね」


 グレイとホワイトは、性質こそ違うが本質はよく似ている。

 だとすれば、この中でホワイトの思考を最も正確にトレースできるのは、グレイということになる。


「……騒ぎにならないといいですが」


 天井を見上げてぽつりとつぶやいたクルムを見てグレイは思う。

 それはフラグじゃな、と。

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― 新着の感想 ―
実は同族嫌悪だった…? クルムの頭の中にも悪い爺が住み着いてしまったか…
いまさらそうかと。 グレイとホワイト ですね。 すごく楽しみにして拝読しています。 これからもとても楽しみです。
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