封筒の中身だぞ。
「それではこれで終わります。ご家族のところに戻って結構ですよ」
牧師に言われてレインは神から授かった封筒を持ち家族のところに戻る。先ほどの便箋と紙の綴りは、不思議なことにちゃんと封筒に収まった。
封筒も不思議であるが、便箋に書かれた文字も不思議である。こちらの世界の文字を習っていないレインでも読むことができた。これは前世の記憶が戻ったからという訳ではなく、勿論、日本語でもない。牧師によると誰でも読めるらしい。
神の文字だと言っていた。この封筒も神の封筒なのだろう。
本当にファンタジーな世界である。
前世の記憶が戻ったレインはつくづく実感していた。
「ゲイル様、少しよろしいですか」
レインと入れ違いに牧師は領主で父親のゲイルを呼んだ。先ほどの神の祝福について話すのだろう。
レインが家族の元に戻ると、待ち構えていた母親のウインディから、神の祝福について質問攻めだ。
レインが光り輝いていたのだ。家族たちのいた場所からも何かあったことは一目瞭然だ。
レインはウインディの質問に、のらりくらりと質問をかわしていく。
突然目覚めた前世の記憶が、レインに慎重な行動をとらせる結果となっていた。
暫くすると父親のゲイルが戻って来た。それでやっとウインディの質問攻撃が止んだ。
これで一息つけるとレインが思っていると、ゲイルが尋ねてきた。
「ところで、結局どんなジョブをもらったのかな。希望のものがもらえたのかい」
「うーん。希望のものとは違ったんだけど。でも、これから頑張れば希望のジョブをもらえるかもしれないんだよね」
「そうだな。レインの頑張り次第だな」
「なら、ぼく、がんばるよ」
レインは喋り方が子供っぽくなるように注意しながら受け答えを行なっていた。
「それで、どんなジョブだったんだ」
「うーん。これ」
レインは封筒から一枚目の便箋を取り出し、ゲイルに差し出した。口で話すより見せてしまった方が手っ取り早いだろう。
差し出された便箋をゲイルが受け取り確認する。
名前:レイン ポート ライズ
職:大魔術師(仮)
賞罰:なし
「魔術師。いや、大魔術師か。え、大魔術師」
ゲイルが便箋を何度も見て確かめている。
(あれ、大魔術師は不味かっただろうか。加護のことばかり気にしていてこっちまで気が回らなかった)
「あなた、大魔術師といったら上級職じゃない。仮職でも上級職が授かることがあるの」
「いや聞いたことがない」
(あー。やらかしてしまった。でもこれは、加護と違って、いつまでも秘密にはできないよな)
便箋の一枚目は身分証明書だ。いつまでも隠し続けるのは不可能だ。
「レイン。試練はどんな内容だった」
ゲイルの問いかけに、既に諦めたレインは、紙の綴りを封筒から取り出してゲイルに渡した。
「これだよ」
「これ全部か」
「・・・」
そのまま、そこにいた者達全員が固まってしまった。
最初に我に返ったのは侍女のスノウィだった。
「レインお坊ちゃん、私がお手伝いしますから大丈夫です。必ず試練を達成しましょう」
続いて両親も意識を取り戻す。
「そうだな、家族全員でレインを助けよう」
「そうよ。だから負けちゃ駄目よ。でも、無理はしないでね」
ウインディはレインを抱き寄せた。
前世の記憶が戻ったレインは少し恥ずかしかった。