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転生することにした。

「そうですか、凄い仕事ですね。それが『お天気キャスター』なのですね」

 青年の弾丸トークに、女神様は少し疲れ気味に、話を終わらせるべく相槌を打った。

「そうです。凄いでしょう。俺はその仕事に就くために、『気象予報士』の試験を何度も受けたのですが、結局、合格することができませんでした」

「『希少世放神』ですか。その試験に合格した人は神になるのですか」

「そうです。その通りです。女神様はわかっていらっしゃる。『気象予報士』は神の存在なのです。生き神様です」

 青年にとって『気象予報士』は雲の上の存在。つまり、神だった。


「『希少世放神』にならないと、『お天気キャスター』にはなれないのですか」

「『気象予報士』でなくても、『お天気キャスター』にはなれますが、『気象予報士』になっているに越したことはありません」

 青年の言う『気象予報士』を、女神様は『希少世放神』と聞き間違えていた。世界に放たれた、数少ない神なのだと勘違いをしていたのだ。


「凄いです。凄すぎて、成人している貴方には与えられません」

「え。・・・。希望の(ジョブ)にしてくれるって言いましたよね」

「可能な限りと言いました」

「そんな」

「ただ、貴方がその職を得ることが全く不可能というわけではありません」

「可能なのですか」

「今の貴方では無理です。しかし、生まれかわって、子供からやり直せば可能です」

「転生ですか」


「そうです。第八界では、成人した時に誰でも職が与えられますが、それより前、七歳の時に仮職(プレジョブ)が与えられます。これは本人の適性や生活状態を勘案して、神がその者に適した職を提案するものです。併せて成人した時にその職を得るための試練も与えられます」

「その試練を達成すれば、仮が取れた正式な職となるとわけですね」

「そうです」


「試練を達成できなかった場合にはどうなりますか」

「その場合は、試練の達成度によって下級職が与えられます。それとは逆に、試練以上の努力をすれば、仮職以上の上級職が与えられます。

 例えば、騎士の仮職を与えられた者が、努力すれば聖騎士の様な上級職を与えられることがありますし。

 努力しなければ、兵士の様な下級職が与えられることになります。

 それと、仮職で与えられた以外の職を得ることも可能ですが、適性がありませんから、仮職が与えられた者以上の努力が必要になります」

「成る程、転職(ジョブチェンジ)ありと」


「ですが、転職できるのは仮職の内だけです。仮が取れた職になってからでは転職できません。

 つまり、言いたいのは、仮職の間に努力しなければ、上級職は得られないということです。ましてや、『希少世放神』にならなければ得ることが難しい、『お天気キャスター』ともなれば、それはきっと超上級職、簡単な試練では得られることはないでしょう」

「世の中そんなには甘くないというわけですね。『お天気キャスター』になれるかどうかは自分の努力次第。そのために子供からやり直せということですね」

「そうです。ただ、貴方は第七界の人間ですので、もし、第七界の技術をこちらで広めていただけるのなら、『希少世放神』の称号を与えましょう」


 女神の提案に青年は一瞬驚いた。

 あれだけ試験を受けて受からなかった『気象予報士』の資格をくれると言う。少し怪しんだが、直ぐに称号をもらおうと考え直した。

 今まで散々努力してきたのに、『お天気キャスター』にはなれなかった。なら、転生したとしても、普通に努力しただけでは、また、なれないかもしれない。ならば、女神様から『気象予報士』の称号をもらった方がいい。

 少しずるした気分だが、異世界転生で得られる、チートだと思えば罪悪感も湧いてこなかった。


 だが、ここで、青年はふとした疑問が浮かんだ。

 転生した場合に記憶は引き継がれるのだろうか。

 引き継がれなければ、元の世界の技術をこちらに伝えることは出来ない。そう考えれば、記憶は引き継がれるのだろうが、もし引き継がれない場合、転生した俺は、果たして俺なのだろうか。

 心配になった青年は女神様に確認することにした。


「女神様、転生した場合、記憶はどうなりますか」

「転生した場合は、記憶は消えますが、問題ありません。加護として記憶を書き戻します」

「加護はいつ与えられるのですか」

「仮職と一緒に、七歳の時ですね」


 青年は考える。赤ん坊の時に記憶が有っても役には立たないだろう。むしろ恥ずかしいだけな気もする。なら、七歳で記憶が戻るのは適当なところではないだろうか。

 記憶が戻った時に混乱しそうな気もするが、その辺はなるようにしかならないだろう。


 結局、青年は『お天気キャスター』になりたくて、転生することに決めた。


 女神は青年を転生させた。


 しかし、女神は悩んでいた。

『キャスター』って何だろう?

 青年の説明から凄いものだとはわかったが、今一つ理解できなかった。お天気と小さな車輪(キャスター)のイメージがうまく繋ぎ合わなかった。


 仕方がないので女神は他の神に聞いてみた。

「第七界から落ちてきた者に、なりたい職を聞いたら、『キャスター』と言われたのだけれども、なんだかわかる」

「なりたい職を聞いて、『キャスター』と答えたなら、それは多分『魔術士』のことだと思うよ」

「ああ、『魔術士』のことなんだ。納得。どうもありがとう」

(天気を決められるほどの『魔術士』ということは、職として授けるのは『大魔術士』でいいわよね)


 こうして、青年の仮職は『大魔術士』と決まった。



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