傷
柔らかな肉を噛んだ
食感は悪くない
しかしそこに旨みはなく
伴うものは鈍く響く痛み
きっとそのうち
桃色にぬめった表皮から
破れて赤く
滲んで流れ出るのだろう
只でさえ傷だらけのこの体
ぶつけて
擦って
切って
毟って
散々傷を作っているのに
体内にも傷を作るのか
ふつふつ腹で煮えたものが
じわりじわりと込み上げる
怒りは指先を曲げ
鉤の形に変えてゆく
あぁまた血が流れてゆく
傷は傷を作ってゆき
怒りは収まらず自責に変わる
矛の収め方を知らない私は
今日も体に爪を立てる