表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/61

第五十四話 最終章 「終わりの幕開け」

 月日は流れ、暑い夏が終わり、やがて日本列島には寒気とともに秋がやってきた。徐々に生い茂っていた緑は枯れ、哀愁の漂う枯れ葉が地面を埋める。

 日に日に肌寒くなった教室では、月曜の朝からホームルームによる議案がされていた。


 議題は学校祭について。

 この学校では文化祭もひっくるめて『学校祭』とするため、秋に行われるのだ。

 そして例の如く、議長、大竹が声を張り上げて議案をまとめていた。

「はーい! じゃあ、ステージ部門は後で決めるとして、教室部門はオバケ屋敷でいい?」

 クラスの皆は同意の意思を示した。

 学祭では、クラスを半分に分断し、教室部門とステージ部門に分かれる。教室部門は教室展示を、ステージ部門はステージでパフォーマンスをするというものだ。


「はあ、今年も教室やるか」

 俺は、あまり学祭とかには積極的に参加しない。

 だから、教室展示でお茶を濁すとしよう。

「ふふ、果たしてそうできるかな?」

 隣にいる秋元に声をかけたが、どうやら予想外の反応だった。

「どういう意味だよ」

「お前は限りなくステージに回される可能性が高いって事さ」

「どうして?」

「ヒ・ミ・ツ。(はぁと)」

 ……。

「もういい」


 その日の放課後、家に帰るために教室を出た俺を、強引に襟を掴んで教室に引き戻された。その犯人は大竹だった。

「何だ? 用があるなら普通にこえかけろよ」

 襟を直しながら呟いた。しかし、その俺に自信満々に大竹は答えた。

「どうせ声かけるだけだったら逃げ出しそうだし」

「逃げねぇよ」

「そう、じゃあお願いするね。学祭、ステージ部門に入って」

「……」

 シュパァン。という音が聞こえそうなぐらい、俺は俊敏に逃げ出した。しかし、その俺を上回る速度で大竹が俺を捕らえた。

「どうして!? まだ何やるかも決めてないんだろ?」

「いやいや。実は決まっててね……」

 不敵な笑みを浮かべながらポケットから紙を取り出した。

 その紙に書かれている文字を、俺は馬鹿正直に読み上げた。

「ロミオとジュリエット」

 ロミオとジュリエット、確かシェイクスピアの悲劇で、なんか複雑ないざこざのある両家のロミオとジュリエットが結ばれるために仮死薬を飲んだが、それを本当に死んだと勘違いして、結局二人は天国で結ばれましたって話だっけ。

「大体そんな感じ。でもね、馬鹿正直にまねするんじゃなくて、アレンジするの。特に結末」

 アレンジ。高校生の分際でシェイクスピアの傑作を改ざんしちまって良いのか?

「んで、どうアレンジするんだ?」

「ジュリエットが死んでしまったと勘違いしたロミオは毒を飲んで死んだ、そしてジュリエットもその後ロミオの短剣で自殺。事の真相を知り悲嘆に暮れる両家は、ついに和解する。……と見せかけて、ロミオが飲んだのは毒薬じゃなく、仮死薬で、その後復活。ジュリエットも死んだように見せかけていましたとさ」

「むちゃくちゃだ。悲劇のへったくれもない」

「そりゃそうね。喜劇にしたいもん」

 まぁ、学祭の演劇なんて大抵そうなのかもしれないな。それにしても、それにどうして俺が参加しなければいけないのか。


「まあね。実際やるとして、ロミオ役に適役なのが君なわけね」

 大竹はあっさりと言った。

「どーして。俺にそんな華があるとはおもえないけどね」

「そうでもないよ? とりあえず見た目チャラチャラしてる連中よりはよっぽどマシだと思うけど」

 ほめられているのか? それ。

「とにかく、俺はやりたくない……」

「だめ。やりなさい!」

 お互い一歩も譲らず、状況が硬直しかけた時、俺のケータイ電話が唸りをあげた。

 どうやら電話らしい。

「悪いな」

 とりあえず電話に出た。

『京平、今大丈夫か?』

 電話の主は涼だった。大抵、こういうときは涼のところに呼び出され、サークルのために情報提供を迫られるのだ。

「ああ、今すぐ行く」 

『すまんな。いつものように、喫茶店で待ってる』

 すぐに切れてしまった。どうやら急ぎの用らしい。


「ということで、またな。大竹」

 スチャ☆っと指を振って別れた。なにやら文句を言っていたが、事実急用が出来たので、大竹も渋々俺を放してくれた。



「それで、涼は何のようなの?」

 学校を出て、人気の無い路地を歩いている中、真が話しかけてきた。

「さあな。そこまではいってなかった。たぶんこないだの事件の話かもな……」

 こないだの事件、修学旅行を襲った事件の途中で、俺は一度涼に電話している。だが、旅行から帰ってきてすぐに涼には大方のことを話している。

 別件の可能性もありそうだ。


「それは良いとして。京平、学祭でどうしてステージやらないの?」

「んー、まあ人前に立つのはあんまり好きじゃないからな」

 人前に立てば、必ず俺に対して皆感想を持つ。良いイメージもあれば悪いイメージもある。俺はどうしても悪いイメージを持たれたくなかった。だから人前は嫌いだ。

 

 そうこうしているうちに、いつもの涼と対話する喫茶店に着いた。落ち着いた内装のこの店は、平日だからなのか、いつも客が少ない。もしかしたら涼はそういう店を選んでいるのではないか。と思った。

 そしていつも通り奥の席を一人で陣取っている涼のところへ向かう。カランと音を立てながらドアを開け、風の当たらないやや暖かい店内へ踏み込んだ。


「よし、来たか。さっそく座れ」

 俺を見つけるなり、座るように促した。

 俺はそれに従いながら、ついでにコーヒーを注文する。

「それで、何の用で呼び出したんだ?」

「うむ。まずはこれを見てくれ」

 そういって鞄からなにやらインターネットのニュース記事のプリントアウトしたものを取り出した。記事の中身は、日本のはるか南の海上で、異常な規模の台風が出現した。ということだった。

「これがどうかしたのか?」

「ああ、とりあえず二枚目を見てくれ」

 言われるままに一枚めくった。二枚目には画像が印刷されていた。どうやらその台風を観測船が撮影したもののようだが、そこには温帯低気圧なんて写っていなかった。

 巨大な黒い塊。しかもその周りを膨大な数の悪夢が取り囲っている。

 まるで、黒い塊が、悪夢達の根城であるかのように。

 まるで、黒い塊が、悪夢達の源であるかのように。

「なんだ……これ」

「悪魔。そう名づけた」

 悪魔、そういわれればそうかもしれない。見ているだけで背筋に冷や汗がにじみ、胸のうちには嫌なモヤモヤする気持ちが渦巻く。

 悪魔、やはり悪夢の魔窟のようだった。

「こいつが、日本に近づいているんだ」

 涼は事を告げた。

 

 そして、この悪魔の接近が、すべての始まりであり、終わりであるように思う。

とうとう最終章です。

何とか無事終らせたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
http://ncode.syosetu.com/n9354f/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ