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第四十七話 「裏切りの友達」

「……か、上谷?」

 屋上は真の一言で凍り付いていた、真は上谷をしっかりと見据えながら言った。

 彼が犯人であると。

 彼がこのホテルに悪夢を呼び、生霊の理という、中にいる人々を皆殺しにし、そこから霊力を吸出し私欲を肥やす。悪魔のような犯人。

 本当に上谷が犯人なのだろうか―――。

「皆さん……どういうことですか!? これは……ぼ、僕は知らないッ!!」

 上谷は皆の視線を怯えるように、叫んだ。

 彼がこれほど取り乱している姿をはじめて見た。


「そうだ、上谷が犯人のはずが無いだろ……」

 無意識のうちに言葉が出た。

 そう、彼がそんなことをするはずが無い。

「そもそも上谷は人間だろ? 霊力は人間が得ることは出来ないし、マリオネットだって強力な守護霊なんだぞ、こんなことをする動機が無いだろ」

 自分でも、もっともなことを言ったと思った、これに藍那も頷き、真は憮然として立ち尽くし、藤崎は口を挟んできた。

「そうでもないわ、とりあえず『人間だから』で済まされないわ」

 藤崎は上谷を一瞥し、俺に向かって言った。

 過去に、藤崎も自分自身の霊力を強めようとしたことがあるが、それは関係しているのだろうか。とりあえず俺よりもこういうことには詳しそうだった。

「どういうことだ?」


「生霊の理ってね、元々は大昔の霊術だけど開発したのは人間なのよ」

 生霊の理は、多くの人間の命を必要とする悪魔のような霊術だ。それを開発したのは人間だったら、それはただの殺人ではないか……

「大昔、まだ科学も進んでいない頃、人々は何を信じていたか。それは宗教として今も残っているけど、神という存在を大昔の人々は信じていた。でも神様なんて人間の目に見えた存在ではない、ましてその存在の確たる証拠だって存在していなかった。だから大昔の人々は考えた……存在していないなら呼べば良い、この世に創り出せば良いってね」


「それで……人間を生贄に霊力で神を作ろうとしたの!?」

 藍那も知らなかったようで、愕然として話を聞いていた。その一方、上谷は顔を伏せたまま、身動きをとらない。

 そして藤崎は続ける。

「でもね、神なんてものは出来なかった。莫大な量の霊力を捧げても抽象的で不確かなものを作り出すことなんて出来なかった。しかも、生霊の理の生贄に莫大な量の信徒を捧げたため、この宗教は衰退し、消滅した。これにより生霊の理も消滅したはずよ」

 

「でも……それが上谷とどう関係があるんだよ!!」


「いい? どうして大昔、生霊の理が失敗したのか。それは創造しようとしたのが『神』という不確定なものだったからよ、つまり、実際に存在していた、確かな存在なら創造することが出来るかもしれないのよ」


「つまり……死んだ人間を蘇らせることが出来る、って事なのか?」

 俺の返事に藤崎は軽く頷いた。彼女が言うように死んだ人間を蘇らせるという理由なら、人間がこの事件を引き起こすこともあるだろう。

 しかし上谷は? 彼はそんな理由があるだろうか。


 ふと、脳裏に上谷との会話が思い出される、この見学旅行の何時か、それすらも覚えていない何気ない瞬間に、彼は悲しそうな顔をしていった。

「家族が居ない……?」

 上谷の実家、そこに家族はもう居ないらしい。それにより、上谷はこの町の神社に下宿して学校に通っていたはずだ。

 その家族はもう死んでいて、

 上谷は家族ともう一度会う為に、

 同じ学校に通う仲間達を生贄に捧げようとしているのか……?


「京平、信じて。私はこの目で確かに見たわ。上谷竜那が私に攻撃するその瞬間を、その顔を」

 真はこの間がとても嫌なのか、諭すように俺に言った。それに軽く俺も頷き、顔を伏せている上谷と向き合う。

 

「上谷、答えてくれ。本当のことを」

 俺も意を決した。

 まだ上谷が犯人と断定したわけではない。ただし、今のところ上谷は怪しい。もともとホテルで事件が始まった時、俺と藍那は外に居た。その間上谷はホテル内で自由に動けたといえる。


「……金城君は、僕のことを信じてくれないんですね」

「え?」

「守護霊の言うことを真に受けて、僕の言うことは無視するんですね」

 上谷は頭を上げ、歩き出した。屋上には、元々人が来るようにはできていなく、フェンスは無い。屋上のふちに沿って歩きながら、決してこちらには視線を向けずに話し始めた。


「そういうわけじゃない、ただ、本当のことを聞きたいんだ」

 俺の心の底から正直に言った。俺だって上谷を疑うようなことはしたくない。ただ真偽を確かめたい、ただそれだけだった。

 それがたとえ、真実がどちらであっても。



「……ハハッ、君に嘘は言えないや」

 上谷は無邪気に笑いながら言った。

「どういうこと……だ?」


「僕がこの生霊の理を発動させる。それ以外に何がある?」

 上谷は俺を見据えて言った、途端、俺の胃の中に鉛でもぶち込まれたかのようなグラリとした衝撃が奔った。

「……嘘だろ? おい、上谷、」

 縋るように、哀願するかのように、呟く。

 しかし上谷はそれを蔑む様に見下し、さらに言葉を続ける。

「僕は僕のためにここまで準備してきた、もう……友達ごっこも終わりだ」

 その一言を聞いたとき、俺は弾けるように上谷に飛びかかろうとした、

 しかし、俺の拳が上谷に届く前にマリオネットが間に立ちはだかった。マリオネットの分厚い腕が俺を弾き飛ばし、俺の体は屋上の床を二、三回バウンドして転がった。

「京平!!」

 真はすぐに俺の元に駆け寄った、マリオネットは追撃をする気は無い様で、そのまま上谷を守るように立っている。

「どうして……、」

 四つん這いになりながらも、俺は必死に肺に酸素を送り、何とか声を絞り出す。


「どうして? 君には一生わからないだろうね」

 上谷は依然として蔑むように言った。その様子を藍那は混乱しながら見つめ、藤崎は興味なさ下だった。


「君にもわからせてやるよ。マリオネット、殺せ」

 その一言で、まるで電気が流れたかのようにマリオネットが動き出し、いつもは俺達を助けてくれたベルトによる槍が襲い掛かる。

 だが、真がそのベルトの槍に瞬時に烙印を施し、「裂けろ!」の一言でベルトはあっさりと裂けてしまった。

 

「おっと……そこらへんでお遊びはお終いよ、セーレ」

 藤崎がその重い腰をあげ、セーレが参戦する。と同時に屋上の床には円形の烙印が施され、ドーム状の空間がセーレの支配下になる。


「……いいでしょう。三組まとめて相手しましょう」

 上谷は、いまだ余裕の表情で宣言した。


「どうして……どうしてなんだよ上谷ぁ!!」



そろそろ四章もクライマックス。

 がんばりmす

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