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第三十六話 「見学旅行・中」

「ハーイ、じゃあ写真撮るよー!」

 大竹の掛け声に、俺達は清水寺の塔をバックに横一列に並ぶ。大竹が、たまたま通りがかった人にカメラをお願いして列の端、上谷の横に並んだ。


「ったくよー。お前らもひどいぜ……」

 写真を撮り終えた後、秋元がこぼしていた。

「榎本と悪夢のバス旅行なんて……」

 悪夢、と聞くと少し身構えてしまう自分が少し嫌になりながらも、三年坂という坂を皆と下る。

「いいじゃねぇか。これを機に榎本と高感度をあげておくのも悪くないぞ」

「ふざけんな」

 返す秋元は心なしか弱弱しい。相当強い負のオーラだったのか。


「さあ、そんなことより八坂の塔が見えてきましたよ」

 楽しみだと言っていた上谷は、どうやら前から調べていたらしく、さまざまな豆知識をナビゲートしてくれる。いつも敬語で礼儀正しい上谷のテンションは上がっててもわかりにくいが、今日はハッキリと楽しそうだとわかる。

「現在の塔は1440年に再建されたものなんですよ」

「ふーん。そういや大竹、集合時間まで後何分?」

「まだまだ時間はあるよー。皆はどこが見たい?」

「私は皆が見たい場所ならどこでもいいよ」

「俺は少し休みたいかも……」

「なら二年坂を下って高台寺に行きましょう」

 休みたがる秋元を皆でスルーして坂を下った。すると、しばらくバス内で沈黙し続けた真が声をかけてきた。

「いい加減暇なんだけど……あの『ばす』って乗り物もずっと動けないし」

 見学旅行もとい修学旅行は常にクラスメイトと行動するようなものだ。当然、秋元のように霊の存在を感知できない奴と共に居るときには真と会話できない。

「ふぅ、主が存在を感知できているだけでもいいじゃないか」

 横から話に入ってきたのは、桜井の守護霊であるヴァリエである。彼はアレスにボコボコにやられ、体が原形を留めないほどになったところを涼に助けられ、どうやら無事修復されたようだ。ちなみにどうやって修復するのかは俺は知らない。

「まぁそうなんだけどね。半年前ぐらいにはつながりも無かったしね」

 真とつながってからまだあまり時間が経っていない気もするが、それでもつながりは着実に強くなっていると思う。


「おーい、京平、置いてくぞー」

「あ、おい、待てって」


***


「何だ……この『子育て幽霊飴』って……」

 京都は観光客も多く、もちろんお土産屋も多い。

「それは……まあデマなんでしょうけど、死後に墓の中で生まれた子供のために、幽霊が毎晩買い求めたといういわくつきの品です。まあ良いお土産じゃないですか?」

「ふーん……」

 たしかに真なら飴が好きそうだから毎晩買いに来るかもな。

「いやー、それにしてもいっぱいお土産があるねー。おっ、これは何かな? 上谷君」

 大竹の質問に上谷が、「ああ、それはですねぇ……」と返す。

 なんだかんだで旅行を楽しんでいた。


「ねぇねぇ、さやかと上谷君って良い感じだと思わない?」

 急に俺の襟を引っ張って桜井が耳元で囁いた。

「良い感じ……? まぁでも大竹って割りと誰とでも仲良くするだろ?」

「違うの。ほらよく見て」

 言われてみてみれば、確かに心なしか大竹の頬が高揚しているようにも見えるが……。

「うーん。よくわかんねぇな」

 俺はそういうことに疎いはずだし、特別気にしてるわけではないからな。

「これは今夜聞いてみるしかないわね」

 桜井も密かに楽しんでいるようだった。


「な、なぁ、皆そろそろ集合地点にいかね……?」

 なんとなくハブられていた秋元がおずおずと提案した。


***

 

 バスに戻って、次はいよいよホテルに向かう。そこでもいろいろイベントは残っているのだが、なんとなく今朝から疲れていた俺としては、ゆっくり休めそうで安心した。

「ところで上谷、お前神社のとこに下宿してたよな」

 俺と上谷が、ともに戦って守ったといってもいいような場所だが、アレ以降は訪ねていない。今日、たまたま京都の神社などを観光している時に、上谷が京都が好きといっていたので関係があるか少し気になった。

「そうですね。親戚の方に快く受け入れてもらいました」

「実家ってどこら辺? 遠いいの?」

 何気なく振った話だが、少し上谷の表情が曇った気がした。しかしそんなことはすぐに何事も無かったかのように上谷はかき消し、話を続けた。

「まぁ、田舎の方ですね」

「じゃあ、夏休みとかに皆で行ってみたりとかは!?」

 すぐにイベント好きの大竹が話しに入ってくる。

 俺の隣で桜井が「ほらね。」って言う顔をしていた。

「……まぁ機会があればぜひ」

 上谷は苦笑しながら濁らせた。


「じゃあ決まりだな。夏休みは上谷の地元に皆で行くって事で」

 最後の一押しを俺が言った。

 なんとなく、大竹の応援をしたかった。余計なお世話かもしれないが、上谷は結構手強いんじゃないか、それとなくアピールしても礼儀正しくスルーされてしまいそうな印象がある。

 いつもは俺たちに何かと計画する大竹にもたまには反撃したいしな。

「楽しみだね。さやか」

 桜井も俺と同じようなことを思ったらしく、一緒に乗ってくれた。

 上谷も少しうれしそうに微笑んでいた。

 


 

 まだ中かよ。とか言わないでね。

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