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第三十話 「黒の交錯」

「どうして上谷がここにいるんだ?」

 俺と藍那はここに悪夢……いわば悪霊退治のためにやってきた。理由もなくフラフラするにはちょっと良くない場所だ。


「それはこちらが聞きたいです。一応僕はこの神社の神主さんのところに下宿させてもらってるんです。怪しい人影が見えたので確認しに来たのですが……」

 上谷は今日転校してきた、そこには何か複雑な事情が見え隠れしていた。それは俺にとってなんとも居心地が悪いように感じられて、話題を変えたくなった。


「それよりこちらの方は……?」

 上谷が視線を送る先は藍那だった。一応彼らはクラスが違うので面識はないだろう。


「私は立花藍那たちばなあいな。よろしくね」

「ほぉ……お二人はどのような関係ですか?」

「関係って、ただの知り合い?」

「ただの知り合いで夜中に二人で真っ暗な神社までやってくるのですか? 仲がいいですね」

「おいおい、またなんか話題がずれてるぞ」

 早く違う話題に切り替えよう。真がそろそろ不機嫌になってきた。


「この辺でおかしなことはなかったか?」

 俺達は悪霊を退治しに来た。ところが悪霊どころか悪夢一体すらいない。藍那の情報を疑っているわけではないが、これは少しおかしい。もし、本当に相手の悪夢が頭脳明晰な奴だとしたらこれはもしかしたら罠の一環なのではないか? 周りを森で囲まれた暗い土地、こんなところで戦闘は難しいのではないか。


「あなた達を含まずにですか。そうですねぇ……」

 考え込む上谷、藍那は退屈そうに、俺は考えているようで実は何もいい案がなかった。そんな油断だらけだった俺達は、もう既に危機的状況だった。

 気の木陰から何かが動いた。しかし辺りは真っ暗で、よく見えない。人のようにも見えたが、もしかしたらただの犬かもしれない。ただ、一度何かがいるように感じると辺り一面に嫌な気配を感じてしまう。ただ風で揺れているだけかもしれないのに。


「……どうやら、見つかったようですね」

 上谷が静かに言った。


「お前……何か知ってるのか?」



「逃げてください。悪夢達に囲まれています」


 その一言の後だった。あたり一面を覆うように生えていた木の陰から一斉に人が出てくる。静かに、ゆっくりと。しかし全員がただならぬ空気を出していた。上谷が懐中電灯を向けると、気づけば、半径五メートル辺りの円のように、俺達を中心にして囲まれている。奴らは全員黒服にサングラスをかけ……手には銃のようなものが握られていた。


「包囲されてる……リリス? アレ全部悪夢ね?」

 藍那も状況を把握した、つまり既に悪夢たちには囲まれていた。そして思考を持つ上級悪夢は大量の下級悪夢を手下のように従えていたのだ。

 真が本来の力を取り戻す、姿が大人っぽくなり、手を覆うように炎が灯る。


「始めるよ……京平、走る準備はいい?」

「当たり前だろ?」

 ジリジリと敵が作る輪が狭くなっていく、上谷にもそれがわかるらしい。それはつまり上谷も霊的事象に関係……つながりを持っていると言うことだ。正直意外だったが、今になってみれば普通なのかもしれない。皆、自分が霊が見えるなどとは口外しないからだ。もしかしたら馬鹿をやっている秋元も見えているのかもしれない……そんなはずはないか。


―――そんな油断していた俺の耳元を弾丸が突き抜けた。

 見ると、敵の悪夢、黒スーツにサングラス。まるでマフィアをイメージしているかのような集団の一人が手に持った銃のような物の銃口を向けていた。『銃』といっても、一般的に人間が使うものとは形が大きく異なっている。ただの鉄の筒に取っ手を無理やりくっ付けたような、普通は鉛球を放つことなど考えられない構造だ。おそらく、銃としての見た目だけが要るらしい。


「貴方達は何者ですか?」

 上谷が前に一歩踏み出し、悪夢たちに声を掛ける。今までとは異なった空気を出している彼は、悪夢の銃口に射られても臆する事はない。俺にはまだ上谷の守護霊が見えてはいない、丸腰に見えるから怖い。


「立去れ。立去れ。私達の領域から」

 悪夢は、口ごもりながらブツブツ呟いている。こっちに聞かせる意思がないかのように自分の口の中で言葉を発していた。


「(金城君、合図したら輪の欠けた方向に走ってください。僕が奴らをひきつけます)」

 上谷が相手に聞こえないように囁いてきた。

「(ダメだ! 一人じゃ危険すぎる!)」

「(安心してください、見たところ敵の悪夢は霊力が弱い。上手く喋れていないということは、上級悪夢に無理やり洗脳や服従させられているだけかと思います)」

 上谷には根拠と勝算があるらしい。ここで口論する意味もないので、しぶしぶ俺も了承する。

「(立花さんも、合図をしたら走ってください。あと、守護霊さんに協力してもらいたいのですが……)」

 藍那と上谷が作戦を決め、いよいよ悪夢たちと対峙する。奴らは俺達が話し合っている間も、輪を崩さないが、攻撃もしてこない。


「(3……2……1……)今だ!」

 上谷の合図とともに、リリスが鞭を振るう、その鞭に烙印が張り巡らされ、触れた敵を爆発させる。それと同時に包囲していた悪夢たちが一斉に手に持った無骨な銃を発砲する、弾丸は俺の目では確認できないほどの速度で、四方八方から襲い掛かる。真が一部を防いでくれて、俺はリリスが包囲を崩した方向に全力疾走する……が、何者かに足のくるぶし辺りを掴まれ、バランスを崩し倒れてしまった。見ればリリスの鞭を喰らった敵の悪夢が、その体の半身を焦がしながら俺の足にしがみ付いていた。

 真は三人の悪夢に囲まれている。リリスと藍那は周りにはいない。そしてしがみ付いてきた悪夢が銃口を俺の顔面に目掛けて……

 攻撃を覚悟して身構えた瞬間、何か硬いものではじくような音がした。


「大丈夫ですか!?」

 上谷が焦った顔をして俺を起こしてくれた。その背後にそびえるものを見たとき、俺はもう一度転びそうになった。


「ああ、僕の守護霊、マリオネットです。外見は恐ろしいですが優しいやつですよ」

 俺は一目見たとき、マリオネットが守護霊には見えなかった。いままで見てきたのは少なくとも人間らしい外見だった。しかし彼は肩に大きな黒いぼろ布をまとい、二メートル近い長身で、体には肌が見えなくなるほどベルトが巻きつけられていた。まるでミイラの包帯のように巻きつくベルトは、多種多様の形をしていて、少し御洒落だった。その腕辺りから伸びているベルトには、俺の足を掴んでいた悪夢が締め付けられながらぶら下がっている。


「さあ、早く逃げて。増援が来てるみたいです」

 言われてみれば、神社の周りを囲う森の中から、ぞろぞろという感じに悪夢が出てきている。よく見れば全員同じ服装はもちろん顔まで一緒だった。


「ああ、こんなところに居たのね、ほら京平、走るわよ!」

 藍那に手を引かれ、リリスが切り開いた道を疾走する。その背後からの弾丸を防ぐように真が最後尾に来て、視界の端では上谷とマリオネットが暴れていた。マリオネットは全身を覆うベルトの長さを自在に操れるらしく、リリスの鞭とはまた違った戦いを繰り広げていた。

 俺と藍那は、森の中に入り、悪夢たちの追撃をかわしつつ逃げていた。しかしその時俺は気づいた。


「おい……俺達、山の奥に向かってないか?」


ようやく三十話です。

始めはここまで出来るなんて思ってなかったですねー

まだ続きます。第四章は長くなりそうです

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