第二話 「悪夢」
俺は見つけた。
少女を。
響く。少女の笑いが。
「アハハハハハハハッ、面白いのね」
あの少女が笑っている。すべての元凶、俺の日常にヒビを入れた少女は俺を見下ろしている。
少女は浮かんでいた。フワフワと、何の力も無く、気ままに風に乗って。それはまるで、幽霊。
その顔には、絶対の悪意。そのくせ笑っているのが余計な恐怖を掻き立てた。
「アハハハハハハハッ、あなたの大事な”オトモダチ”が消えちゃった!アハッ」
「秋元はどこだ!」
恐怖で声が上ずっていた。戦っても絶対に勝てないと確信していながら、逃げることもできないでいた。足がすくんでいるのか、それとも少女が空を浮いているように不思議な力が働いているのか……それすらもわからない。
「次わぁ、アハッ あ・な・た」
少女が宣告した。
俺は死ぬのか……? 思わず身構えた、何が来ても耐えられるように。
その刹那―――
「うっ、あああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!」
突如俺を襲った激しい頭痛。視界がぐらぐらする。立ちくらみの比じゃない気持ち悪さが全身をかけぬける。
なんとか目を開け、かすむ視界で焦点を合わせると少女の手が青白く光る触手のように伸びて、俺の口の中に流れ込んでいた。
俺の口に感触はなかったが、何かが挟まっているようで閉じることはできなかった。
耳鳴りも激しく立っていられなくなり壁によしかかるように倒れこんだ。
目がかすむ……頭がぼーっとして、でも気持ち悪かった。
もう限界だった。少女に対する怒りや憎しみはどうでも良くなり、
もう終わってほしかった。
自分がもし、死んだとしても。
――――突然少女が炎に包まれた。
真っ赤な炎は激しく、少女を包み込む。しかし、俺にとってはそれが不思議と暖かく感じた。
それと同時にこの気持ち悪さも消えていった。
「クソッ、何だ貴様ァ!」
ふと見れば、俺を苦しめていた少女と対峙する女の人がいた。彼女の手には炎が灯っていた。決して熱そうではなくしていたが、その炎に包まれた少女は熱そうだった。
どうやらこの人が俺を助けてくれたらしい。
「まさか……こいつの守護霊か?」
守護霊。そう言われた女の人は美しかった。
俺はまだ立つことができなかったが、女の人に見とれていた。その人は和服を着て(普通の着物ではなく巫女服に近いと思った。)髪を後ろでポニーテールのようにしていた(正しい名称があるんだろうが、俺のボキャブラリーにはなかった。)整った顔立ちには、まだどこか幼さが残る、俺と同じか少し上ぐらいだろう。
その人が口を開いてこういった。
「そう。私はこの、金城京平の守護霊。真だ。今すぐ立ち去るのであれば、今なら逃がしてやっても良いぞ?」
「ちっ、ふざけるなぁ!」
少女がまったく似つかない声で叫び、真と名乗る自称俺の守護霊は、一言。
「仕方ない」
とだけ言った。




