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第二十四話 「余韻」

 俺は目が覚めた。

 ハッ、と覚めた。


「え〜っと…ここはどこだ?」

 そこは俺の知らない場所、どうやらどこかの家の一室らしい。かなり漠然としているが、俺の記憶にはここに来たことはない、しかし俺はその部屋の折りたたみ式で硬いベッドに寝かされていた。

 部屋は、夏休みしか実家に帰らない大学生の部屋みたいな感じで、薄く埃かぶり必要最低限のものしか置かれていない。

 

「おーい、真?」

 俺は必死に記憶を呼び覚ます、確か…アレスに最後の最後で殺される寸前だった、だが何者かの黒い閃光によってアレスは吹き飛び、そのまま俺の意識はブラックアウト。

 部屋を見回しても真の気配は無いが…まさか真が消滅したわけではないだろう。

 それに桜井が無事だったのかどうかも気になる…こんなところで寝ているわけにはいかないか。


「とりあえず…部屋を出てみるか」

 誰もいないので、自分に断りを入れるようにつぶやく。そのまま部屋を出ようとドアに手を掛けた瞬間、ドアが開け放たれた。

 ドアをくぐってきたのは、長身長髪で、服は全身をロックに固め、インディースのバンドやってます、と言うかのような雰囲気だった。…って言うか誰?


「あの…」

 なんだか状況が理解できない俺に、男は気軽に自己紹介を始めた。


「ああ、私は、桜井涼さくらいりょうだ、よろしく」

 桜井さん…?ということは。


「ええと…桜井のお兄様でよろしいでしょうか?」

 なぜか俺は申し訳ない気持ちになった。


「ああ、そうだ。そんなことより今回の事件の話だが…破壊者は無事、消滅したようだ」

 桜井兄改め、涼さんは、どうやら霊やらに詳しそうだ。


「あの…あれからどうなったんですか?」

 聞きたいことはごまんとある。全部今説明して欲しいぐらいだ。


「ん…? とりあえず警察やらが来る前に君達は保護した。面倒はもう避けた。それで君達の守護霊は…真は無事だ、霊力を消費しすぎただけで疲れているだけだ。今は私の守護霊が面倒を見ている。」

 涼はどうやら真のことを知っているかのようだ。

 それにしてもまたとんでもない事件に巻き込まれたものだ。われながらこの三日間でありえない密度があった気がする。


「え…一応効きますけどヴァリエは…?」

 たしか散々傷だらけになった挙句、アレスの烙印に吹き飛ばされたはず。


「安心しろ。奴は強い、今も修復中だ」

 …どこか毒がある言い方だが、お兄様と守護霊の関係は良好ではないらしい。今は関係ないが。


「ここは桜井家ですよね?」

 もし、「いや、ちがう」といったら少し驚くが…


「そうだ、優希は下で寝ている。…彼女はまだ霊は見えないらしい」

 下、と言うのは下の階のことで、ここはおそらく二階。一軒家だ。


「それでいい機会だから君に言っておく…真のことだ」

 そう聞いて俺は少し胸をなでおろす。もし、妹に手を出すな。と言われたら走って逃げ出すところだったぜ。


「真がどうかしたんですか?」

 気が抜けていた俺に少し重い話だった。


「真はもともと別の人間の守護霊だったのは知っているな? たまたま主をなくし、この世を彷徨うだけになった彼女を保護したのは私だ」

 そう、真は今から2〜3年ほど前に、同じく守護霊をなくした俺に憑く事になった。


「保護?」

「そうだ、仮の主…とでも言えば良いかな? その時、たまたま守護霊がいない少年…君の事だが、君に憑けた」

 それは初耳だ。


「何か問題あるんですか?」

 聞いたところそれほど深刻でもなさそうだが。


「いや…気をつけろ、以前の主がフラッシュバックする恐れもある…まぁ、今の君には関係ないか」

 なんとも歯切れが悪いが、仕方ないのだろう。そんなことより聞きたいこともある。


「あの、俺、アレスと戦闘中に俺の意識が飛んで…勝手に体が戦ってたんですけど」

 急に体に何かが憑依したような感覚。今思い出すと恐ろしい。


「うむ…真から聞いたが、あまり気にしない方がいい。もし頻繁に起きるのであればまた私に言ってくれ」

 頼もしかった。真以上に霊に関して詳しそうだし、桜井の兄と言うこともあって信頼できた。


「じゃあ、俺もそろそろかえらねぇと…」

 時計を見ると、もう事件の日から翌日になっていた。というか親は知っているのだろうか。


「ああ、お母様には連絡を入れておいたよ。それと、真は明日まで私が預かる。もちろん回復のためだ」

 この人がどのように親に連絡を入れたのか気になるが、真がいないと言うのは、もし悪夢に襲われたらどうするのだろうか。


「そこで私の守護霊、ネイレスを貸してやろう」

 守護霊は貸し借りして良いのか?と言う俺の問いに「一日なら平気だ」と根拠も無く答えた。そして問題は涼の守護霊ネイレスさんは、妖精、が似つかわしい大人の女性だった。妖精の癖に魅力たっぷりな彼女は俺に変なプレッシャーを与えてきた。


「よろしくね、京平君」

 その言葉だけで、もう俺は…


「は、はぃい、よろしく…」

 家に帰ってからも落ち着くことはできなかった。



***

 


 夜、俺の親はなんとも言ってこなかったが、明日からはまた学校がある。

 なぜだかすごくだるい…


「じぁあ、おおやすみ、京平君」

 ネイレスさんが陽気に言った。

 俺はふと思い出したことを聞いた。


「そういえば最後の最後、アレスに黒い閃光を放ったのはネイレスさんですよね?」

 何気なく聞いた。黒の閃光は彼女に似合わないと思った。それだけだった。


「え?黒い閃光? えーっと、私達が助けに行った時はもう全部終わっていたんだけど…」

 なに?それはどういう…


「それに私の力は、精霊の歌っていう声を武器にするのよ。閃光は出せないわ」

 いったい誰だろう。あの閃光を放ったのは。おそらく真は見ていないだろう。俺しか見ていない…まあいいか。と俺は睡魔に白旗を揚げ、あっさり眠りについた。

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