第二十話 「誓い。」
自身の攻撃である大剣に烙印を施したものが跳ね返され、その爆発により体が吹き飛んだアレス。それを尻目に桜井が拘束されている柱へ悠々と歩いていく京平。
「桜井・・」
彼女の顔は蒼白だが、命は無事。
京平も少し悲しそうな顔をしてその頬に触れた。
「まだ・・終わっていない・・」
黒色の塊が収束し、1つの形を作る。
アレスは、その力で何度も再生する。
「これが…守護霊に無い力だ!」
再生したアレスは、棒立ちしている京平に突進する。
しかしそれは真の放つ炎弾で遮られる。
「邪魔をするなぁ!」
憤怒の形相で叫ぶアレス。
いったいなぜ彼はそこまでして……
(奴は確か・・人間の憎しみが見たいとぬかしていたな。)
ヴァリエは傷のため戦闘には参加せず、傍から見守っていた。
歩くこともままならない。しかし思考をめぐらせていた。
(奴の目的は・・・・)
ショッピングモールの征服。
桜井をさらう。
京平との戦闘。
人間の憎しみ。
・・・まさか、奴は京平を・・?
そのための桜井か!
しかし、真の存在は誤算か?
いやそんなはずは無い、守護霊なら私だって・・・
だとすれば。早く主を助けなければ。
「もう諦めろ。破壊者。あと何回殺せば消滅するんだ?」
京平は回し蹴りでアレスの首を吹き飛ばしていた。
しかしアレスの体はすぐに再生を始める。
埒が明かない・・
「まあまあ、落ち着け・・・ふふっ」
アレスはこの状況でも余裕の笑みを浮かべる。
真は霊力の流れを感じた。
途端、桜井を拘束していた縄がきつく締まりだした。
桜井は締め付けられうめき声を上げる。
「貴様・・やめろ!」
京平がアレスと戦闘を始めてから初めて焦りだす。
「動くな・・・金城、…どうだ、私が憎いか?」
そうつぶやきつつもさらに縄をきつく締めていく。
アレスが右手を握ると桜井の縄もしまっていく仕組みになっているらしい。
「憎い・・・?笑わせるな。愚かだ」
京平は鼻で笑う。
この状況でも余裕でいられるのは自信があるのだろうか。
「なんだと・・・?貴様、この小娘の命を私が握っているのだぞ?」
アレスはそうつぶやきながらさらに縄を絞める。
桜井の肌に縄が食い込み、血液の循環が悪くなっていく。
さすがにこれ以上は危険だ。
「諦めろ。貴様に僕は吸収できない」
吸収。それは守護霊において禁忌である秘術。
その内容は人間を一人、丸ごと霊力に変換する。つまり人を殺して吸い取ること。これにより莫大な霊力を守護霊は得ることができる。しかし人間を守るための守護霊が人間を殺すのは意味が無い、ということでその方法は受け継がれることなく消滅した。はずである。
「なぜ・・・吸収だと?」
アレスはその方法を知っているのか、またこの事件の目的がそれなのか、不明である。
「簡単な理屈だ、僕・・・つまり人間は憎しみを得ることで霊力が一時的に向上する・・・その時に吸収したかったんだろう?」
京平は霊に関して詳しすぎる・・・
「残念ながら貴様程度の霊力では僕は吸収できない」
こんなのは・・・京平じゃない。
「消してやるよ。あっさりとね」
嫌だ!
「京平!」
真が叫ぶ。
京平が真を見る。
守護霊には珍しい。
人間のある行為。
涙。
真は泣いていた。
一粒だけ、頬を伝う涙。
「真・・・僕の真・・・どうか泣かないでくれ」
京平はおぼつかない足取りで真に歩み寄る。
「させるかぁぁぁ!」
アレスが特攻をしかけるが・・・
「黙れ」
京平の手から霊力の塊が線状に奔り、アレスの両腕をはじけ飛ばし、胸を貫通して壁に串刺しにする。また、三本の霊線が奔り、アレスに刺さる。もう彼は行動不能状態になる。
「真、僕の真。泣かないで、僕が君を守るから」
京平が優しく真を抱き寄せキスをした。
(違う・・・)
(京平じゃない・・・)
(こんなの・・京平じゃない!)
「離れて!」
真が京平を突き飛ばす。
不意に飛ばされたため、床に頭を打つ。
「いっててて・・、なんなんだ? いったい・・・?」
京平がゆっくり起きる。
「俺はいったい何してたんだ?」
京平は覚めた。




