第十九話 「覚醒、そして殺戮」
「京平・・・。」
真は正直驚いていた。というのもヴァリエが串刺しになり・・つまり敗北を喫していることだった。真とヴァリエは特に交友が深いわけではないが、お互いに実力は知っていた。
ヴァリエの実力は相当なものだった。
その彼が、致命傷を負い、主を見失っているのは信じられなかった。
「桜井は・・?桜井はどこだ!?」
京平はかなり正気を失っていた。
自分が彼女のそばを離れたばかりに、ひどい目にあっているのではないかと。
その自責の念から呆然となり、しばしヴァリエと周囲を見回していた。
だが、まるで何かを悟ったように彼は勢い良くヴァリエに刺さっていた大剣を引き抜き、掲げた。
その見た目からは到底、生身の人間には持ち上げることができないような剣を肩に乗せ、静かに囁いた。
「犯人を殺す。」
真はその場に立ち尽くし、京平の霊力が増幅している事に気が付いた。
普通、人間の霊力が感情によって変化することはない。
彼にはいったい何が・・・
「・・我が・・主は・・おそらくさらわれている。」
ヴァリエが何とか地面からうめき声を上げる。
腹部の傷から血液のように霊力が漏れ出している。
「そうか・・それなら桜井のいるところに犯人もいるんだな。・・ヴァリエ、つながりで主がどこにいるのかわかるな?」
いつもと違う京平。
もう彼は別人に見えていた。
「ああ・・私も連れて行ってくれ・・その方がわかりやすい。」
そう聞くなり、ヴァリエを担ぎ上げる。
そして振り向きながら真に言った。
「真、君も僕と一緒に戦おう。」
雰囲気・・まるで別人の京平はそのまま歩き出す。
真はある既視感を覚えた。
いつか・・いや、違う。
いつも・・?
その思考も途切れることになる。
不意に残骸の陰から、鎧を身にまとった悪夢が飛び出した。
その悪夢は思考していた真を狙う。
「くっ、!?」
真は急に自分に敵意を向けられ、力が漲るのを感じつつも回避する。
しかしバランスを崩し、敵の二回目の攻撃をかわすことができない―――
「大丈夫か?真。」
さっきまで悪夢がいた位置に大剣が振り下ろされている。
京平は神速の斬撃により悪夢を一撃で消滅させていた。
やはり、いつもの彼・・いや、普通の人間では考えられない事態だった。
「あ・・うん、ねぇ、京平?」
真は心強さよりも、京平がいなくなってしまう恐怖心があった。
それを・・確かめたい。
「ん?どうした・・?」
反応はいつもと同じ・・?
いつも?
「桜井さんの事、好き?」
聞きたいことはそうではない。
しかし、真にとっては真実はまだ早い気がしていた。
「・・・さぁ、助けに行くぞ。」
それはもうすでに答えだったのだろうか。
ヴァリエは終始無言でいた。
京平が歩みだす。
それに真が付いていく。
それにヴァリエが案内をする。
たどり着いたのは機械調整室ではなく、屋内駐車場であった。
しかしそこには本来あるはずの・・車がなく、一面柱しかなく、その柱の中心・・・そこに黒い縄のようなもので縛り付けられた桜井の姿があった。
「お待ちしていました、金城様。楽しいショーは・・」
アレスが悠々と構える。
肩には新しい大剣が刺さっている。
「これからですよ?」
アレスはいったいどこで京平の名前を知ったのだろう。
真は疑問に思いながらも警戒を怠らない。
すでに真は大人状態にあり、戦闘も避けられないことを悟っていた。
「黙れ。小汚い暴力者め。」
京平は吐き捨てた。
真はまた、既視感に襲われつつも、戦闘を開始した。
アレスはまず、真に攻撃を仕掛けた。
肩の大剣を引き抜き、至近距離から大振りを繰り出す。
真は受け止める気はなく、地面をけり、舞い上がるように空へ攻撃をかわす。
京平がヴァリエを放り捨て、手に持った大剣を直線軌道で放つ。
アレスは交わすことができず、直撃する。
アレスが吹き飛び地面に伏す。
「・・雑魚め。」
京平がそう言い、桜井を助けに柱へと向かう。
「後ろだ!!」
ヴァリエが倒れたまま叫ぶ。
京平は動じず、振り向いただけでアレスの攻撃・・ふやけた烙印が施された大剣を受け止める。
「馬鹿めぇ!!」
アレスが歓喜の声をあげる。
「甘いんだよ。」
京平は投げ返す。
それ。はアレスの眼前で爆発する。
「破壊者如きで僕には勝てないんだよ。」
もう真は彼を京平と信じることができなかった。




