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第一話 第一章「少女」

俺は街を歩いていると、少女とぶつかった。そのまま何もいわず走り出すと、トラックに轢かれてしまう。

しかし、トラックに駆け寄ると少女はいなかった。

トラック運転手は知り合いのオッサンだった。

翌日のニュースでオッサンが事故で死んだと報道された・・・

「母さん、悪い、ちょっと出かけてくるから……」

 有無を言わせず俺は家を飛び出した。目指す場所はもちろんあの交差点。俺とオッサンが最後に会った場所だ。


「嘘だ……絶対に」

 別にそこまで親しいわけではなかった。だが、昨日まで普通に話していた人間が、死ぬというのは、

誰であれ嫌だった。

 現場までは走ってきたからか、すぐであった。そこには人だかりと無残な姿になったトラックが横たわっていた。

 ―――俺は一瞬、その光景が理解できなかった。

 どれくらいの時間が経っただろうか。人々が話しが聞こえてきた。

『運転手の暴走運転だったらしいよ』

『まぁ、怪我人が運転手以外に居なかったらしいからいいじゃん』

『でも、死んだんでしょ? 運転手』



 トラックは事件後そのままの状態で、道は渋滞していたため撤去はたぶん明日になるだろう。

すると人だかりの中から聞きなれた声が聞こえた。

「おう 金城じゃん。お前も野次馬しに来たのかぁ?」

 クラスメートの秋元がいた。ついでに山下と川上もいた。

 こいつらは中学からの仲だったが、最近は俺ではなく女子と遊んでおり、今会ったのも偶然だった。そして今日は珍しく男だけだった。


「どうした? そんなにあせって」

 川上ののんきな問いには答えず、俺は三人に迫るように訪ねる。

 俺がここまで来たのは、ただ単に無残なトラックを見に来たわけではない。ずっと気になっていたのだ、昨日の少女。トラックに轢かれたはずの希薄な少女。


「このへんで小学生ぐらいの女の子を見なかったか?」

 少女は死なず、おっさんが死んだ。となれば、どこかに少女がいるのではないか。そして少女は何者だったのか。


「うへぇ、まさかのロリコン発言?」

 山下が冷やかす。俺はそれを無視してさらに叫ぶ。


「ちがう! そんなんじゃない!!」

 俺の真剣さに圧倒されたかこいつらも真剣に考え始めた。

 金城って妹いたっけ?とか意味のないことだったが……やがて


「もしかしてあの子のこと?」

 川上が指差した先には、間違いなく昨日の少女。

人だかりから離れたところ、裏路地へ通じている通りのちょうど手前に、独りぽつんと立っている。

 いわれなければ気付かないような感じだ。

 俺は急いで駆け寄った。3人も後から付いてきた。


「なあ、君、昨日ここにいたよな?」


「…………」

 俺を完全に無視。

 すると秋山が、怒ったように言った。


「おい、きいてんのかよ!なんとか言えよ!!」

 まあまあ、と他2名がなだめる。


 不意に少女が口を動かす。何か小声で何か囁いているようだ。

「ん?なんだ聞こえない。もっと大きく……」

 俺は必死にその声を聞こうと顔を近づける。

 秋元たちはあきれて帰ろうとして、俺たちに背を向けた。

 少女の口はパクパクするだけで、声が聞こえない。

 やがて秋元たちが遠ざかってから、笑いを含んでこういった。


「アブナイヨ アナタノ ト モ ダ チ」

「え?」

 俺は一瞬凍りついた。何のことか理解できなかった。だから少女が背を向けた秋元たちのほうに走りだしたのにも気づかなかった。


「あっ、こいつ俺の財布とりやがった!」

 という秋元の怒り声と他二人の笑い声で我に帰った。

 秋元は自分の財布取った少女を追いかけていった。

 他二人はただ見ていた。

 少女は路地に入った。

 秋元は追いかけた。

 俺も追いかけた。

 そして―――。


 秋元が路地に入り、見えなくなった。

 見えなくなった。

 見失った。

 失った。


 俺の頭の中であの少女の言葉。トラック運転手のオッサン。見失った秋元。

 それらが順番に思い浮かんだ。

 そして俺。


「秋元……?」

 俺は恐る恐る路地に入った。

 しかしそこには誰もいなかった。

 いない。ただそれだけ


「秋元ぉ!」

 叫んだ。路地の奥まで走っていった。

 振り向けば、川上、山下がいない。

 俺の不安は絶頂に達した。

 次は不安ではなく恐怖が来るような気がして……

 そして俺は……


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