第十八話 「破壊者アレス」
「アレス、君はこんな愚かなことをする奴だったとは思わなかったよ」
ヴァリエは心底がっかりした。というような感じで言った。
「ふふ、君こそ、まだ守護霊でいたとはね。」
アレスはニヤニヤしながら言う。
「どういう意味だ?」
「守護霊は無力だ。」
アレスは言い切った。
彼もまた、昔は守護霊であった、しかし今は主を失い、また守護霊としての使命も失い、実質悪夢のようにさまよっているだけだった。
そんな彼が、いま。このような事件を起こし、旧友であったはずのヴァリエに刃を向けている。
「今から証明してやる・・・守護霊の無力さを・・・。」
そう一人つぶやくようにして言った。
刹那、ヴァリエを囲むように黒色の火柱があがる。
火柱は、他の人間にも見えるため、桜井には火柱だけが見えていた。
「な、なにこれ・・・」
彼女はその火柱の中にうっすらと、人影を見た。
「アレス・・技が変わらないとは感心しないな。」
ヴァリエは神速で足を動かし真上に飛ぶ。
天井までわずかの時間で到達し、また天井をけり、斜めに火柱を超える。
その間、アレスは動かなかった。
天井をけり、細身の剣をつきの構えでアレスを目指す。
アレスは肩に刺さっていた大剣を引き抜き、ブーメランのようにヴァリエに投げる。
弧を描き、大剣はヴァリエの軌道に直撃・・のように感じたが、はじかれ大剣の軌道が反れる。
「さすがはミラージュナイト。だが、守護霊ではできないこともある。」
アレスが、そうつぶやく間もヴァリエは接近してくる。
―――ヴァリエの突きは、まるで子供相手のように軽く上半身を曲げるだけで交わされてしまう。
「弱点の克服・・ミラージュナイト、君はカウンターが最大の武器だ。」
交わされた後も、ヴァリエは至近距離から斬撃を繰り出す。
傍らに落ちていた大剣が糸に引かれたようにアレスの手の中に戻り、それを使って斬撃を防ぐ。
「しかし、君にはそれ以外の武器がない。」
ヴァリエが渾身の一撃を放ったが、・・・
「ゆえに、君は弱い。」
アレスの大剣にふやけた烙印が走り、大剣が前方・・ヴァリエのほうにだけ爆発する。
破片がヴァリエの体に直撃。その衝撃で細身の剣が吹き飛ぶ。
破片は付近にあった店を何件も吹き飛ばす威力だった。
「ミラージュナイト・・いや、ヴァリエ。わかったか?君は弱い。」
アレスが見下ろしながら、勝ち誇ったように言った。
「あの時は・・私の圧勝だったのに・・皮肉ですね。」
ヴァリエはまだ落ち着いていった。
「しかし・・烙印をなめないで欲しいですね。」
ヴァリエのしっかりとした烙印が、アレスの全身に張り巡らされる。
それが瞬時に収束そして・・・爆発。
内部に爆風が走り、アレスの体が吹き飛んだ。
「ふう・・何とか・・なったか。」
ヴァリエ渾身のカウンターは烙印の力を最大限に利用した時間差で放たれた。
そのため油断したアレスは、それまでの自身が与えたダメージを一度に食らった。
その安堵もつかの間 −−−−−
「守護霊にはない力。」
アレスの破片と思われるものが収束。
黒い影となり、人型を形成する。
人型はアレスとなり。
大剣をヴァリエに向ける。
「烙印を超える力。」
すでに力を使い果たし、地面に寝ていたヴァリエ。
立て続けにおきたなぞの爆発に混乱していた桜井。
二人が同時に、再生したアレスを見た。
「アレス!?、クソッ・・実体化したのか・・」
実体化。つまり霊力が弱い人間にも見えるようになる。
「あ・・?」
桜井が理解する間もなく、黒い縄のような影に拘束される、と同時にアレスの肩に刺さっていた大剣が、ヴァリエを串刺しにする。
「グッ・・貴様・・?」
黒き縄で拘束された桜井は意識をなくし、彼女を担いだアレスはあたり一面にふやけた烙印を張り巡らせ・・・あたりは爆発した。
また、彼は携帯に酷似したトランシーバーのようなものを出し、それのボタンを押し、こう告げた。
ピンポンパンポーン。
「愚かな人間よ、聞け。今、三階の服屋を爆発した。辺りにいた人間はすべて吹き飛んだであろう。繰り返し忠告だ。余計な動きはするな・・・・・」
その先を俺は覚えていない。
ただ覚えていたとすれば、真の忠告も聞かず、ただ今まで来た道を引き返し、桜井と分かれた服屋を目指して走り出したことだ。
「京平、止まって、まだ犯人がどこで何をしているかわからないから・・・」
真には、俺を止めるすべはない。
階段を駆け下り、三階の・・元は服屋であった場所にたどり着いた。
そこには剣で串刺しにされたヴァリエしかいなかった―――。




