第十六話 「虹のナイト」
「え、・・・何これ・・」
桜井が恐怖を声色に出していた。
アナウンスから聞こえた言葉は、明らかな脅迫。駐車場を爆発した・・と。
そしておとなしくしていれば死人は出ない。
「(真、こんなことするのは・・・)」
さっきの真とヴァリエの会話。
頭脳を持った悪夢。
「うん。たぶんそう、二回の爆発から霊力を感じた。」
霊力を感じたということは、もう犯人は悪夢で決定か?
人々は先ほどのアナウンスにより、混乱、その中で若い男の集団が店員の首元をつかんで騒いでいる。
「おいおいおい!これはどういうことなんだよ!こっちは急いでるんだ。さっさとここから出せよ!」
さらに店員はオロオロしながら、他の客にも囲まれてゆく。
「す、すみません、シャッターとアナウンスは、三階の機械調整室で管理されていますので・・私はどうとも・・・」
そういうと、店員は若い男の集団にドツキまわされ、ばったり倒れてしまった。
「おい、おめぇら!三階だってよ。いくぞ!」
そういうと若い集団は階段を駆け上がっていた。
「京平!あの男たちの守護霊、そんなに霊力が強くない。危険だよ、相手は頭脳を持った悪夢かもしれない・・・」
たしかに、犯人もアナウンスで動くな!おとなしくしろ。的なことを言っていた。
彼らだけが被害を受けるならまだしも、他の人にも被害が出るのはよくない。
「桜井、少しここで待ってろ、すぐ戻るから・・」
そういって俺も男の集団を追っていこうとするが・・
「ダメ!・・・私も行く。」
そういって俺の袖口をつかんだ。
「ダメだ。危険だ。」
当然俺は許さない。しかしつかんだ手を振りほどかなかった。
「大丈夫だよ・・よくお兄ちゃんについて回って遊んでたからね。」
それとこれとは別だが、兄がいたのか。
「それに、敵がもし、頭脳を持った悪夢であれば君たちだけで行くのも危険だろう?」
ヴァリエも同意する。というかあんたの主が危険な目にあうかもしれないんだぞ?
「安心しろ。必ず私が主を守る。」
ヴァリエが保障する。
もう仕方ないか・・・
「・・遅れるなよ?」
そういって俺も階段めがけて走り出す。
後ろから桜井が付いてくるのを感じながら。
エスカレーターは止まっていたので、三階まで階段を駆け上がりつつ、周りの状況を把握する。もちろん二、三階にも人がいるが、さっきの爆発事件と脅迫のアナウンスがあってから、動き回るようなまねをする奴はいない。
「京平、あれ!上見て。」
真が俺の肩から声を上げる。
俺も言われたとおり上を見上げる。
するとそこに、骸骨の首だけが空を飛び、マントのようにぼろ布が後を引いている、悪夢がいた。
「ケケケケケケケケ、ウゴキマワルナトイッタダロ。」
その悪夢は俺たちではなく、先に行った若い男の集団に語りかけていた。
当然桜井は気づかない。
「(真、あいつ、消せるか?)」
聞いてから思った。
できない。真は子供のまま、つまりあの悪夢は真に敵意を向けていないのだ。
ついでに、他の人には見えていないらしい。
・・・ということは俺の霊力も強くなってるのか?
それともただ霊に関わりすぎて、俗に言う「見える人」の仲間入りか。心霊特番にでも出るか。
「ケケッケケケケ」
悪夢のほうは、首から上だけだとおもっていたが、急に体のあるべき場所に紫の炎が上がり、骨の体が浮かび上がってきた。その手には、骨でできた刀が握られている。
ズバァ
「キャーッ!!」
桜井が悲鳴を上げる。
若者集団の先頭を走っていた金髪男が胸を斜めに斬られている。
悪夢が人間を斬った。
金髪男の体からは、俺が今までに見たこともないようなぐらいの血が流れている。
たちまちそれは水溜りを作る。真っ赤な・・・
「桜井、こっちだ。」
俺は桜井の肩を抱き、三階にあった服屋の商品の影に連れて行く。
そして俺は更なる犠牲者が出ないように、骸骨悪夢を消すために振り向く。
「ここでじっとしていろよ。」
ヴァリエもいるし。と思っていると彼が俺に声をかけてきた。
「君もここにいたまえ。私があれを退治してこよう。」
そういうと彼は細身の剣を抜き出し、まっすぐ駆けていった。
大丈夫か・・?ヴァリエの実力は一応見たことはあるが、あの悪夢も相当の速さで斬りを繰り出されていた。霊力も相当に違いない。
「ケケケ?アンダオマエ・・・?ウヲッ」
悪夢がキーキー声で話し終える前にヴァリエは斬撃を繰り出す。
しかし威力はさほどなく、あっさり防がれる。
「・・・さあ、悪夢と踊ろうか。」
誰に言うでもなく、ヴァリエは囁く。
そして、まるで踊るように。軽やかに細身の剣を振る。
骸骨悪夢もその動きに合わせ、踊るように防御をする。
若者集団はいきなり仲間が斬られ、怯え、とにかく仲間を助けるため混乱している、
俺と桜井は、服の影から様子を伺う。
「ケケーケケケ、!!!」
骸骨悪夢は、ヴァリエの踊りの隙を見つけ、流れを変えて、大きく斬撃を走らせる。
ヴァリエは何の構えもなく、防御するつもりもない。
「!!おい!?」
うごかねぇと・・・
そう思ったのもつかの間。
斬撃の先端、刀の切先がヴァリエに触れる寸前、本当に触れたのではないか、と思うような距離で、彼の周りに虹、オーロラ、光の屈折と反射。すべてが起きた気がした。
光が、閃光が、煌いたかと思うと、一閃。
ヴァリエの細身の剣が虹の尾を引きながら悪夢を切り裂いていた。
一撃。まさにそれで悪夢をしとめてしまった。
カウンター。それが彼の戦闘スタイルだった。
「お分かりいただけたかな?僕の実力を。」
憎たらしいほどのハンサムスマイルで。
なんか遅れてしまいました。
これからもがんばります。




