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第十三話 断章「過去」

「主、お目覚めください。」


「ん・・・、セーレ?」

・・・なんだろう。懐かしい気がする。

夢?いや、違う。

記憶。

「ん・・・、おはよう。セーレ」

広い和室。敷布団の中で目をこすっている私を覗き込んでいるのは、私の守護霊、セーレ。毎朝私を起こしてくれる。強くて優しい天使のような人。


「・・・今日は大事な日ですね。」

セーレは複雑な顔で言った。

そう、今日は大事な日。

私の十歳の誕生日。

そして

儀式がある日。

私、藤咲恭子は今日で十歳になった。

藤咲家というのは、なんでも昔から続く家系で、霊力に関わる歴史がある。

そのうちのひとつ、強力な守護霊を先祖代々引き継いでいる。セーレもその一人。でも私には生まれた時からセーレはいたし、それが当たり前であった。


そしてもうひとつ、藤咲家の人間は個人の霊力が強く、また兄弟の中で一番霊力が強い人間が本家の名を継ぐ。それを決める儀式。


その儀式が今日ある。


今まで本家を継いでいたのは母。

しかしその母も一週間前に死んでしまった。

特に問題はない。病死であった。


儀式は私の兄弟、姉と弟がいる。

弟は霊力が弱い(それでも一般人よりははるかに強い)ので外の社会に働き口が決まっている。

藤咲家では英才教育が施されているため、職場には困らない。

姉は霊力が強い。基本女子は霊力が強いのだ。

そして現在分家である叔母の娘、そこに私も含め三人で行われる。


問題は私に霊力のかけらもないことだった。


セーレが付いているから、悪夢に襲われることはないし、つながりもあるから問題はないが、本家が継げず、母がいないと身寄りが姉しかいなくなる。(おそらく、姉が本家を継ぐであろう)

姉と血のつながりがあるため、この屋敷にいても良いだろうが、どちらにしても霊力がない私にとって霊関係の由緒正しい屋敷は居辛かった。


「ねぇセーレ、いい方法はないかな?」

霊力は生まれた時に決まるものではなく、成長の過程で目覚めることもある。


「いけませんよ、無理やり目覚めさせたり、儀式でズルをしたりしては。」

セーレは優しく諭しているようだった。確かにテストの時はズルをしたこともあった。


「それに分家でもあなたはあなた。何も変わりません。悲観することはないのです」


「・・・別にまだ決まったわけじゃないじゃない」

セーレのほうがズルい、実際私に儀式で選ばれることはないであろう。

しかし姉が正式に本家を継いだとしても、私は変われないだろう。すべてお見通しみたいだ。


私は悩みながら歩いていた。

無駄に広い庭。庭園というらしい。

この屋敷の中でずっと暮らしてきたため、外については良く知らない。でも先生には社会について教えてもらってるし、その中で生きていける自身がある。でも・・・


「はぁ。」

庭園の中心に花壇がある。

花壇には色とりどりの花があり、これは・・・福寿草という黄色い花だ。毒草なので注意して。といわれた。

することもないので眺めながら物思いにふけっていると、人が来る気配がした。


「あら、こんなところで何しているの?」

来たのは叔母さんだった。分家のこの人はきっと霊力もないくせに本家である私にいい印象はないだろう。でもこの人は私によくしてくれる。娘さんもいい子なので、儀式で選ばれても不服ではない。


「うん・・・儀式は午後からだよね?」

とりあえず話題を出して話を終わらして一人になりたかった。


「そうそう、儀式の事で恭子ちゃんに話があるの。」

良くしてくれた叔母さんだ。きっと気を使ってくれてるに違いない。

セーレが私の肩に手を置いた。


「なぁに?」


「恭子ちゃん、霊力に自信ないでしょ?」

いきなりグサッとくる。


「心配しないで、機会がないから目覚めてないだけかもしれない。」


「まて、それは・・・」

セーレが口を挟む。


「君には関係ないだろう?入らないでくれ。」

反論したのは叔母の守護霊シトリー。

セーレはシトリーに反論しない。いつもそうだった。


「で、何なの、話って」

私は早く聞きたかった。もしかしたら霊力に目覚めるかもしれない。本家にならなくとも屋敷で暮らしていける。


「擬似悪夢にあうの」

知らない言葉だ。


「ぎじあくむ?」


「そうよ、シトリーの力を使えばね。本物に会わなくとも見ることができるのよ。」

叔母が言うと少しは安心できる。それに本物に会うわけではないのだ。


「うん。会うだけでいいのね?」

セーレが何か言いたげだが、彼は少し過保護になるとこがある。

それに、叔母が何かするとしたら私ではなく姉だろう。屋敷には他にも人がいっぱいいるし、本物に会うわけでもないから安全だろう。


「やらせて」

承諾した。


「じゃ、屋敷の封霊室に来てね。」

封霊室。屋敷の真ん中にあって、小さい物置のような所だ。


「主・・・良いのですか?」

セーレが心配そうに聞く。


「いいのよ。」

その一言で、私は屋敷の中に駆け出し封霊室に行く。

部屋の前に叔母が立ってる。


「セーレは入らないで!」

シトリーが叫ぶと、私は部屋の中に入れられ、扉が硬く閉ざされた。


「どうして?、セーレもいないと・・・」

不安。初めてセーレと離れ離れになった。


「悪夢を見るだけ、セーレがいると安心してあなたの力が眠ったままよ?」

そういいつつ、部屋の中心にろうそくを立て、火をつけた。


「では・・・ゆきますよ?」

シトリーが私の目を見ながら言った。

えぐられるような視線の奥に、暗い霧のようなものがたちこめていた。


「上を見てください。」

そういわれ、見上げると靄にかかった何かがうごめいている。

よく見ようと目を凝らすと、それは急に形を作り私が怖い物二つ――蛇と蜘蛛だが――が合わさった巨大な化け物になった。蛇の胴体から、蜘蛛の足が生えている。屋敷によく出て怖がっていた二つの生き物。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ」

その化け物が私に向かって直進してくる。

シトリーは目を閉じて祈りを捧げているようだった。


「さぁ!しっかり見なさい!目覚めの時よ!」

叔母が叫ぶ。といってもこんな化け物直視できない。

おまけにちかよってくるので落ち着けない。


「・・・助けて・・・」

耳を突き刺すような叫び声を上げる化け物。

噛み付くすんでのところで、右に飛び交わす。もし飛んでいなかったら・・・

本当に無事なのだろうか。


怪物の足が私を捉えた。

毛がびっしり生えた黒い柱のような足。

蛇の頭にある裂け目のような口。

滴り落ちる蛇のよだれ。

赤に染まった瞳。

近づく毒牙。

襲い来る。


「セーレ!!助けてぇぇぇぇぇ!」

私は叫んだ。

彼なら助けてくれるだろう。

きっと。


「シトリー!」

叔母がそういうと、怪物がとまった。

とまっただけで、私を捉える足は退かないし、蛇の口から吹きかかる熱い吐息は留まらない。


バサッ、バシッ、バァン


立て続けにドアに三本の氷柱が突き刺さる。

と同時に部屋が今まではろうそくの明かりで照らされていたが、薄暗くなり、足元に烙印が張り巡らされた。

ドアを突き破って入ってきたのはセーレ。

しかし彼の姿は私が知るものとは異なっていた、悪魔。

それがぴったりであった。


ズブゥ、ブシャ、

化け物にも二本の氷柱が突き刺さる。

化け物は紫の煙になって消えてしまった。


「セーレ、どうして邪魔をするのだ。」

シトリーが静かに言った。


「退け」

もう一言、付け足した。


「黙れ、今の私に指図をするな」

セーレが言った、そして氷柱を刀のように発生させるとそのままシトリーに切りかかる。


「・・・ふん、私は知っているぞ?セーレ、貴様の恐怖の対象が。」

・・・そういえば聞いたことがある。

シトリーの力、心想視聴。

これは対象の心の中にある感情を引き出し、再現する。

私は蜘蛛と蛇、ではセーレの恐怖の対象とは?


シトリーの姿が変わり、女性の姿に成る。

どこかで見たような、どこか懐かしい女の人であった。


「私を切れるのか?セーレ私はお前のことを・・・」


ズバァ、


何のためらいもなくセーレは切り裂いた。


「・・くっ、なぜ、貴様の最愛の人間であっただろう・・・?」

シトリーの姿が元に戻る。どうやら力がもうないようだ。

ダメージが大きいのだろう。


「私の最愛の人間は今の主だ。それ以外の何者でもない」

セーレは感情のない真っ青な目に光る一筋のカケラを浮かべ、


「泣いて許しを請え」


「それができないのなら」


「ここで今」


「死んで見せてくれ」


セーレが最後の一撃を構え・・・


「待ちな!」

ドタドタドタ、セーレが破ってきたドアのあたりに、屋敷の人間がたくさんいる。

姉もいた。


「なにをやっているの?」

姉が泣きそうな目で言った。


「この叔母が私たちを・・・」

私が真実を言う。

叔母が私をはめようとした。

この時はわからなかったが、私の霊力はその片鱗を見せていた。

叔母はそれが恐ろしく、また彼女の娘は姉にも勝るほどであったらしい。

十年間ため続けた霊力が発揮される恐れがあると判断した叔母は、私を怖がらせ、霊に関わりたくないようにしようとした。


「しかし!現場を見るとそうでもないようですが?」

声を張り上げたのは叔父、そしてセーレが止めを刺す寸前でみんなが入ってきた。


「セーレ!説明しろ!」

セーレはシトリーを切り裂いたし、もともと私の守護霊だから信頼が薄い。

そんなことを理解していた彼は、シトリーを治療し、私だけにこういった。


「行きましょう。主、そして、ごめんなさい」

彼はいつもの優しい彼に戻っていた。


「うん。・・・・」

そうして堂々と野次馬の脇を抜け、中庭に出た。

花壇の真ん中に座る。

手元には、福寿草。


「ねぇ、セーレ。この福寿草には毒があるんだよ。」


「そうですね」


「この毒で・・・みんな殺せるかな?」


「ダメです。」


「どうして?」


「その花は・・・あなたのお母さんが好きな花だったでしょう?毒があるって教えてくれたのも彼女ではありませんか。」


「うん・・・でも・・」


「それに私はあなたに人間でいて欲しい。どうか人が人を殺すようなことはしないでください。」


「・・・・。」


「私は、あなたが幸せになれるよう、勤めます。あなたの、人としての幸せのために。」


「セーレ・・」


「行きましょう。おそらくは外の世界で職場を用意されてるはずです。」


「セーレ」


「?」

最後の一言が・・・・・

「ありがとう」


重なった。

セーレが微笑む顔。

私を優しく包み込むただ一人だけの存在。


いきましょう。


そうして私はまた、地の底から這い上がるのね。

福寿草の花言葉  「永久の幸福、思い出、幸福を招く、祝福」です。

番外編、藤崎恭子、セーレ編です。

もっとつめて書きたいような内容ですが、それでは濃すぎるかと思い、このように仕上がりなってしまいました。内容を少しはぐらかした部分があります。うまくはぐらかせたかなぁ・・・


次回は前に立てたフラグを回収できます。

「もちろん友達も一緒に」ね。

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