第十二話 「あなたのために」
「動かないで!」
藤崎が叫んだ。おそらくは気が動転しているのだろう。自分が信じていた守護霊が負けたのだ。しかたないが・・・今は藍那を助けることを最優先だ。
「(リリスさん、いいですか?)」
俺は小声で呼び掛けた。
「(なんだ?打開策でもあるって言うの?)」
リリスと直接話をしたのは初めてかもしれないな。まぁどうでもいい。
そんなことより・・・
「(はい、打開できるかわかりませんが一応、)」
自分でも自身がない。その場で簡単に思いつくような作戦だからだ。
「(早くして、じゃないとあの女、藍那の首をへし折るつもりなの?)」
たしかに、藤崎の首を絞める手に必要以上に力がかかってる。
藍那が危ない。
「(よく聞いてくださいね、まずリリスさんと真は囮になってもらいます。)」
つまり、この作戦で俺がやるべきことは・・・
「(囮?動いたら殺すって言ってるのよ?)」
リリスも藍那を傷つけたくないのは当たり前だ。もちろん俺だってそうだ。
「(大丈夫です。藤崎だって一般人です、首を切るのにためらいがあります。そして彼女は守護霊を警戒しています。先ほどリリスさんに突き飛ばされてましたしね。真も今は大丈夫みたいですが、セーレが倒れてる今となっては、いつ子供の姿になるかわかりません。ということで俺が向かえばきっと驚くでしょう。普通の人間ですしね。)」
すべて可能性でしかないが、それでもやるしかない、一刻も早く。
「(真、聞いてたか?)」
この作戦では、真も囮をやることになる。
「(大丈夫、それより京平が・・・)」
藤崎自体に脅威がないが万が一、あいつが持ってる包丁(真が戦闘中に出したものと思われる)で俺を攻撃しないとも限らない。俺も危険だった。
それでも、やるしかないだろ。
「いくぞ!」
俺の掛け声とともに、リリスが鞭を出し、真が手に炎を灯す、しかし二人はバラバラの方向にとび、藤崎は驚き、呆然とする、その正面から俺が飛び込む。
あと数センチ・・・その瞬間藤崎と目が合う。
憎悪、似た雰囲気だった。俺がいったい何をした。
いける!、もう手が触れそうだ・・・
刹那。
氷柱が俺の前に立ちふさがった。
「え?」
鋭利な面が俺に向いている。
激突すれば・・・・
勢いが強い・・・
もうだめだ・・
ぶつかる!・
「京平!」
後一瞬、というところで、真が俺を真後ろに引き戻していた。
俺と氷柱の間に入って、俺の正面から抱きつく形で助けられた。
しかし、セーレはまだ倒れてる。この氷柱はいったい誰が・・・?
「ふ、ふふっ、ははははははははっ、私にもとうとう・・・藤咲家の力が使えるようになったのね・・・」
藤咲家?いったい・・・
「藤咲・・?まさか、古代から続く霊力者の家系の・・」
気がついたのはリリス。なんだその古代から続くって、ありきたりだな、おい。
「そうよ、藤咲家はね、守護霊の力、烙印の効果を使うことができるのよ、つまり空間操作ができる。」
そういうと、俺、真、リリスの首元に氷柱を突きつける。俺たちも人質状態だ。
「これでもう、動けないわね。そしてこの女は要らないわねぇ。」
もう完全におかしくなってる。人殺しの目だ。やばい。
藤崎は迷いなく、藍那の首を切ろうとして・・・・
バシィン
藤崎が持っていた包丁が吹き飛んでいた。
氷柱によって。
「・・・なに!セーレ!邪魔しないで!」
セーレが半身を起こして何とか立ち上がろうとしている。
つらそうだが、表情は天使に戻っており、目からやさしさがこぼれている。
「・・・あなたには人でいて欲しい。どうか人が人を殺すようなことはしないでください。」
「どうして?また私はこうやって負けて、地に落とされ、底から這い上がろうとする。でもまた落とされるのよ?もういや!」
「それでも、私には、あなたが幸せになれるよう、勤めます。あなたの、人としての幸せのために。」
「どうして・・・」
「約束したではありませんか。遠い昔のあの日に。」
藤崎は黙って、思い出すような遠い目をして、膝から崩れ落ちた。俺たちの回りにあった氷柱も崩れ落ちた。
それから・・・・
「・・・だめよ、せっかく力が使えるんだもの、壊したい。」
途端、部屋全体が凍りつき、氷柱があちこちから飛び出した。
「すべてを、壊したいのぉぉぉぉ!」
「主!この空間を・・・すべて凍らせるつもりですか!?」
セーレも操作できないほど、この空間が凝結していく。
すべてが凍る。
「そんなこと・・・させねぇよ!」
もはや勢いだけで突っ込む。真とリリスは氷柱に阻まれている。俺は偶然藤崎までの道が開けていた。
今度こそ、藤崎を止めるために。
藤崎の顔面に俺の拳が入る。
人生で一番本気で殴っただろう。
女を殴ったのも初めてだ。
殴った衝撃で、藍那を離す。
俺が抱きとめる形なり、藤崎は倒れた。
氷結は止まった。
「主!」
セーレが空間操作の烙印を解き、藤崎に駆け寄る。
氷はなくなり、部屋が元に戻る。
終わった。
今度こそ。
「終わったのね?」
俺はまだ藍那を抱いていた。
「た、立てるか?」
これは・・・いったい俺にどうしろと?
もう少し・・このままで。なんていわれたら俺はほんと困るが・・・
「うん。あの程度でやられないよ、私は。後、カッコ良かったよ。最後のパンチ」
ああ、とか、うう、とか言ったような気がするが、まあいい。
「京平!」
ずっと後ろにいた真。なぜか気まずい。俺は悪くないぞ。
「帰ろうか。」
俺はごまかそうとする。別にごまかすほどのことでもないって?うるせぇ
セーレは、藤崎を治療していた。今はそっとしておいてやろう。
「藍那、今日は後三件あるわよ?」
リリスが安心顔で言っていた。
「え〜まだ働くの?」
藍那が悪い。もともとはな。
「京平〜、早く帰ろうよ〜」
すっかり子供になった真、ああ、俺もつかれたよ。
「ところでここどこなんだ?」
部屋から出てオフィスビルみたいなところから出た俺が言った。
結局、家に帰るまでにもう1時間歩くはめになった。
一応、学校編完結です。
次回は、少し番外編に入ります。(予定)
もしよろしければこれからも読んでくださいね。




