第十一話 「天使の怒り」
「いったい何が目的なのですか?」
セーレは子供の真を降ろして、業者の格好の女とその守護霊に言った。
「そうよ、藍那、この哀れな被害者にもわかるように説明してやりなさい。もともとあんたが悪いんだから。」
女の守護霊、リリスが言った。哀れって・・
「わかったわかった、」
業者女改め藍那がだるそうに返事をした。
ところで、
「どうして真はセーレにつれて来てもらったんだ?」
今は俺の後ろに隠れている。セーレの敵意は藍那たちに向いているため、真は戦闘に参加できない。
「頼んだらつれてきてくれた。」
単純なものだ。まぁ子供状態では脅威ではないか。
「いい?説明するけど・・・」
藍那が説明を始めようとする。
さっさとはじめてくれ、というかセーレはちゃんと聞いてるんだろうな。いまにも襲い掛かりそうだが・・・
「私はね、インターネットで守護霊に関する情報を集めてるの。関係者専用サイトでね。」
まぁ、ネット上なら知らない人が見るとゲームなんかの話だと思うだろうな。知ってる人には伝わるってことか。
「そこでブログを作ってるんだけど、アクセス数が少なかったのね。」
うん。よくあることだ。
「で、なんかみんなが食いつくように話があるかな〜って考えたら・・・」
「人から霊力を吸い取れる機械があるってか?」
なんということを・・・ただの釣りじゃないか。
「そういうこと。でもリリスがさ、こういうことがあるかもしれないから、注文を受けた分は謝罪しに行けって。」
ガセ情報に加えて通販までやってたのか。なんていう奴だよ。まったく・・・
「ね、言ったとうりでしょ?悪用されるって」
リリスが説教するかのように言った。
だいたいは理解した。つまり藍那とかいうこの女が流したガセ情報に藤崎が引っかかり、その巻き添えとして俺が誘拐され拘束されたわけだ。
ちなみに説明中のセーレは國酔にしたように藤崎を回復させていた。
「事情はどうであれ、守護霊で主を傷つけるとは論外だ。」
セーレの怒りは収まらない。
「いい?アタシが時間を稼ぐからその間に逃げなさい。」
リリスがそう言うと、セーレに向き合い、どこからか鞭を取り出した。彼女に鞭はぴったりであった。
「時間を稼ぐ・・・?そうですか。」
セーレは口調は落ち着いているものの、内心から滲み出す怒りが逆に恐ろしさを助長していた。
「私は守護霊相手に容赦はしませんよ?」
セーレはそういうと、彼の腕から閃光が走った。一直線の光となり、リリスを狙うが、彼女は身を翻しそれを避ける、――そのまま距離を縮め、鞭による打撃を放つ。
そしてセーレは―――――
「ほら、解説なんかしてないで早く逃げるよ!」
腕を引かれ部屋の出口へと向かう。
そして俺はドアノブに手を掛けひねる。
ドアを開けて外へ出ようとするが・・・
「なに!?」
思わずノーマルなリアクションをしてしまうほど驚いた。
ドアの先は真っ黒。
真っ暗ではなく真っ黒。
黒い壁のようなもので出口がふさがれている。
「・・・空間操作ね。」
真がそう小声で言った。
「空間操作?あの天使男の力は治療じゃないの?」
藍那が真に聞く。というか見えてたのか。
「そう、セーレは治療能力もあるけどそれはただの特性、この空間操作は烙印による物よ。」
烙印・・・?
「京平の説明は後!それより今はどうすればここから出られるのか・・」
後って・・
「ここからは出られないよ。オチビさん。」
セーレが静かに言った。
「リリス!」
見るとリリスが腹を押さえてうずくまっている。
「だ、大丈夫・・・」
苦しそうにそういうと、藍那の後ろに戻ってきた。
「・・・ふぅん。次は私ってわけね。」
真が大人になっている。
とうとう敵意を向けたか。
「ははっ貴様ごときで何ができる?國酔と相打ちだっただろうに。」
確かに真は國酔に勝てなかったし、その國酔はリリスに軽くやられ、リリスは今セーレに負けたところだった。
勝機はあるのか?
「京平、つながりが強くなればなるほど守護霊は強くなれる。私を信じろ。」
そう、俺は真を信じるしかない。
「では、いくぞ?」
その刹那、セーレの雰囲気が劇的に変わった。
今までは静かに怒っている様子であったが、今は全身から冷機が滲み出し、床を烙印が張り巡らされている。窓は真っ黒。部屋も薄暗くなり、セーレは青白くひかっている。
セーレの前髪が逆立ち、温かみがあった瞳は真っ青になった。
一言で言うなら、悪魔。
天使の男が悪の魔人に変貌を遂げていた。主のために。
次の瞬間、セーレの周りの空気が凝結し、氷柱が鋭くとがった。そのまま幾本もの氷柱が真をめがけ降り注ぐ。真は軽く氷柱に飛び乗りやりすごす。
空気中の水分を凍らせ敵を攻撃する。まさに空間操作のなせる業だった。
真は、手に灯した炎で氷柱を打ち消しつつ、間合いを狭める。
そのまま体術でセーレに攻撃するが、彼も真の攻撃をすべて受け止め、また反撃を入れる。
真のガードをくずし、懐に打撃が入る。國酔との戦闘で受けた傷は消えていたが(おそらく戦闘が始まる前、つまりここにくる前にセーレに治してもらったのだと思う)
体力、霊力は消耗しているので一撃でもかなりきつそうだ。
「くそっ、このままじゃ・・・」
負ける。
だめだ。
信じろ。
勝てる。
絶対に。
信じろ。
真が勝つことを・・・
「リリス・・・?」
隅でうずくまっていたりリスと藍那だが、急にリリスが立ち上がった。
「アタシはまだ戦えるよ、それよりあいつらがいないんだが・・・」
あいつら。というと・・・
「榎本・・・」
逃げたか。まあこのままいてもあいつにプラスはないか。
「リリス、大丈夫なの?」
藍那が心配そうに聞く。
「アタシをなめるんじゃないよ!」
そういうと、鞭を構え、氷柱の雨をかいくぐり、真と体術戦をしているセーレの目の前に行く。
リリスが構えた鞭に烙印が張り巡らされ、その鞭を思いっきり振る。
セーレは腕に氷柱を発生させ、盾のようにする。が、鞭が当たった瞬間烙印がはじけ、鞭が爆発、セーレの氷の盾がはじけとび、思わずひるむ。
「今だ、真!」
俺が叫ぶまもなく、真が手に灯した炎から包丁を構え、ひるんだ一瞬を突く。
「くっ!」
銀が一閃。
セーレを切り裂いていた。
「私たちの勝ちのようね。」
真が勝ち誇って言う。
セーレは言葉もなく崩れ落ちた。
腹部から血液のように霊力が流れている。
ピクリとも動かない。
勝った・・のか。
良かった。
安堵。
それもつかの間であった・・・・
「動くな!動いたらこいつの血の海ができるわよ?」
叫んだのは藤崎。
その藤崎は藍那を羽交い絞めにして首元に包丁を構えている。
「リリス・・た、助けて・・・」
藍那がそうささやいた。
意外と長い学校編。
というかもう学校関係ないですね(汗




