4話 引きこもりと友達と過去④
「ーープルルルル、プルルルル」
ん……? なんだ、こんな朝早くに。
俺はベットから体を起こし、目をこすって携帯を開いた。
寝起きは結構良い方だと自負している。
だって、少なくとも俺の知り合いで電話が鳴っただけで起きるやつなんて一人もいないんだからな。
見ると、昨日3年ぶりの再会を果たした冬咲から電話が来ていた。
「おっと。えっ、まじですか。冬咲さんまじですか」
俺はここ数年ろくに女子と会話をしていない。というか関わっていない。
昨日彼女と普通に話せたのは奇跡的だといっても間違いはないだろう。
なのに、それだというのに……冬咲は普通に電話をかけてきたのだ。女子への耐性がない俺が、マトモに電話で話せるとは到底思えない。
つまりこれは、見て見ぬ振りが一番ということだ。
電話に出たところで、変にキョドッて、もたつかれてもイライラするだろうし、なにより何を話せばいいかが全くわからない。
俺からすれば女子なんて、レベル1の冒険者がいきなりボスに倒すようなものなのだ。まあ簡単にまとめると、恐怖の対象でしかないってことだ。
やっぱ出ない方がいいな。
俺は立ち上がってカロリーメアトを取ろうと目を伸ばした。その瞬間ーー
……ドスン!!
「いってぇぇぇええええ!!!!」
床に落ちていたイヤホンに引っかかって転んだのだ。
背中と肘を強打。これ絶対アオジになるやつだ!!!いたい!とりあえず痛い!!
「……おはよう! 朝柳くん。朝から痛い痛いって、どうしたの?」
「えっ……? 幻聴? 寝ぼけてるのか?俺」
幻聴……? でもそんなことは絶対にないはずだ。
ーーまさか
俺は音の発信源である携帯を見た。
……最悪だ。画面には"通話中 冬咲雪"と表示されてあるのだ。
どうやら転んだ拍子に通話ボタンを押してしまったらしい。
「幻聴? 何言ってるのー? 大丈夫? 私は冬咲雪だよ」
「あ、あぁ。今やっと状況を理解した。
俺は、立ち上がってカロリーメアトを取ろうとした刹那イヤホンに引っかかって転んだ上、その拍子に冬咲との通話ボタンを押してしまった……ということだ。
あと、改めて、おはよう。朝一番からの電話とか元気でなによりですほんと」
「最後のは嫌味に聞こえるけど、まぁスルーしてあげるね。おはよう。
朝から電話して悪かったわね。昨日、様子がおかしかったから私のせいなんじゃないかって心配になって電話しただけなのに。
迷惑だったなら、ごめんね」
「あぁ、えっと、そういうわけじゃなくてだな。その……なんていうか、まぁ、すまない。
心配してもらった身なのに、酷いことを言ってしまった。
迷惑だったとかじゃないんだ……本当に。
ただ、どうやって接すればいいか、わからなくて困っただけだ」
そう、完全に俺の経験値不足なのだ。
だから冬咲に謝られることはないんだけどなぁ。なんでお前はいつもいつも謝ってばっかなんだよ、謝られてばっかなのもモヤモヤするんだよ。
「そっ、か。そんなに私のことなんて考えなくていいんだよ。私が勝手に電話してるんだから」
勝手に……って。電話するなって言っている訳じゃないんだけどな。
「それにほら、さっき普通に喋れてたじゃん!
変に気を遣おうをしてるから喋れなくなっちゃうんだよ。
素のままの君でいいんだよ。それがいいの。
私ね思い出したくないのかもしれないけど、昔……みたいに仲良くしたいだけなの……月夜くん」
そう言った彼女の声は緊張感があって、きっと頬を染めて恥ずかしがっているのだろう、と思った。
俺は冬咲のことを思い出したくないんじゃない。だから、彼女が俺にそうやって言うのは間違っている。
「俺だって、できるものなら昔みたいに仲良くしたいと思ってる。だけど俺たちには何年も会わなかった分の大きな溝があるんだ。
だからーー」
俺はぎゅっと拳を握り目を閉じた。
投稿が遅くなりました。
この小説は不定期更新なので、ご了承ください。
……ということで! 次回も乞うご期待!(最初から期待してねーよ)