1話 引きこもりと友達と過去①
プロローグに続き、ご覧になってくださったこと、感謝致します。
「……空が青い。雲が白い。太陽が紅い」
頭が痛くなりそうなほどの晴天を見上げ、今日は洗濯日和だなぁと顔を綻ばせた……なんてことはなく、俺はふぅーっとため息を吐いた。
え? なんで頭が痛くなりそうなのかって?
愚問だな。
滅多に外に出ず家にいるときは絶対にカーテンを閉めきり外に出たいときは必ず夜に出るようにしている俺からすれば、明るいってだけで結構なダメージなのに、それプラスでサンサン太陽のいい天気ときたらもう溶けそうなのだ。
いわゆる効果抜群ってやつ。
ここで読者のみんなは、じゃあなんでわざわざ家から出てきたのか、と思っただろう。
俺も思う。
ただ不意に、脚が動いたのだ。
外に出ようなんて思ってなかったのに。
きっと俺の中の悪魔が、たまには外出ろやクソ引きこもり野郎! みたいなノリで俺の脚を勝手に外まで動かしたんじゃないかと思っている。
許すまじ、第二の俺。
とはいえ折角こんな眩しい思いをして出てきたのに何もしないで家に戻るのは少し癪ってものだ。そこら辺をぶらぶらするか。
名付けて、ぶらっと俺旅。
よしならば、と俺はサングラスを懐からシュパッと取り出し装着した。
変装完了。これで顔見知りに会ってもバレることはないだろう。
ん? なに、友達?
いるわけないだろ、そんなの。人間付き合いがどれだけ面倒くさく無駄なものだと思ってるんだ。そんなものを好き好んでやるなんて世の人間様はすごいと思うよ、本当。
ーーいや、いたな。友達。一人だけ。
まあそれは置いておいて、いつものことだが我ながら自分の準備の良さには鼻が高い。
「なんて、な。
こんなつもりじゃ……なかったのに」
俺は自分の拳をぎゅっと握りしめた。
突然こみ上げてきて溢れて出そうな自分でもわからない"なにか"を隠すように。
「なんだよ、これ」
一人そう呟いた。なんだか虚しくなった。
「……空は、綺麗だ。いつ見ても。何度見ても」
俺は外しかけたサングラスをかけ直した。
冷たい風が吹きつけ、太陽が雲に隠れた。
「いいんだ、これで。後悔はないはずだから」
*****
この辺をまわると言ったものの、まあ想像以上になにもない。
小さなコンビニと今にも消えそうな街灯がポツポツとあるだけ。
仕方ないから、2kmくらい歩いた先にある河川敷へ行くことにした。
その前に、普段歩かない俺からすれば2kmはかなり長い距離だろうと考え、コンビニに寄って水やらおにぎりやらを買い込んだ。
途中で水を飲んで休憩して、おにぎりを食べたりしながら1時間くらいかけてやっと到着した。
「ここは影だし暖かいしいいところだなー! 人もいないし。
もういっそ移住したいくらいだ!」
その河川敷は近くに大きなマンションが建っていて、いい感じにマンションの影ができていた。
そのうえマンションで冷たい風が防がれ、いい感じの暖かい温度に保たれているのだ。
移住するにはWi-Fiないしエアコンないしトイレないし不便でしかないんだけどね。
まぁ、しばらくの間くつろぐとするか。
俺は疲労困憊してクタクタな身体を、ユラユラと揺れる柔らかそうな草むらに委ね、大の字に寝転がって目を閉じた。
たった2km歩いただけだけど。
あと、草むら意外とツンツンしてて痛てーよ……。
登場人物紹介❶
朝柳 月夜
profile
・8月14日生まれ ・獅子座 ・A型
・17歳 ・身長179cm ・学力S ・運動能力S
・好きな食べ物は肉じゃが ・嫌いな食べ物はネギ
・趣味は読書 ・特技は不明 ・面倒くさがり
この物語の主人公。
引きこもりで友達がほとんどいない。
現在は春休み中だが、平日も家にこもっていることが多い。コンビニが好き。聴力に優れている。かなりの面倒くさがりで、普段は自分の能力の半分も使っていない。
何気ない気遣いが出来、要領がいい。
次話も乞うご期待!