第175話 バナナワニ園!
うあ、と声を漏らしてしまう。
ドーム状の温室には青空が透けており、真夏の太陽光をたっぷり届けてくれる。となると温室らしく夏の暑さはマックスを更に超えてしまう。
ふむ、これは夏場を避けたほうが良かったか、などと辿り着いてから後悔する事になるとはね。
「あっつーーい!」
なのにどうしてマリーは笑顔なのかな。
強い日差しのなか、ぱたぱたと顔をあおいでいるけれど太陽に負けないくらい輝かしい。それもそのはず、バナナワニ園という夢にまで見た――あ、夢の世界でも遊んでいるから夢は見ないか――ともかく、半妖精エルフ族である彼女の熱望していた施設なのだ。
周囲には親子連れやカップルの客が多い。いずれも半袖の軽装であり、僕らと同じように暑い暑いと口にし、玉のような汗をかいている。
うーん、いかにもお盆休みの余暇を過ごしている感じだねぇ。
もちろん、ただ暑いだけの施設ではない。
熱帯風のヤシに似た植物はあちこちに生え、くすんだ茶色の岩で飾られているのもアトラクション感があり面白い。漂う水辺の香りといい、どこか南国の絵本を読んでいる気さえする。
「でもどこかゆるいよね。何でかな、このトボけたキャラクターのせいかな」
などと首元をゆるめながら、入口のマスコット看板をつつく。
ぽけっとした顔、ゆるい洋服を着て二足歩行をするワニの様子はどこかユーモアだ。しかしエルフさんにとっては突っ込みどころだったらしく、露な肩を僕の胸へ押しつけてくる。
「まっ、あなたがそれを言うだなんて! うちで一番のゆるキャラというのに。カズヒホという名前がすべてを物語っているわ」
あれぇ、僕は名前から既にゆるかったのか。ただ、最近ではマリーのほうがゆるい気もするんだけれど。
ともかく、そのような南国風の場所なので、汗をかくのもさほど気にならないようだ。むしろ実際に肌で感じられるので臨場感も増すらしい。
なるほどと思うのは、どこか昭和の懐かしさを残していることかな。大人も楽しめる場所と聞くのは、そんな空気のおかげで童心へ戻れるのかもしれない。
味がある、という表現が近しいか。ただ綺麗な場所であるよりも、昭和からある施設らしい空気を残すことで歴史を匂わせてくれる。
などと園内を見回していると、手をぎゅっと握られた。見れば待ちきれなさそうな表情をする少女の瞳が待っている。
「はやく、はやく、ワニを見ましょう!」
「ふふ、そうしようか。向こうのほうにいるのかな、エルフさんを狙う恐ろしいワニは」
空いているほうの手でガブガブすると、くすぐったそうに首をすくめ、白い歯を見せてくれる。妖精のようだと常々思うけれど、やはり笑顔のときが一番可愛いな。
「あら怖い。でも寝ぼすけな人も大好物かもしれないわ。だって簡単に食べれるでしょう?」
おや、そう言われてみると反論できないな。
手を引かれながら振り向くと、ウリドラ、そしてシャーリーも周囲を物珍しげに眺めつつ歩いてくる。どんな施設なのかまだ分かっていないようだけど……実際、目にしたほうが早いかな。
そういうわけで手を引かれるまま歩いてゆく事にする。
繋いだ手からは少女の高揚感が伝わってきて、くすぐったいような、頬が緩むような思いをさせられる。
そして茶色い金網の向こう、見下ろす位置に主役であるワニが待っていた。
川原の岩に近しい色合い、ごつごつとした大きな鱗をした体表、そして口を半開きにさせ寝入っている様子へ彼女の薄紫色の瞳は輝いた。
うん? 手招きをして、耳元へ背伸びしてくるのは何故かな。
耳はすっぽりと手で覆われ、ぽしょりと「魔物!」と囁かれれば、くすぐったいを通り越してしまうんだよ?
どうやら本日も、エルフさんは僕の頬を崩壊させるつもりらしい。完全に崩壊してしまう前に、彼女の間違いを正しておかなければ。
「じゃないからね。これは熱帯に生息する動物だよ」
「あら、そう言われれば。魔物ならこれだけ近づいたら襲って来るわね……」
少し戸惑ったかもしれない。日差しを受け、でろんと寝転がる姿をしている姿に。日向ぼっこをしているらしく、それぞれ好きな岩場や水辺へと陣取っているので「すやぁ」という擬音さえ良く似合う。
棘だらけの背中といい、強靭そうな大顎といい、強そうなことこの上ない。しかし予想に反してピクリとも動かないものだから、まるで精巧な石像を見ている気にもなる。
少女は金網へとしゃがみこみ、ワンピースから白い両膝を覗かせた。
「知らなかったわ、リザードマンから『マン』を外すとこうなるのね」
「ふむ、言われてみると似ておるなぁ。あやつらが二足歩行をやめたら、こういう姿になるやもしれぬ」
覗き込むマリーの上から、ウリドラは顎を頭へ乗せてくる。
しかしまあ、びっくりするほど動かないね。なかには口をぱかっと開けたまま眠っている者もおり、その呑気な姿には少女もクスリと笑ってしまう。
「ワニは夜行性なんだって。だから昼間はああして日向ぼっこをして過ごすみたいだよ」
そう教えると「ほう」と呟いて黒い瞳をこちらへ向けてくる。
「ますます似ておるな。わしのところでも働いておるが、最近は侵入者も来ないし、わしも日本で遊んでいるせいで身の回りの世話も少ない。故にあのようにグデっと寝てばかりじゃ」
「気の良いリザードマンたちだったね。ただ、僕らをウリドラの寝床へ案内するのはどうかなと思ったけど」
「うむ、知能も低いので実際のところ大して役立たぬ。だが単純作業ならば何かと便利でのう……ふむ、そうじゃ」
何かに気づいたのか、ウリドラは傍らのシャーリーへと顔を向ける。
見知らぬ生物というものに興味津々なのか、金網のあいだから青空色の瞳をじっと注いでいた。
「シャーリーよ、おぬしのところでリザードマンを働かせても良いぞ。第二階層広間も拡張の時期じゃろう」
その言葉に、僕とマリーは目をぱちりと見開いてしまう。
「拡張」という耳慣れない単語、そして彼女の管理する広間は優に東京ドーム数個分の広さがあったのに、まだ広がるのかという驚きによるものだ。
そしてシャーリーは真実を裏付けるよう唇を嬉しげな形へ変える。
「何を驚いておる。第三階層であれだけ多くの魔物を図鑑に載せたじゃろう。となると魂を循環させるための場を広げねばならぬのは道理じゃ」
へえ、そういうものなんだ。
てくてく園内を歩きながら、その説明を受けることにする。水槽越しに見る小さなワニは、どこかニヒルな表情をしており面白い。
エルフとワニは見つめあい、ぷくんと気泡が口から漏れた。
「拡張するということは管理も大変になるのかな。できればシャーリーとは長く一緒に遊びたいんだけどね」
そう言うと、にこーっと嬉しそうな顔を向けられる。彼女の笑みは純粋で、言葉は話せずともたくさんの感情を伝えてくれる。
不思議なことに、言葉なんて必要無いんじゃないか、と思えるほどだ。
「じゃが、高い知性をした魔物も多くおる。あの魔装カルティナもそうじゃが、リザードマンも管理に加われば彼女の負担は減るじゃろう」
「へえ、カルティナは魔物扱いになるのか。といっても魔物図鑑に載っているんだから、おかしくは無いんだね」
そういう事じゃ、と黒曜石に似た瞳は細められる。
ふむ、となると第二階層広間はさらに賑やかになるのかな。撒いたカボチャの種はまだ芽を出さないけれど、もし野菜を育てられるなら管理を任せて良いかもしれない。
などと考えていたのだが、次に待っている金網を覗きこむと「おっ!」と声を漏らしてしまう。体長4メートルはありそうなものが、水辺へぷかっと浮いていたのだ。
「うわあ! おっきい! ねえねえ一廣、あれなら丸呑みをされそうね」
そう言いながら、エルフさんは僕の肩を爪でひっかいてくる。くすぐったいけれど、捕食されようとしているなら話は別だ。
「え、どうして僕を丸呑みさせたいのかな? いやしかし、車みたいに大きいねぇ」
なぜか大きな生物というのは、それだけで見入ってしまう。
長い時を生きただろう存在感は、ゆったりと過ごしていても僕らにまで伝わってくる。
単体で檻にいるということは、気性が荒いのかもしれない。考えてみれば彼らは肉食なので、同族同士の争いというのもあるだろう。
しかし、ぷかりと浮いた目元から膜が外れ、爬虫類を思わせる目玉を向けてくると様子は変わる。
ざぶざぶとこちらへ向けてゆっくり泳ぎ、そして金網へ寄って来たのだ。
立派な前足を縁へ乗せ、ぐいと力任せに顔を押し当ててくる。ごりごりと金網と鱗はこすれあい、その迫力へ周囲の観光客らも声を上げた。
夜行性ということで寝静まったようなワニ園だったけれど、いざ動き出せば肉食としての迫力を生み出す。
「ふ、ふ、立派な雌じゃなあ。そうか、ここでたくさんの子を産んだか」
しかしウリドラだけは怖気づかず、ニッと頼もしい笑みを浮かべていた。リザードマンと友である竜人は、たとえ大型種イリエワニであろうと触れ合えるらしい。
しばらく無言で見つめあうと、満足したのかワニは瞳を閉じ、ゆっくりと水面へと沈んでゆく。
何事もなかったよう園内は静けさを取り戻し、そしてウリドラは呟いた。
「檻に囲まれているのは嫌かと思うたが、本人は気にしておらぬとはな。のん気にも豊かな時を満喫しておるようじゃ。飯がすこぶる美味い、とな」
などという言葉に、僕とマリーは瞳を瞬かせた。
はあ、まさかワニとも意思疎通をできるとは思いもしなかったな。とはいえ魔導竜ともなると大抵のことは出来そうだ。
「そういえば、あのカルティナをパンチで沈めたんだって? 見たかったよ、そのときの様子を」
「ふふん、見事な戦いじゃったぞ。わしの得意技、幻の左こそが戦いの全てであった。日本の格闘術にも興味を持ったし、興味があればおぬしにも教えてやろう」
え、結構ですよ。どうしてファンタジー世界でボクシングをしないといけないのか分からないし。
あからさまに嫌そうな顔をしたのだが、しかしウリドラは気にもしない。瞳を輝かせ、しゅっしゅっと右を閃かせてしまう。
ただ、そのタンクトップの服装でジャブをすると……周囲のお父さんもあなたの胸を見つめてしまいますよ。
「言うておくが、わしの教えは厳しいぞ。しかしそれに耐えれば世界を狙うことも可能じゃ」
「なら遠慮しておきます。ボクシングとか汗臭そうですし」
どすんと腹にパンチが減り込んだ。
なるほどね、こうしてカルティナも「げふぅ!」と悲鳴を上げたわけだ。そりゃあ無理ゲーだよ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
温室に入り、すぐに僕は足を止める
ガラス越しに降りかかる日差し、そして先ほどのワニ園よりずっと高い湿度のせいで「むわっ」とした空気に包まれたせいだ。
「うあ、うちのお風呂みたいね!」
そう言いながら、前を歩く少女は振り返る。
言葉とは裏腹に表情は明るく、周囲を飾るハイビスカスよりもその薄紫色の瞳は鮮やかだ。同行しているウリドラも、頭上から振り落ちてくるような植物たちへ瞳を輝かす。
「ふうむ、これは熱帯の植物か。ぐねぐねと変わった形をしておるが……まさか植物を集めて商売をするとはのう」
湿度は高く、彼女らの首筋には汗がわずかに浮いている。しかし物珍しい光景に好奇心が勝るのか、つんつん観葉植物をつついており気にもしていない。
そしてシャーリーはというと青空色の瞳をきらきらに輝かせ、そして口元を半開きにさせている。小刻みに揺れているのはまるで踊っているようで、色鮮やかな花たち、そして所狭しと並んだ珍しい植物たちに魅了されているようだ。
「シャーリー、興味があるなら広間へ植物園を作ってみたらどうかな? 温室だってウリドラがいるなら何とかなるかもしれないよ?」
そう伝えると、こらえきれないのか足踏みをして喜びを伝えてくる。
これほどはしゃぐシャーリーは珍しい。そういえばと思い出すのは、ずっと昔、古代のころの彼女のことだ。森や動物を守り続けたシャーリーにとって、見たこともない植物というのはたまらないのだろう。
「まあ、せっかく来たんだし、好きなだけ眺めてゆくと良いよ。ただ、ときどき触ったほうが面白いものもあって――ほら、たとえばこの植物とかね」
彼女たちの瞳から見つめられるのは、シダっぽい植物だ。その前にしゃがみこみ、触ってごらんと少女らへ示す。
そうっと指を伸ばし、エルフがその植物へ触れると……。
「わっ! 閉じちゃったわ! なにかしら、これ!」
「むうーー、変わった植物じゃのう。触った端から葉を閉じるとは」
同じように僕も触れると、指先へと勝手に葉先は触れてくる。ほんの少しくすぐったく、そして子供のころへ戻ったように懐かしい。
きらきら輝く彼女らの瞳へ、近くの名札を指差した。
「これはおじぎ草だね。動物から食べられないよう葉を縮めてしまうという通説だよ」
ただの通説ではあるけども、世界中に分布しているのを見ると結果的に成功をしているように思えるかな。
「へええ、頭の良い植物ねえ! これなら確かに萎れて見えるし、食べる気にはならなそう」
そうそう、この「初めて見るもの」というのは、好奇心を強く刺激するものだね。
熱帯にしか見られない植物は僕にとっても楽しいもので、5000種とも言われる多様さにはエルフや竜、それに幽霊であろうと子供のような瞳をする。
例えばそう、マリーの瞳の色に似た花、スイレンもそうだ。
ぱかりと開いた花弁には、先端へと向けて紫色の色素を強めてゆく。ピンと広げた様子といい、つい顔を寄せて眺めてしまう。すると清楚な香りというべきか、スイレンの匂いを楽しめる。
池に浮いた植物というのは他にもあり、子供を乗せても大丈夫なオオオニバスなどは、先ほどのスイレンの女王とも呼ばれている。
当初は地味だと感じていたバナナワニ園だけれど、気がつけば次から次へと新しいものを伝えてくれる場所へと変わっていたようだ。
それが何やら不思議で、つい呟いてしまった。
「これでも楽しませる工夫をしっかりしているんだなぁ、地味なのに」
「やっと分かったのかしら。日本の観光地は外観とのギャップを作っていることに。だからあなたは……」
そう言いかけた少女の唇は止まる。
植物園の只中にあるアクリル板の向こうには、大きくて丸い生物が漂っていたせいだ。そのアマゾンの人魚と呼ばれる生物は、水中をゆったりと動いてビー玉みたいな瞳を向けてきた。
日本ではここでしか見ることの出来ない、アマゾンマナティだ。
「わあ、あー……!」
最初おしりを向けていた彼は、幻想世界のエルフに気づき、もごんと気泡を浮かせて一回転をする。それから短いひれを動かし、豚のように膨らんだ鼻を向けてきた。
なにやら可笑しな構図だね、マナティとエルフが出会うというのは。
目の覚めるような青色、そしてこちら側は新緑に包まれた空間。だけども何故か、僕にとってその光景はファンタジーへ通じるものがあった。
ぺたりと白く華奢な手をつけ、そして彼も鼻を押し付ける。
それはバナナワニ園の見せてくれた、とても印象的な光景として僕の胸へと刻まれた。どうやらこれが旅の思い出というものらしい。
うん、綺麗なものだね、不思議な者同士の出会いというのは。
まっ黄色をしたソフトクリームというのは少しだけ珍しい。
それは園内を象徴するバナナをたっぷり使用しているもので、初めて目にするシャーリーも「これはなあに?」と左右へ瞳を向けている。
屋上のテラスはやはり快晴に包まれており、長い坂を上って来ただけあり眺めは素晴らしいの一言だ。
左右には山が並び、そして正面にはコバルトブルーの海。夏らしい鮮やかなものであり、さらには遠く離れた伊豆大島まで望むことができる。
柵へもたれかかり、そのような景色のなか「ぱくんっ」と彼女らは召し上がる。
空気を含んだ柔らかなアイスはあっという間に舌で溶け、甘みを残して喉を抜ける。温室で暖められた身体にはほどよい冷たさ、そしてバナナの持つ南国風な甘み。となると身体は「癒してくれる存在」として認識する。
「んんっ、冷たくて美味しいーーっ!」
「くふぅー、甘さの中にバナナの風味が……!」
これは身体に良いものだ、と判断されたなら後はもう美味しく食べるだけだろう。
周囲にホテルの立ち並ぶレジャー地らしい景色を楽しみながら、トロピカルな味わいに舌鼓を打つ。そのような彼女らの様子こそ、僕を楽しませているのだけれど。
んーーっとエルフさんは伸びをして、気持ちの良さそうな息を吐いた。
「海は綺麗だし緑も多いし、やっぱり伊豆は素敵ねぇ」
「ずるいのう、日本は味を知り尽くしておる。美味いものを食べると『来て良かった』とつくづく思えてしまうではないか」
そう言いつつも、瞳を細めているのはすっかりと魅了されている様子だ。
頷いて同意するシャーリーも、温室のことを忘れられないのか、はたまた初めてのアイスのせいか夢を見ているようでもある。ふわふわと風に揺れる明るい金髪を気にすることなく、味覚と景色をただ楽しむ。
そんな様子を見て、僕としても旅の楽しみかたを教えられた思いだ。
会社のことなどすっかり忘れ、そして彼女らと同じように海を眺めてみれば、初めて見る景色というものに不思議と胸はわくわくとする。
吹き抜けてくる風にはどこか潮の香りが混じり、それがまた「旅に来たんだなぁ」という思いを強める。普段過ごしている都内とはまるで違う場所で、こうして楽しんでいるのは不思議な思いだ。
なんとなく、気がつかなかった肩の力さえ抜けてゆく気さえする。
そして、のしりと横から抱きついてくる温かいものに気づく。
少女は華奢で柔らかく、そのまま背へ腕を回せば肩甲骨の段差に指は触れる。
「ずっと楽しみにしていたけれど、やっぱり来て良かったわ、連れて来てくれてありがとう一廣さん」
にこりという笑みは、普段より少しだけ緩んだもの。どうやら僕と同じように肩の力をすっかり抜いていたらしい。
ただ、こちらのほうこそ楽しませてもらっているかな。そう伝えるのも気恥ずかしく、僕は異なることを口にした。
「さて、この後はホテルに向かうけれど、夕陽の海を眺めながら露天風呂につかってみたいと思うかな?」
ぱちんっと瞳を開いたのは、彼女だけではない。
海というのは色彩豊かなせいで綺麗だと感じるものだ。これだけ澄んだ青空ならば、夕日に染まる光景はさぞ美しいだろう。
「わ、わ、素敵ね! 身体が勝手にうきうきしちゃうわ!」
たしたし足踏みをしてくる様子の可愛らしさときたら。これは是非とも楽しませてあげなければ、と僕は変な決意をしてしまう。
ホテルを楽しみにする彼女らの、きゃいきゃい騒がしい声と共に僕らはテラスを後にした。




