表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

形状記憶チョコ

作者: 瀬川潮

 百貨店のバレンタイン特設売場にて、変なものを見つけた。

「ちょっと、あんたそんな変なチョコが好みなの?」

 しげしげ見てると、一緒に来た親友にとがめられた。

「いや、そうじゃないけど」

 言い訳する。

 だってそのチョコ、小さな人形がヤシの樹にしがみついて登ってるポーズをしているのだから。周りにあるチョコはハート型とか可愛らしいものばかりなのに。

「ふうん、南国のチョコ、ね。キモカワにしてももうちょっとねえ」

 親友は説明書きに目を通して興味なさそうに離れた。

 ほっ。

 変なのが好みというレッテルは貼られず済んだみたい。

「あ、それよりこっち」

 離れた先で、今度は別のチョコを指差して私を呼ぶ。

 見ると、「愛に包まれるショコラ」。

「チョコにスポーツドリンクの成分を加えることで、貴女の想いのこもったチョコが食べた人の体により効果的に吸収され、愛情も全身に行き渡ります、だって」

 そんなわけないじゃん、と笑ってる。

「ねえ、これは?」

 私はもう一つ気になったチョコを指さす。どれどれ、と親友。

「……ええと、『磁力の勝利だ、マグネセット』?」

 ハートのチョコとハートのネックレスのセットで、チョコには鉄分配合。ネックレスのハートトップは磁石とか。

「彼に鉄チョコ食べさせて貴女のハートネックレスに引かれてピッタリ……って、アホか~い!」

 あああ、親友がついに世の中舐めたチョコの数々に爆発しちゃった。

「もうちょっと現実的なのはないのか。現実的なのはっ!」

 だしだしだし。

 頼むから売り場の什器を叩くのはやめてほしい。

 その時、あるチョコに目がいった。

「ねえ、これ」

「ん? ああ、これはいいね」

 親友も気に入ってくれた。

 それは「形状記憶チョコ」。

 元のチョコにこの小さなチョコを混ぜるだけで、一番最後に混ぜたチョコの形に戻るのだという。

 つまり、形の気に入った小さなチョコを手軽に大きくできるのだ。

「これなら湯煎の苦手なアンタも安心だわ」

「ちょっと、テンパリングってきれいにしようと思ったら気を遣うのよ! それに家庭課はあなたのほうが……」

「はいはい、わかったわかった」

 というわけで、そろってお買い上げ。そこ、かわいそうな目で私たちを見ないように。

「よし、私はこの本格的なトリュフチョコに混ぜておっきなトリュフチョコ作っちゃおっと」

 ……何気に形状詐欺しようとしてるし。

「あんたは?」

 ぎくっ。

「ん? まあいいけど、バレンタインの前に一緒に作ろうね」

 購入予定のチョコを隠した私を見て怪訝そうにしたけど、うきうき気分らしくて持ち物検査されずに済んだ。

 ほっ。


 で、一緒に作ろうと約束した日。

「……まさかあんた、全部盛りするとはね」

「まさかはこっちよぅ。せっかく作ったの、つまみ食いして試食するしっ!」

 親友はまるでヤシの木にしがみついているように私に抱きついて呆れていた。

 もちろん、私の胸にはマグネセットのネックレスが下がっている。

 片思いの彼にヤシの木人形チョコの人形部分だけあげようとしたのにぃ〜。



   おしまい

 ふらっと、瀨川です。


 たまには新作を。

 というか、なんかこの季節には酷い目に遭うお話を作らないとなー、な感じ?

 なんだそりゃ、な出来なのはご愛敬ということで。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ