理由
この作品は全年齢向けなので、表現は、おさえます。
5回目ぐらいのデートの帰りの時に聞かれる。
「ねぇ、前々から疑問だったんだけど、私のどこを好きになったの?」
「どこって、話してて、楽しいところだよ。」
「それだけで好きになる?
こんな豚みたいな顔してる、凄いブスなのに。」
「いや、そんなことは。」
ナツミさんがどんな答えを求めているのか、
全然分からず、テンパっていた。
いやいや、ブスすぎるのが愛おしいんだけど、
と最近の本心を言ってみたくもなったが、
さすがにそれはマズイしな。
「何? ブスじゃないって、本当?」
と言い、バッグからファッション雑誌を取り出してくる。
「ここに載ってるモデルを見ても、私のことがブスじゃないって言えるの?」
僕はますますわけが分からなくなっていた。
ナツミさんは、何のために、僕にこんな質問をしてるんだろう。
と思い、俯いていると、
「どうしたのよ。正直に言っていいのよ。」
ますます混乱してきた。
「私は可愛いの? それともブス?」
ここで可愛いなんて言ったら、
また質問を繰り返されるんだろうと思い、
僕は本心でもあるし、ついつい言ってしまった。
「ナツミさんは、ブスだよ。」
その瞬間、ナツミさんの顔が一瞬こわばったようにも見えたが、
気のせいか。
「そうなんだー。じゃあ何で付き合おうとしたの?
ブスだって思ってるのに。」
ここまで来たら言い逃れできないだろうから、
本心も混ぜて言ってみた。
「いや、確かにナツミさんはブスだけどさ、
話してて楽しいし癒されるんだよ。
それにナツミさんと会う度に、
ブスなナツミさんが愛おしくなってさ。
今では、ナツミさんが他の誰よりもブスすぎるのが、
とても嬉しくて、愛おしくなってるよ。」
つい勢いで言ってしまった。
後悔はしていない・・・・はず。
「あはは、レイトくんって面白いね。」
ナツミさんは笑っていたが、目は笑っていなかった。
気まずい雰囲気の中、いつもの場所で降ろしてもらい、
そして家路につく。
その後も、メッセージの交換は順調に続き、
あの質問と会話は何でもなかったのかな?と思っているうちに、
次のデートの誘いが来る。
「今度の土曜日、午前10時にホテル〇〇に行きましょう。」
ホテル〇〇って・・・大人のムフフな、あのホテルですか!?
ヤバイ、ドキドキが止まらない。
そして当日、
ホテルに着き、ナツミさんは5時間のロングコースで申し込む。
「そんなに、いるの?」
「お楽しみは長い方がいいじゃない。」
ってなわけで、
部屋に入り、
ナツミさんが持ってきたジュースを、コップで飲む。
ホテルの雰囲気にドキドキ、ムラムラしながら、
10分ほどナツミさんと会話をしていると、
僕は欠伸が出始めた。
「あれ、なんでだろ? しっかり寝たはずなのに。」
「きっと疲れてるんじゃない?
先週の期末試験の疲れが今頃出てきたとか?」
そんなことあるかなーと思いつつも、
眠りそうになるが、何とかこらえる。
せっかくナツミさんとムフフなホテルに来たのに、
寝るわけにはいかない。
「いいわよ、眠っても。
時間はたっぷりあるし。
1時間ぐらい経ったら、起こしてあげるわ。」
そうは言われても、こらえなきゃと思いながらも、
強烈な睡魔が襲ってきたので、
僕はナツミさんに寄りかかるようにして、眠りに入った。
ふと、目を覚ますと、
何か鼻の頭のあたりが重い、というか痛い。
触ってみると、何か、ひものようなものが取り付けられて引っ張られているようだ。
どういうことだ?と思いながら、
右の方を向くと、
鼻の穴が丸見えな豚面の少年がいた。
誰なんだと思い、
「誰なの?」
と口を動かすと、
その豚面の少年も口を動かす。
え? もしかして、鏡?
ってことは、この豚面の少年って、僕?
そうこうしてるうちに、
「どう、豚面になった気分は?」
ナツミさんの声がした。
「ナツミさん、これは、どういうこと?」
「豚は黙ってなさい。この、ブサイクが!!」
わけがわからない状況になっていたが、
そんな時でも、
怒った表情で物凄いブスなナツミさんを見ては、
あぁ、愛おしいわー、
僕っておかしいわーって思っていた。