自問自答
「ナツミさんのことが、好きなんだ。」
なんなのよ、なんなのよ。
普通、告白ってデートとかしてからじゃあないの。
それが普通よね。
もちろん、こんな豚面の私は、
彼氏いない歴=年齢だし、
告白されたのも今回が初めてだからよく分かってないけど、
それでも、
いきなり告白は、ないわよね。
レイトの告白から、
逃げるように家路についたナツミは、
家の中でも悶々としていた。
正直、恥ずかしくて、どうすればいいか分からなかったわ。
でも冷静に考えて、お断りして正解よね。
たぶんレイトくんは、
話を熱心に聞いてくれるってので、錯覚しちゃったんだと思うの。
レイトくん、話し下手なところがあるから、
話してて楽しいってだけなのに、好きって誤解しちゃったのよ、
きっと、そうなのよ。
だって、私みたいな豚面の女と、
レイトくんが釣り合うわけないじゃない。
レイトくんは、同年代の可愛い子と付き合うのが、望ましいわ。
よーし、今度の家庭教師の時に、
もう1回、しっかりと断ろう。
しかし、
ナツミの悶々は翌日も続いていた。
錯覚かもしれないけど、
でも告白してくれたってことは、少なくとも拒否はされてないってことよね。
この顔のことも。
そして走馬灯のように、
今までの人生で豚面なことで、ひどい扱いを受けてきたことを思い出す。
中学生の頃は、酷かったからね。
特に男子から豚呼ばわりされてて、
太ってないのに豚顔のせいで、給食の残飯処理させられて、吐きまくったり。
鼻の穴にチョコ〇ール詰めて、授業受けさせられたり。
豚は臭くてもいいんだって、肥溜めに落とされたり・・・。
だから高校は女子高に入って、大学も女子大に入ったの。
少し回想に耽ってしまったわね・・・・。
でも、
そんな私の顔を、レイトくんは、拒否してない。
これって、もの凄くレアなことなんじゃないかしら?
21年生きてきた中で初だから、
今後の、結婚適齢期までに同じような人に会えるかどうかは分からない。
ということは、せっかくのチャンスだし・・・・・。
いやいやいや、
何、高校生の言うことを真に受けようとしてるのよ、私。
錯覚もしくは勢いで言ったに決まってるじゃない。
レイトくんは口下手なところが若干マイナスポイントだけど、
普通以上の可愛らしい顔立ちだし、
私みたいな醜い豚面とは、釣り合わないわ。
もし付き合ったりして、できちゃって、
私との子供で凄くブスな子供が産まれてきても申し訳ないしね。
って、何でそんな想像までしてるのよ、私は。
この歳まで彼氏ができたことないから、
落ち着こうとしても、
何だかんだ舞い上がっちゃうのね。
はい、ナツミ。
落ち着いて、落ち着いて。
深呼吸。
スーハー
スーハー
スーハー
よし、決めた。
今度の家庭教師の時に、こないだの告白について聞かれたら、はっきりと断る。
聞かれなかったら、放置する方針で。
そうと決まれば、レイトくんの勉強の綿密な計画を立てよう。
こないだ全然できなかったからね。
レイトくんがこないだ同様、上の空でも、
しっかり勉強してもらうようにしなきゃ。