相談
「告白したら、もっと素敵な人がいると思うよって言われるのはどんな時?」
「いきなりな質問だね。さては告白してきたのかな?」
「うん、そんな感じ。」
前日のナツミさんへの告白。
ナツミさんの反応も気になったが、
僕はある種の達成感と共に、テンション高かった。
そんな時に、クラスメイトの、
ユズルに相談する。
ユズルは学校ではモテており、
恋愛への良いアドバイスが聞けると思い、ウキウキして答えを待った。
「たぶんだけど、ショック受けるなよ?」
「何がさ。」
「うんとね、たぶんだけど、お前振られたんだわ。」
「え?」
その瞬間、僕の心にずしーんと、きた。
「ショック受けるなって言ったのに、受けてるな。」
「その反応だと、今の今まで振られてないと思ってたのか、めでたいやっちゃ。」
僕はわけが分からなかった。
「な、なんで振られたって思うんだよ!」
「だって、もっと素敵な人がいると思うよってのは、
体のいい、振るときのテンプレみたいなもんだからさ。」
「持ってるスマホで、 恋愛 振り方 とかで検索してみ?」
そして検索して、
項垂れる僕がいた。
傷つけないように、そういった言い方をすることが多いとも書いてある。
「レイトが告った相手の感性が普通と違っていたら、なくはないだろうけど、
ま、十中八九、振られたと考えた方がいいよ。」
「傷ついても仕方ない。縁なかったと思って、次の恋いこーや。」
こういうフットワークの軽い考え方がユズルのモテる要因なんだろうなと、
思いはしたけど、悲しさが消えることはなかった。
見かねたユズルが聞いてくる。
「ちなみに、何回目のデートで告ったん?」
「デートは、まだしてないよ。」
「え~~~~~~~!?
おいおいおい!
でも、それならまだチャンスありかもなー。」
「どういうことよ?」
「どういうことよって言いたいのは、こっちの方だけどな。
デートもしないで告るとか、そりゃあ振られるわ。」
「なんで?」
「おいおい、いくら恋愛経験少なくてもそれぐらい分かれよ。
2人きりで遊んで、なおかつ相手の良さが分かってからってのが普通だよ。」
そんなことはないはずだ、中学生の時の彼女とか、
文化祭の準備に熱中する中で親密になり、
文化祭終了後に告って、付き合ってからデートしたはず。
それをユズルに言うと、
「いやいや、それは既に作業を通して信頼関係ができてるっていう例外っしょ。」
「普通の告白は、デートして良いムードになってからだよ。」
知らなかった・・・僕はいろいろと勘違いをしていたようだ。
あぁぁ、早まった告白をしてしまったー。
僕は再び項垂れた。
「大丈夫。たぶんチャンスあるよ!」
「何でそんな無責任なこと言えるんだよ!」
「無責任じゃないさ。
いやいや、普通にデートして告ってみて、もっと素敵な人がって言われたんなら、
ほぼ無理だけど、その状況の告り方なら、
相手も戸惑って、そういう風に言った可能性が高い。」
「うんうん、相手に意識させるために告白したとも考えられるか。
レイトは無意識だろうけど、なかなかの高等戦術だよ、これは。」
ユズルは一人でうんうんと頷いていた。
状況がつかめてないが、ユズルの表情を見るに、
悪い状態というわけではないらしいな。
「それで、その相手とは頻繁に会えるの?」
「週1ぐらいかな。」
「週1かぁ。それならますます大丈夫かもな。
すぐに会うんじゃあ、告白した後のきまずさは消えないだろうけど、
1週間あるならね。多少は気まずいだろうけど、大したことはない。」
「ユズルがそう言うなら、何か希望が湧いてきたよ。」
「うんうん、いい表情だね。もうちょっと頑張ってみ。」
「しかし、恋愛には奥手そうなレイトが他の高校の子を好きになるなんて、
どんな接点あったん?」
「え? 他の高校じゃないよ。」
「え? じゃあ週1だけど、うちの高校?」
「いや、高校じゃないわ。」
「てゆーことは、地元の中学の後輩とかか。
それはダメだぜ。後輩の女の子を困らせる告白とかは。」
そこで大学生だよと言ってもよかった気もするが、
聞かれないので、あえては言わないこととした。
「せっかく相談に乗ったんだから、
見事付き合えたら、可愛い彼女の写メ見せてね。」
可愛くないんだけどなぁ。
正直、豚みたいな顔してるし。
僕にとっては、可愛いけど、他人に見せられるかどうかは分からない。
「うん、わかったよ。相談のってくれてありがとう。」
「いつでも、いいよん。」
そして僕は、次にナツミさんと会った時にどうすべきか考えることとした。