出会い
「レイトくん、どうしたの? 問題解くの嫌になっちゃった?」
僕、新川レイトは、今日も家庭教師の時間に、
あまり集中できずにいた。
「もう、ちゃんと集中しなきゃダメでしょ。
家庭教師代も安くはないんだからね。」
家庭教師である女子大生のナツミさんが、
そう言ってくれるものの、
僕は、参考書の問題には集中できていなかった。
元々、勉強が好きじゃないってのもあるけど、
今日というかここ最近、集中できていないのは、
ムラムラしているからさ。
どうやら、僕は、ナツミさんのことが気になっているようだ。
気になっているようだって自信なく思うのは、
ナツミさんが、
ブスだから。
ナツミさんは言葉遣いも丁寧でとても優しく、
頭も切れる。
大人っぽい雰囲気の女子大生の家庭教師に教えられて、
ムラムラしない高校生の男なんていないだろ?
って、普通のパターンだったら断言できるんだけど、
ナツミさんは、ちょいブスではおさまらないブスだからなぁ。
目が細いし、鼻が上向いてて鼻の穴が思いっきり見えてるし・・・。
鼻が上向いてて人気のある女性歌手がいるけど、
あれより更に目を細くして、鼻も吊り上げられたような感じだから・・・。
100人に聞いたら100人とも、ブスだと言っちゃうレベルなんじゃないか。
そのうちの50人は、「ブスじゃなくて豚でしょ!!」って
人間扱いすらしないかもなって感じの、豚みたいなブスな顔したナツミさん。
そういう事情だから、最近の自分の心境の変化には驚いている。
頭では分かっているんだよ、
まさか僕がこんなブスな女性に惚れるわけないだろうって・・・。
でも最近のドキドキ感については、恋と解釈した方が良いような気もしている。
母親が、成績の落ちている僕を見るに見かね、
近くの女子大に通っている、
ナツミさんという家庭教師を呼んでくれたのが、かれこれ半年前。
その時の母親の言葉は、
「レイちゃんが勉強にだけ集中できるような人に来てもらうから。」
母親の言葉の意味が最初は分からなかったが、
ナツミさんが来て、理解した。
顔が物凄く豚みたいだし、服の上からの胸元も無いに等しい。
要は、ブスで貧乳だ。
容姿を見るまでは、女子大生の家庭教師ってことで少し期待していたが、
容姿を見てからは、
完全に勉強に集中すべきと、脳で判断した。
無いだろうけど、変に目を合わせてしまって、
こちらに好意を持たれたら、困る。
ブスすぎるから、おそらく男慣れしてないだろうし、
なるべく誤解されないように目を合わさんとこ。
って、失礼なことを考えながら、勉強に励んでいた。
とはいえ、1か月も経つと、ナツミさんと雑談するようになった。
元々、しーんとした空気は嫌いだし、
勉強するより喋っていたいしね。
喋ってみると、ナツミさんは気さくで話してて楽しかった。
高校生の自分には知らないことをいろいろ教えてくれるし、
ユーモアもあって、笑わせてもくれた。
ナツミさんがちょいブスぐらいの顔だったら、全然、恋するのになぁ。
そんなこんなで、かれこれ半年が経過しようとする頃、
僕は、夢を見た。
なぜか知らないけど、僕とナツミさんが愛し合っている夢さ。
そして僕は、昔から、夢に出てきた女の子のことを意識してしまうクセがあった。
今回のナツミさんのことも例外ではない。
とはいえ、今まで夢に出てきた子は、
それなりの普通レベル以上の容姿だったはず。
ナツミさんは、豚みたいな顔したブスで、しかも貧乳だ。
ムラムラしようがないじゃないかと自分を納得させようとするも、
結局ムラムラしてしまう。
夢の中でのナツミさんとのキスの残像が、頭から離れない。
どうしよう、どうしようと思っているうちに、
今週もナツミさんが部屋に来た。