一人の森のひと
新しく考えるための、足がかりです。大した内容なくてすみません……。
ル=トゥは精霊種である。
自然に在る花や木々の生命力が姿を採ったのが妖精。森を歩けば、出会う事もある。
精霊はもっと大きな存在で、それら妖精を統べる力を持つ。妖精だけではない、その精霊の力に関わるモノを操る事もできる。炎の力を束ねる精霊、水の力を束ねる精霊。他にも、世界には様々な力が溢れている。
精霊種はそのどちらでもない。
妖精を構成する力の、集まって生まれる種と言えばいいのだろうか。ル=トゥならば、人間がラカラと呼ぶ街の傍に広がっている森。その森に住まう生命力が集まって、生まれた。寿命というものは無く、森の生命力が減っていけばきっと消えていくのだろう。
家の窓の外に広がる森を眺めながら、ル=トゥは漠然と考えていた。
そういえば、何故家という物に住んでいるのだったか。ラカラの街より外れた場所に一軒、木々に隠れるように佇んでいる。もともとル=トゥの居た森の一部。そこに、家を建ててくれたのは人間の友人。もう居なくなって、かなりの時が過ぎているのだろう。
そもそも森から出て、人間と同じように過ごすようになったのもル=トゥがその人間に興味を持ったためだったような気がする。
ル=トゥは座っていた椅子から立ち上がり、家の出口へと向かった。服の袖が壁に触れて、微かな衣擦れを囁く。扉を開ければ、明るい日差しが辺りを照らしていた。
「ああ、良い天気。」
そう呟いて、手を空へと伸ばした。
ル=トゥが意思を持って、どれほどの時間が過ぎたのか。
人間と同じように過ごすようになって、どれほどの時が流れたのか。
それはきっと、大して気にするような事ではないとル=トゥは思っていた。