復讐の賢者
俺、セイは家で頭が割れるような激しい頭痛に襲われていた。
昨日は何もなかった。
強いていうなら変な夢を見たぐらいだった。
俺が幼馴染のレインと共に大きな鉄の塊に潰される夢だ。
まるで自分で自分じゃないような夢だ。
何が何かわからないから俺のことを整理しよう。
俺の名前はセイ、名もない村に住む7歳の子供だ。
スキル結界を持っている。
父さんと母さんは農民で優しい人だ。
父さんと母さんと貧しいが幸せに暮らしている。
見た目は黒い髪に黒い瞳を持つ。
この世界には魔族、人類、獣人、エルフ、魔物、神獣の種族がいる。
一定の強さを持つ獣人を天狗と呼びその中で最も強いものを獣王と呼ぶ。
魔族も似たような物で強くなると修羅となり最も強い者を魔王と呼ぶ。
人類とエルフは勇者となりその中で最も強い者を星勇者と呼ぶ。
魔物は種族関係なく襲いかかる意志のない獣だ。
神獣は神の力を持つ生物だ。
魔力、波動、聖力の三つの力がある。
魔力は魔族と人類が使えるが魔族の方が得意な傾向にある。魔法が打てる。魔法は属性がある水、雷、炎、風だ。
波動は獣人が得意で人類も使える。効果は身体能力などを強化する。
聖力はエルフが得意で人類も使える。効果は回復だ。
この世界にはスキルという概念がある。
生まれ時から皆が持つ固有能力だ。
俺のスキルは結界。
魔力、波動、聖力を形にする。
そして勇者、天狗、修羅覚醒時にレジェンドスキルを手に入れる。
レジェンドスキルは通常のスキルより強力だ。
この世界の国は四つある。
ランセー王国は平和で治安がいい国だ。
現星勇者も住んでいる。
人類、エルフ、魔族、獣人全てが住んでいる唯一の国だ。
魔国ヴェデンは魔族の国だが300年前にもある国を除いた和解している。
ザイル共和国は魔族と人類とエルフが住んでいる。
アイル帝国はあまり良い噂は聞かない。
侵略戦争を繰り返し数々の村や町を滅ぼしているとか。
「ねぇ、セイ?大丈夫?」
そう聞いてきたのは夢の中で俺と死んでいた幼馴染、レインだった。
レインは魔力、波動、聖力が見えるスキル魔眼の持ち主で村長の娘だ。
なぜ俺の家にこいつがいるんだ?
そう思ったがどうせ母さんが入れたんだろう。
「ごめんなさいねぇ。レインちゃん。セイに付き合わせちゃって。」
母さんがお粥を作りながら言った。
するとレインは少し顔を赤くしつつ真面目な顔で言った。
「いえ、私もセイに大事な話があったので。」
その時突如頭の中の引き出しを無理矢理開いたような頭痛が走った。
顔を顰めたのに気づいたレインが何か言っているが聞こえない。
そして何か記憶が流れてきた。
俺にそっくりで名前を松田心という人の名前だ。
隣にはレインにそっくりで柊木愛という名前の人が歩いている。
もしそうなら2人は鉄の塊…トラックに潰されたはずだ。
この世界で生まれる前に別の世界で生きていた。
所謂転生というやつだろう。
「愛…?」
「心…?」
声が重なった。
すると愛…否レインはポロポロと泣き出してしまった。
レインは俺の胸に顔を埋めて抱きついてきた。
俺はそっと背中に手を置きゆっくりと撫でた。
母さんがレインの母さんを呼んで2人で「あらあらまあまあ」と言っていたが正直どうでも良かった。
いつもなら顔を真っ赤にするところだがそれが霞むくらい嬉しかった。
数時間レインは俺の胸に顔を埋めていた。
空がオレンジ色に染まり夕暮れとなったときレインはレインの母さんに連れられて帰って
いった。
「じゃあなレイン!」
「うん!ありがとう。セイ!」
そうして小さく微笑みあうとレインは帰路についた。
どんどん小さくなる背中を見ながら俺は嬉しさで泣きそうになっていった。
明日もレインと話そう。そう決めて。
それは次の日の朝の5時ごろだった。
アイル帝国軍がこの村に攻めてきた。
おそらく目的はこの遺跡だろう。
遺跡には謎の剣がある。
よく知らないがすごい剣らしい。
俺とレインは村長の家の床下に隠れていたから助かった。
村長が匿ってくれたんだ。
村の全てを焼き尽くそうとする炎の魔法、全てを吹き飛ばす風の魔法、そんなのがたくさん飛び交っている。
そんな音が聞こえる中俺とレインは床下に隠れていた。
だが足音や帝国兵達の「殺せ!」という声が俺達にはとても怖かった。
一時間ほどが過ぎて音が聞こえなくなった頃、俺たちは外に出た。
「おとう、さん、ねぇ、おかあさ、ん、返事してよ、ねぇ!返事してよ!」
レインの両親は首が落とされ見るも無惨な姿で見つかった。
崩れ落ちたレインの泣き声にも等しい叫び声が響く。
俺も涙が出そうだったがまだ帝国兵達がいるかもしれないという恐怖から泣けなかった。
「父さん!母さん!」
俺は立ち上がり父さんと母さんを探した。
レインはゆっくりと立ち上がり俺に肩を支えられながらゆっくり歩いた。
その時だった。
「ききゃあああぁぁぁ」
母さんの声が聞こえた。
辛うじて残っていた体力を振り絞ってなんとか声の元に向かう。
「母さん!」
そこには冷酷な目をした魔法使いの老人がいた。
レインがとても怯えている。
奴はおそらく魔力がとても多いのだろう。
「セイ!レインちゃん!きちゃダメ!」
母さんの視線の先にいた俺たちの方を老人は見た。
その冷酷な瞳と恐怖から俺は咄嗟に結界を出来るだけ分厚く張った。
だが俺はそんなに強い訳でもない。
きっと殺されるだろう。
そして奴が魔法を撃とうとした直前一筋の光が差し込んだ。
「よう、帝国最高の魔法使いファルムさん?」
老人、否ファルムは手を止めて驚いたような表情をした。
そこにいたのは圧倒的なオーラを持った美しいエルフの青年だった。
その手には神聖な槍を持っていた。
「星勇者メイト!何故貴様がここにいる!」
エルフの青年はメイトというらしい。
なるほど、あの圧倒的なオーラは星勇者というなら納得だ。
「チッ!このガキだけでも殺してやる!」
そう言って俺の方に杖を向けた。
いかに星勇者といえどこの距離では間に合わない。
まさに詰みだ。
そう死を覚悟し目を瞑った。
そして俺は殺された、そう思った。
目を開けると母さんが目の前にいて俺たちのことを庇っていた。
「セイ!レインちゃん!生きなさい!」
それが母さんの最後の言葉だった。
読んでくれてありがとうございます!
そのうち長編にしようかなと思います!




