約束の対価 ~出世払いを約束した妹の話~
*宝石の庭~私を過去にするのなら、私もあなたを過去にする~
*毒花の夢~駒の私が、愛に溺れたあなたを終わりに導くまで~
上記で登場する王妃ヴィオラの幼少期にまつわるエピソードです。
本日5/25より、コミックシーモア様から、『宝石の庭~私を過去にするのなら、私もあなたを過去にする~』が電子書籍として発売されます。
今回、それを記念して小話を書かせていただきました。
「おべんきょうなんて大嫌い!!」
麗らかな午後の日差しに照らされた広大な屋敷の中、幼い少女の悲鳴にも似た声が鋭く響き渡った。
続けざまに勢いよく扉が開かれ、中から転がり出るように小さな人影が飛び出してくる。
そのまま軽やかな足音を立てながら、廊下の奥へと一目散に駆け去っていった。
「ヴィオラお嬢様! お待ちくださいっ!」
慌ててその背を追うのは、部屋で控えていた使用人たちである。
呆れたようにため息を吐く家庭教師へ、執事が平身低頭に謝罪を重ねる一方で、数人の使用人たちは逃げ出したお転婆娘を追って廊下へ飛び出していく。
彼女はひとたび目を離せば、あっという間に屋敷のどこかへ姿をくらましてしまう。
そうなれば最後、広大な屋敷の中から探し出すのは至難の業だった。
使用人たちは手分けをしながら、今日もまた屋敷中の捜索を始めた。
この騒がしい光景は、ここ一か月ですっかり見慣れたものとなっていた。
普段は静謐に包まれているベラドンナ公爵家が、近頃に限って慌ただしい空気に満ちているのも、すべては一人の少女――この公爵家の珠玉たるヴィオラに、大きな転機が訪れたからである。
それは彼女にとって、あまりにも唐突な出来事だった。
***
「――ヴィオラ。これからお前には、各分野を学ばせるため家庭教師をつける。いいかい、しっかり勉強するのだよ」
「……おべんきょう、ですの?」
父から贈られた猫のぬいぐるみを抱き締めたまま、ヴィオラはきょとんとした表情で小首を傾げた。
ある日、絶対に入ってはならないと言い聞かされていた執務室へ通されたヴィオラは、厳めしい顔つきの父を見上げながら、その言葉を幼い頭の中で懸命に反芻する。
「そうだ。これからお前は王家へ嫁ぐため、立派な淑女にならねばならない。そのためにはまず学問だ。礼儀作法はもちろん、他にも身につけねばならないことが数多くある。今までのように、ふらふらと遊んでばかりはいられない。よく心得ておきなさい」
父はそれだけを告げると、いつものように優しく頭を撫でることもなく、まるで突き放すようにヴィオラを執務室から退出させた。
普段であれば寡黙ながらも甘やかしてくれる父が、突然別人のように冷たくなった。
その変化を理解できないヴィオラは愕然と目を見開き、やがて大きな瞳いっぱいに涙を溜め込む。
そして、閉ざされた執務室の扉の前で、幼子らしく声を上げて泣きじゃくったのだった。
それからほどなくして、各分野に秀でた家庭教師たちがベラドンナ公爵家を訪れ、幼いヴィオラへ容赦ない教育を施し始めた。
しかし、まだ甘えたい盛りの幼子にとって、大人たちに囲まれながら机へ向かわされるだけでも苦痛だというのに、今まで経験したことのない厳しい態度で接せられる日々は、幼い心へ恐怖と困惑、そして絶望にも似た感情を植え付けていく。
とはいえ、ヴィオラはそれで大人しくなるような少女ではなかった。
失われてしまった今までの甘い待遇を取り戻そうと、勉学の時間になれば忽然と姿をくらまし、屋敷中の調度品を壊して回り、悪戯を重ねて使用人たちを困らせる。
そうして彼女は、淑女とは程遠い振る舞いばかりを繰り返すようになってしまったのである。
高価な壺は粉々に砕かれ、母のドレスは落書きだらけ。
父が密かに楽しみにしていた年代物の酒までも見事にぶちまけられ、屋敷のあちこちで、大人たちの声にならない悲鳴が日々響き渡っていた。
そんな惨状を半ば呆れたように眺めていたのが、ヴィオラの兄であるローレンスだ。
彼は度々ヴィオラを諫めては宥め、どうにか機嫌を取りながら彼女を連れ戻していた。
さらには、少しでも勉強へ興味を持ってもらおうと、菓子で釣り、買い物で釣り、遊びで釣り――ありとあらゆる手を尽くして機嫌を取り続ける。
その努力が実を結んだのか、ヴィオラが机へ向かう時間は、ほんのわずかではあるものの、以前より伸び始めていた。
***
ある日の午後。
渋々ながら机へ向かい、家庭教師から出された課題をこなしていたヴィオラへ、傍らで退屈そうに彼女を眺めていたローレンスが、ふと思い出したように口を開いた。
「ヴィオラ。最近、大人たちが君を使って何やら企んでいるらしいんだけど、知っているかい?」
「……なんですの、それ? わたくしを使ってと言われましても、わたくし、自慢ではありませんけれど、何もできませんことよ?」
「それは知ってるよ。でも、今まであんなに皆でべたべた甘やかしていたのに、急にヴィオラへ勉強しろだなんて言い出すなんて、おかしいと思わない?」
「本当ですわ! みんな急に、わたくしにきびしくなって……おべんきょうしなさいって、そればっかり……っ、ひっく……」
周囲の態度の変化を思い出し、ヴィオラは次第に悲しくなっていく。
やがて潤んだ瞳から大粒の涙がぽろぽろと零れ落ち、幼い喉からしゃくり上げるような嗚咽が漏れ始めた。
本当は、ただ勉強が嫌だからあれほど反抗していたわけではない。
今まで優しくしてくれていた人たちが、ある日を境に突然冷たくなった。
その急激な変化へ幼い心がついていけず、ヴィオラの気持ちだけが置き去りにされてしまったのだ。
だから彼女は、どうしようもなく悲しかったのである。
その悲しみに気づいてほしくて。
理解して、優しく頭を撫でてくれる誰かの手が欲しくて。
ヴィオラは不満をあからさまに態度へ滲ませながら、大人たちの反応を窺い続けていた。
けれど結局、周囲を困惑させるばかりで――ヴィオラが本当に欲していた反応を、誰一人として返してはくれなかった。
ぽつり、ぽつりと涙が課題の上へ落ち、滲んだ文字を眺めながら、ローレンスは困ったように微笑む。
そして慰めるように、ヴィオラの頭をぽんぽんと軽く撫でた。
「そうだよね。急に知らない大人たちに囲まれて、勉強しなさいなんて言われても、困ってしまうよね」
「ローレンスお兄さま……あのね、先生を困らせるのも、本当はいやなの。でもね、そうしないと、お父さまとおはなしもできなくて……」
「父上と話したところで、勉強そのものはなくならないと思うけど?」
普段は執務室へ籠りきりで、ほとんどヴィオラたちの前へ姿を現さない父。
ヴィオラは騒動を起こすことで、その父を引っ張り出そうとしていたのだ。
ローレンスは驚きながらも、冷静さを崩さぬまま言葉を続ける。
もっとも、子どもだけで執務室へ押しかけたところで、追い返されるのが関の山だった。
唯一父が飛び出してきたのは、ヴィオラが秘蔵の酒を駄目にしてしまった時くらいである。
あの時ばかりは、顔面蒼白になっていた父の姿を見て、ローレンスも少しだけ胸が晴れる思いがした。
大人たちは、自分たち子どもを置き去りにしたまま、何やら大きな計画を進めている。
その気配を薄々感じ取っていたローレンスは、その計画の駒としてヴィオラを扱おうとしている大人たちへ、複雑な感情を抱いていた。
公爵家の嫡子ともなれば、将来当主として不足のないよう、高度な教育を施される。
実際、ローレンス自身も、領地運営に必要な知識から、公爵家の人間として修めるべき礼儀作法に至るまで、多岐にわたる教育を受けていた。
そんなローレンスでさえ音を上げたくなるほどの教育を、何も知らぬ幼いヴィオラが、ある日突然受けさせられたところで、すぐに身につくはずもない。
ましてヴィオラには、次期当主という重責もなかった。
彼女はこれまで、甘く穏やかな空間の中で、ただ愛されるためだけに育てられてきたのである。
幼い頃は、そんな妹の境遇を羨ましく、時には妬ましく思ったこともあった。
けれど、ある日突然すべてが一変し、今にも不安と絶望に押し潰されそうになっているヴィオラを見ていると、ローレンスは何とも言えない気持ちになる。
大人たちの都合に振り回され、幼い肩へ理不尽を背負わされているヴィオラが不憫でならなかった。
だからこそローレンスは、柄にもなく、こうして妹の傍に寄り添っているのである。
未だ涙の止まらないヴィオラへ、ローレンスは慰めるように頭を撫でながら、その手でそっと目尻を拭ってやる。
そして困ったように小さく息を吐いた。
「父上と、何を話したいのさ」
「あのね、お父さまにね、たいぐうかいぜんを求めるの」
「待遇改善……?」
まったく予想していなかった言葉が幼い妹の口から飛び出し、ローレンスは思わず言葉を失った。
「だって、それ相応の地位を持つ者は、その地位に見合った行動を示さなきゃいけないんでしょう? 今のお父さまは、わたくしに、お父さまとして何も示していないもの!」
「……また随分と、すごい屁理屈を言い出したな」
つまりヴィオラの言い分を要約すれば、“父親ならば、父親として相応しい振る舞いを子へ示すべきだ”ということである。
教育の中で語られた“貴族としての在り方”を、こうして親子関係へ結びつけてしまう辺りは、いかにも子どもらしい純粋さと頑なさゆえだろう。
もっとも、その理屈は大枠で見れば、決して間違ってはいなかった。
「だからね、おべんきょうをするかわりに、見返りが欲しいの。だって、わたくしに何かさせたいから、みんな急に冷たくなったんでしょう? だったら、ちゃんと対価をもらわなきゃだめなの」
「……子どもの口からは、あまり聞きたくない言葉だね」
幼い子どもらしくたどたどしい言葉遣いの中へ、時折妙に俗っぽい単語が混じる。
ローレンスは思わず苦笑しながらも、その後も“待遇改善”について熱弁を振るい始めたヴィオラの話へ口を挟むことなく、静かに耳を傾け続けた。
きっと、この答えへ辿り着くまでにも、ヴィオラなりに必死で考えたのだろう。
気を引こうとあれこれ騒ぎを起こしても、周囲を困惑させるばかりで、状況は何一つ良くならなかった。
それどころか、態度を改めさせるため課題は増やされ、自分ばかりが苦しくなっていく。
――ならば、どうすれば改善できるのか。
そうして幼いながらに思考を巡らせた末、ヴィオラは“待遇改善を求める”という結論へ辿り着いたのである。
「じゃあ、僕が父上に話をつけてあげるよ。君の話を、ちゃんと聞いてあげるよう説得してみる」
「本当に?」
「うん。その代わり――ヴィオラは、僕に何をくれるの?」
机へ頬杖をついていたローレンスは、すっかり涙の引っ込んだヴィオラへ微笑みながら、穏やかにそう問いかけた。
父へ話を通す代わりに対価を求められたヴィオラは、驚いたようにぱちりと目を見開く。
そして、小さな頭で兄へ支払うべき“対価”を懸命に考え始めた。
「うーんと……お兄さまにあげられるもの……猫ちゃんのぬいぐるみ、とか?」
「それは、さすがにいらないかなぁ」
「うーん……お父さまはね、わたくしに立派な淑女になって、王家へ嫁げって言っていたの。それでね、先生たちも、そうなれるようにって頑張って教えてくださっているの。王家へ嫁ぐことって、名誉なことなんでしょう?」
うんうんと唸りながら、ヴィオラは自分の持つ乏しい知識を一生懸命かき集め、答えを導き出そうとしている。
ローレンスはそんな妹へ相槌を打ちながら、彼女の思考がどこへ辿り着くのかを、どこか愉快そうに見守っていた。
「一般的には、そうなんだろうね」
「じゃあ、本当にそうなったら、お兄さまにとっては良いことになる?」
「もちろん。僕はベラドンナ公爵家の次期当主だからね。将来、君がそうなれば、僕にとっても利益になる」
「だったら、それが対価ですわ!」
自分なりに納得できる答えへ辿り着いたことで、ヴィオラの顔には再び溌剌とした笑顔が戻る。
そして得意げに胸を張ると、まるで名案を思いついた子どものように言い放った。
「これが、しゅっせばらいというやつですわね!」
――出世払いなんて言葉を、一体誰が教えたのだろう。
そんなことを内心で思いながらも、ローレンスはヴィオラの無邪気な笑みにすっかり絆され、くしゃりと頭を撫で回しながら苦笑した。
「それでいいよ。じゃあ、父上には僕から話を通してあげる。その代わり、ヴィオラも今みたいに、自分の意見をちゃんと父上へ伝えるんだ。『お勉強を頑張るから、その対価をください』ってね」
「わかりましたわ! あのね、ずっと欲しいと思っていたものがあってね。図鑑に載っていた、おおきな猫ちゃんがね――」
先ほどまで悲しげに泣いていたのが嘘だったかのように、ヴィオラはすっかり子どもらしい明るさを取り戻していた。
あとは父へ事の次第を伝え、ヴィオラときちんと話し合う場を設けさせる。
そのうえで、努力に見合う“対価”を父の口から提示させれば、ヴィオラのやる気も多少は引き出せるはずだ。
もっとも、それで素直に勉強へ励むかどうかは、また別問題ではあるのだが。
父へ要求する“対価”について、目を輝かせながら語り続ける妹を見つめ、ローレンスは微笑ましさに目を細めた。
そして無邪気な妹の頭を優しく撫でながら、彼女が満足するまで、その話へ静かに耳を傾けていたのだった。
***
あれから随分と時が経ち、ローレンスはベラドンナ公爵家の当主に、そしてヴィオラはアマレスク王家へ輿入れし、そして今は王太后として、若くして国王となる息子ヘザーと、その婚約者であるユーリアを献身的に支えている。
「ローレンスお兄様。お父様たちが戻られたのでしょう? どうして、すぐに知らせてくださらなかったのですか」
ここは王城の中でも、王族とそのごく親しい者たちにしか立ち入ることを許されない私的な空間。
そこへ呼び出されたローレンスは、目の前で愛らしい子猫を膝へ乗せている妹を見ながら、呆れたように小さくため息を吐いた。
「知らせる間もなく、あの人たち旅立っていったからね。僕に当主権限を押しつけた途端、好き勝手やってるんだ。今さら新婚でもないのに“新婚旅行”だなんて言って、いい歳をして各地を渡り歩いてるんだから」
「お母様ならわかりますけれど……あの厳格で寡黙なお父様が、ですの?」
「あの人、別に厳格でも寡黙でもないよ。ただ、ヴィオラの前でだけは厳しく振る舞っていただけさ。……情が湧いてしまうからね」
王家の腐敗を止めるためとはいえ、自らの愛娘を腐敗の渦中へ送り込まねばならなかった両親の心境を思えば、当時ヴィオラへ向けられていた冷たさも、今なら多少は理解できる。
ただ愛情を注がれ、一介の貴族令嬢として育てられただけでは、恐らく王家の惨状には耐え切れなかっただろう。
甘い蜜へ群がる蟻のように、王家へ縋りつく醜悪な貴族たちを制するには、甘やかされるまま育った砂糖菓子のような令嬢では務まらない。
悔しさを知り、悲しみを知り、それでも折れぬ反骨心を宿した存在でなければ――王家に蔓延る負の連鎖を断ち切ることなどできはしないのだ。
遥か昔に交わされた王家との契約。
その宿命を果たすため送り込まれた駒は、ようやく役目を終え、今は穏やかな日々を手にし始めていた。
「久々にお会いしたかったのに。この子のお礼も言いたかったわ」
そう言いながら膝の上の子猫を優しく撫でるヴィオラの瞳は、今まで常に纏っていた刺々しい空気をまるで感じさせないほど穏やかだった。
指先でこちょこちょと喉元をくすぐれば、子猫は膝の上へごろりと寝転がり、甘えるように体をくねらせながら愛らしさを振り撒いている。
この小さな生き物が、いずれ大の大人よりも大きく育つ品種だとは、とても思えない。
楽しげに子猫と戯れるヴィオラを見つめながら、ローレンスは、つい先日帰省していた両親との会話を思い返していた。
「まぁ、父上としては顔を合わせづらいんだろうね。君を不幸へ追いやったようなものだから」
「……別に、恨んでなどいないわ。ずっと支えてくださっていたことくらい、わかっているもの。お兄様も、お母様も、ベラドンナに関わるすべての人たちが、わたくしを支えてくれていた」
「それでも、君が辛い思いをしたのは事実だよ。だから父上は、今さらどんな顔をして会えばいいのかわからなくなっているんだ。落ち着いたら、そのうち自分から顔を見せるさ。少し放っておいてあげなさい」
王家と交わした契約を、幼いヴィオラへ背負わせたこと。
それは国のためを思えば賢明な判断だったとしても、親としては決して許されるものではない――父はそう語っていた。
帰省した夜、静かに交わした酒杯が微かに震えていたのは、決して見間違いではなかっただろう。
ヴィオラの戦いは、あまりにも孤独だった。
たとえ親であろうと、安易に肩入れすれば、それだけで疑念を招く口実となる。
だからこそ彼らは、表立ってヴィオラを支えることすらできなかったのである。
せめて、かつて交わした約束だけでも守ろうと、父自らこの猫を探しに赴いたことには、ローレンスも驚かされた。
けれど、それこそが父なりに示せる、唯一の誠意だったのだろう。
先日、ようやく長きにわたる戦いへ終止符が打たれた。
ヴィオラは、息子であるヘザーと、その婚約者であるユーリアによって、本当の意味で解放されたのである。
そして今――。
ヴィオラは幼い頃を思わせる柔らかな面差しを浮かべながら、“対価”として贈られた子猫を大切そうに抱き締め、穏やかに微笑んでいた。
「そういえば、お兄様」
「なんだい?」
ヴィオラは子猫を抱きしめたまま、どこか悪戯っぽく口元を緩める。
「わたくし、出世払いはできましたかしら?」
その言葉に、ローレンスは一瞬きょとんと目を丸くした。
だがすぐに、幼い頃に交わした“対価”の約束を思い出し――柄にもなく、声を上げて笑い出す。
「はははっ! 充分すぎるほどの大出世払いだよ! ――本当によく頑張ったな、ヴィオラ」
あんなにも小さかった妹。
我儘で、暴れん坊で、悪戯好きで。
皆を困らせては、誰にも見えない場所でひっそり泣いていた妹。
その少女は今や、立派な淑女となった。
そして、一国を支える柱の一つとして、しっかりと地に足をつけ、前を向いて歩いている。
それが何より嬉しく――家族として、心から誇らしかった。
様々な困難へ立ち向かい。
時には自分の想いすら飲み込みながら、この結末まで辿り着いたヴィオラを。
兄としても。
そして臣下としても。
これから先も、ずっと支えていきたい。
どうか彼女の笑顔が、曇ることのないように。
了




