#23 鼻歌は止まらないが、請求書は待ってくれない
(2026/2/12)
「君の手っでぇ〜きっりさ〜いてぇ〜♪」
私は作業中、鼻歌どころか本気で歌う。
今日はポルノグラフィティの「メリッサ」だ。熱量も音量もわりと本気。
レンジの“チン”待ちの数十秒ですら全力でやる。
しかもリズムに合わせて体も揺れる。
一人暮らしの部屋とは思えない賑やかさだ。
お隣さん、もし聞こえていたら申し訳ない。
スーパーの軽やかなBGMでも、気を抜くと身体が揺れる。
さすがに店内では抑える努力をしている。
もしかして、うちの家系にラテンの血が流れているのではないか。
そんな陽気な人はいないはずなのだが――
いや、待て。
思い出した。
妹だ。
買い物について行ったとき、肩を左右に揺らしながら独特な盆踊り仕様のダンスをしていた。
母が笑いながら「踊るのやめて!」と止めていた光景が浮かぶ。
今では冷静ぶってクールを装っている妹だが、昔はあんなにもノリノリだった。
そういう私も、小学生の頃は自作CMにハマっていた。
正確にはキャッチコピー遊びだ。
「サニクリーン」の替え歌で「ピンクパンツ」。
妹がショッキングピンクのパンツを気に入っていたので、勝手にテーマソングにした。
家族ビデオを流されると、二階の自室に逃げ込むほど恥ずかしがりだったくせに。
今こうして思い出しているのだから、人は変わるものだ。
成長、と言えば聞こえはいい。
ただ歳を重ねただけ、とも言える。
もしくは鈍化。
そんなことを考えながら歌っていたら、ふと思い出した。
支払い期限を過ぎた請求書の存在を。
……請求書は、私のリズムに合わせてはくれないらしい。
悲しみの息の根も、請求書の期限も、
せめてワンテンポ遅れてくれないものか。




