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#11 統治者の敗北、あるいはリモコンの神隠し

(2026/2/7)


私は、自室という名の小宇宙における完璧な統治者であるはずだった。


 物の配置を制御し、領土内の秩序を保つ。持ち物は多いが、どこに何があるかは概ね把握している。そんな私の世界において、なぜか「リモコン」というインターフェースだけが、去年から執拗な反乱を起こし続けている。


 きっかけは、ブックオフで買ってきた古本の場所を確保するための、ささやかな片付けだった。

 使わないはずの引き出しの奥から、そいつは平然と姿を現した。テレビのリモコンである。

 なぜこんな場所に。いつ、どんな意図でここに封印したのか。


 狭いワンルームで迷子になって、早一ヶ月。その間、私はFire TV Stickのリモコンを杖代わりに、YouTubeの海を漂うしかなかった。録画した番組を見ることすら許されない、不自由な王国。


 実は、今回見つかったのは「二代目」である。

 一年前に姿を消した「初代」は、どれほど捜索を尽くしてもついに見つからず、私は屈辱にまみれてメルカリで中古品を買い直した。私の統治史上、紛失によって代替品を求めたのはこれが初めての汚点だった。

 照明のリモコンも、時折示し合わせたように二人揃って姿を消す。


 なぜ他の物ではなく、リモコンだけが神隠しに遭うのか。その原因は未だに解明されていない。私の無意識が、操作されることへの拒絶反応を示しているのか、あるいはリモコン自体に意志が宿り、束の間の自由を謳歌しているのか。


 原因は分からない。けれど、手元に帰ってきたという事実は揺るがない。

 久しぶりに再生した録画番組の中では、よしもと新喜劇のすっちーが、今日も軽やかに舞台を跳ね回っている。


 失われた一ヶ月の空白を埋めるように、私はその光景を眺める。

 相変わらず私の世界の秩序は危ういけれど、とりあえず録画が見られるのなら、今はそれで良しとしよう。

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