第四章:興隆(序盤)
第四章:興隆(序盤)
――《黎明の騎士団》初陣――
初陣の朝、空は重たい曇りだった。
《黎明の騎士団》――結成からわずか三週間。
装備は粗末、戦術も荒削り。けれど、全員に共通していたのは「守りたい」という気持ちだけだった。
「標的は南の森を根城にする盗賊団“赤爪”。10人前後、軽装。奇襲と火計が主な戦法だ」
俺は地面に描いた地図を前に、若者たちを見回した。
「この村を襲った連中とつながってる可能性もある。だが今回の目的は“討伐”じゃない。“追い払う”だ」
「生きて帰れ。誰ひとり欠けるな。それが、俺の命令だ」
全員、頷いた。目の奥に、燃えるような緊張が宿っていた。
森の中、湿った空気の中で張り詰めた静けさ。
小林が仕掛けた簡易の警報罠が“カシャン”と鳴った瞬間、戦闘が始まった。
敵は確かに経験豊富だった。
だが、こっちは“仕組み”で戦う。
誘導→分断→囲み込み。
加納爺の幻術で敵の視界を乱し、火壺で退路を封じ、小林の作った“投石弓”で足止め。
若者たちは震えながらも、逃げる盗賊の背を追わなかった。
「逃げたやつは……俺たちが脅威になった証拠だ」
作戦は成功。
犠牲者ゼロ。軽傷者2名。全員、生きて帰った。
村に戻ると、広場には人が集まっていた。
年寄りが、子どもが、女たちが――心配そうに、でも、信じる目で俺たちを見ていた。
「ただいま戻りました。――《黎明の騎士団》、任務完了!」
その一言で、静寂が一変した。
「やったぁあああ!」
「兄ちゃん! 帰ってきた!」
「すげえ……本当に、守ってくれたんだ!」
拍手、歓声、涙、笑い。
俺たちは、初めて“領民に認められた”瞬間を噛みしめていた。
その夜。
俺は焚き火の前で、アリサに言った。
「やっと、“守れる力”を形にできた。次は……この力を、育てていく番だな」
「皆の目、変わってましたね。カリム様を見る目が、前と全然違う」
「怖くもあるな。期待って、重いもんだ」
「でも……その重さを背負ってるカリム様を、私は信じられる。だから――」
アリサは少し頬を染めて、小さく言った。
「ずっと、そばにいてもいいですか?」
火の粉が風に舞った。俺は笑って、頷いた。
「もちろん。そばにいてくれ。俺も、お前を必要としてるから」




