夢の狭間で交わる現実
不定期更新となりますがお楽しみください。
「夢月!ご飯できたよ!」
部屋の外から聞こえる母の声に呼び起こされ、夢月はハッと目を覚ました。頭はまだぼんやりしているが、胸の鼓動が激しく、何か恐ろしいものを見た感覚がじわじわと蘇ってくる。夢月は深呼吸をして落ち着こうとしながら、夢の中での出来事を思い出そうと目を閉じた。
――ただ思い出すだけで、肌が粟立つあの化け物。黒くねじれた形の、何とも言えない威圧感。まるで自分が餌にされる瞬間を待っているかのようだった。そして、その不気味な暗闇の中に現れた、神々しさすら覚える眩い光。その光の中から現れたのは……朝陽!
「そうだ!連絡しないと!」
夢月は弾かれたようにベッドから飛び起き、慌ててスマートフォンを手に取った。手は少し震えていたが、朝陽の言葉が頭の中で繰り返され、今伝えなければならないという気持ちに駆られていた。
勢いに任せて朝陽にメッセージを送ると、夢月は少し冷静になり始めた。
――夢の話で連絡を取るなんて、なんだか変に思われないだろうか?
一瞬、恥ずかしさがこみ上げてきたその時、スマートフォンの通知が鳴った。
画面を見れば、そこには朝陽からの返信があった。
「覚えてたんだな。詳しい話、できるか?」
夢月はスマートフォンの画面を見つめ、心がざわつくのを感じた。夢の中だけのはずだったあの恐ろしい存在が、どうやら現実の一部でもあるようだ。化け物が存在している、そんな事実を知ってしまった焦りが心の奥で波打ち、質問が次々に浮かんでは消えていく。しかし、実際に言葉にしようとすると、何も出てこなかった。
手が震えるのを感じながら、ようやくメッセージを打ち込んだ。
「できるよ。まずあの化け物について教えてほしい。あれはなんなの?」
メッセージを送った後、夢月は自分に言い聞かせるように深呼吸をした。これさえわかれば、きっと解決できる。そんな風に自分を励まし、なんとか落ち着かせようとした。
朝陽からの返事を待つ間、夢月は内心で答えを急ぎ求めていた。現実と夢がどこで繋がってしまったのか、そしてあの化け物が一体何者なのか――知るべきことはまだ山ほどあるように思えたが、まずは朝陽の言葉を待つしかなかった。
「渡したいものもあるから直接会えるか?」
朝陽からのメッセージが届いた瞬間、夢月はすぐに会いに行くことを決意した。幸い、小学校からの幼馴染である朝陽の家は歩いてすぐの距離だ。
「今からそっちに行くね。」
そう短く返信し、スマートフォンをぎゅっと握りしめる。頭の片隅に、あの化け物の姿が浮かんでは消え、胸が焦りでいっぱいになった。急ぐ気持ちが抑えられない。
「ちょっと朝陽と会ってくる!」
母にそれだけを伝え、夢月は家を飛び出した。制服のままだということにも気づかず、ただ一刻も早く朝陽のところへ向かうべく走り出す。気持ちが焦るほど足も自然と速くなり、心の中で自分に問いかけていた――あの化け物の正体、そして朝陽が渡したいと言っているもの。それが今の自分にとってどれほど重要なのか、夢月には感じ取ることができた。
これで、序章が終わります。ここまでお読みいただきありがとうございます。この後の話も楽しんでいただけると幸いです。