夢の余韻は静かに消えて
不定期更新となりますが、お楽しみください。
「おい!起きろ、夜久!いつまで寝てるんだ、まったく……」
ぼんやりとした意識の中で、夢月は周囲を見回した。そこにはいつもの教室が広がっており、すでに授業は終わっていた。
目の前には、呆れ顔の担任教師が立っていた。
「授業はもう終わったぞ。学校で本気で寝るなよ、まったく。」
(あれ、なんか、嫌な夢を見てた気がするけど……なんだったっけ?)
夢月は考えようとしたが、記憶の断片は霧のように消えていく。思い出そうとすればするほど、掴めそうで掴めない。
「おい、聞いてるのか?うなされてたみたいだし、何か悩みがあったら早めに相談しろよ。」
担任はそう言い残すと、教室を出て行った。静けさが戻った教室で、夢月は再び考え込んだ。
(どんな夢だったんだっけ。誰かと話してた記憶はあるんだけど……)
少しの間、思い返そうとしたが、結局答えにたどり着くことはなかった。
「まぁ、所詮は夢か。覚えてないなら仕方ないし!とりあえず帰る準備でもするか!」
夢月は誰もいない教室で独り言をつぶやき、帰る準備を始めた。
その様子を見守る影があった。教室の隅に立つその影は、静かにため息をつく。
「やっぱり覚えてるわけないか……。あそこまで意識がはっきりしていたのは初めてだったから、ひょっとしたらと思ったんだが……無理だったか。」
影はそうつぶやくと、その場からゆっくりと消えていった。まるで、何事もなかったかのように。
読んでいただきありがとうございます。感想をいただけるとありがたいです。更新(5月19日)