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夢幻  作者: 小枝の小指
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調査

ご覧いただきありがとうございます。

「ふたりとも!遊んでないでそろそろ行くよ!」

 円が鋭く声をあげると、追いかけっこを続けていた二人はやっと動きを止めた。


「しょうがないか。今日は夢月さんがいることだし、そろそろ行きますか。」

 山田は肩をすくめながら皆に声をかけ、山へ向かって歩き出した。


「円さん、この山には何がいるんですか?何を調査しているのかもわからなくて……。」


「おぉ!ほんとに何も知らないんだねぇ!」

 円は驚いたように目を丸くしながら、楽しそうに説明を始めた。


「まず、この山に関してだけど……タッツェルヴルムっていうのが今のところ一番危ないかな?見た目は蛇みたいな体に、頭は猫みたいな感じ。でも、かわいいかって聞かれると微妙だね。足も生えてるし、むしろ不気味って言ったほうがしっくりくるかも。


 調査についてはね、この山がどれほど危険かを確認するためなんだよ。この山は霧がすごくて、今までまともに調査できなかったんだ。他の山や森、砂漠のほうが比較的安全で調査もしやすかったからね。でも、結局どこも千年近くかかってるし、早いとは言えないんだけど……。それに、この世界のヤバい奴らが多すぎて、調査不可能なエリアもまだまだ残ってる。それでも、ついに他の場所の調査が終わりに近づいてきたから、今まで後回しにしてたこの山の攻略を始めることになったってわけさ。」


 円の解説を聞きながら、夢月は自分たちが未開の地へと足を踏み入れようとしていることを実感し、じわじわと不安な気持ちがこみ上げてきた。


「まぁ安心しなよ。今日は山田もいるし、私たちは奥までは行かない。さっき言ったタッツェルヴルムも、運が悪くなきゃ出てこないさ。」

 円は夢月の表情を見て、不安を和らげるように付け加えた。


「よし、やっと着いたな。」

 先頭を歩く山田が立ち止まり、後ろのメンバーに声をかける。


「さぁ、これから山に入るぞ。一応、気を引き締めていけよ。」

 円が真剣な表情で夢月に注意を促す。


「分かってます。」

 夢月は短く答え、円は満足そうに微笑んだ。


「そういえば、朝陽君も今日は大人しいね。」

 円が朝陽に声をかけると、彼はすでに疲れ切った表情でため息をついた。


「前回も出しゃばったわけじゃないんで、今回こそ何もする気ないですよ。」


 夢月とは違う強い決意を持つ朝陽の様子に、円は苦笑しながら山田に視線を向けた。そして、調査隊はついに森へと足を踏み入れた。


 ――――


「さぁ、夢月ちゃんたちはここでドームを作って待っててもらおうかな。何かあったらすぐに伝えに来るから、帰る準備だけしておいてくれればいいよ。」


 森に入ってしばらく歩くと、25メートルプールほどの開けた場所にたどり着いた。周囲を見回すと、木々が高く生い茂り、薄暗いが比較的安全そうな雰囲気がある。


 山田の言葉に頷きつつ、残るメンバーを確認すると、夢月、朝陽、円のほかに二人が残ることになった。残りの隊員たちは、山田と共に山奥へと向かう準備を始めている。


「よし、一旦ここにドームを作ってもらおうかな。夢月ちゃんの実力も見ておきたいし、一回やってみてよ。」


 山田が興味深そうに夢月に目を向ける。夢月は深呼吸し、開けた場所に手を向けた。


 瞬間、空間が歪むようにして、巨大な半球状のドームが形成された。広大な空間をしっかりと覆い尽くし、その精度とスピードに驚きの声が上がる。


「ははは!これはすごいねぇ!」

 山田が感嘆の声を上げ、ドームの表面を手で撫でながら笑う。


「色々と直すところはあるけど、まだ夢の世界に来てそんなに時間が経ってないんだろ?大したもんだよ!あぁ、僕が残って手取り足取り教えたいくらいだ。」


 山田は夢月の実力に興奮したのか、ぐっと距離を詰めてくる。その勢いに思わず後ずさる夢月だが、山田はどんどん迫ってくる。


「やめなさいよ、山田は森の奥まで行くんだから。私が教えておくから、早く準備しなさい。」


 円が軽く山田を制すると、彼は少し落ち込んだような表情を見せながら、しぶしぶ準備に戻っていった。


「にしても、すごいわね、夢月ちゃん。私でもここまでのものはすぐには作れなかったわよ。」

 円が感心したようにドームの壁をノックする。


「だよね!よかったぁ。俺の才能がなさすぎるんじゃないかって、ずっとヒヤヒヤしてたんだよ。」


 円の言葉に、これまで静かにしていた朝陽が急に元気になって話しかける。どうやら、夢月の実力を目の当たりにして、少し気が楽になったようだ。


 そんなやりとりが続く中、ついに山田たちの準備が整った。


「よし、そろそろ行ってきますかね。」


 山田は夢月の作ったドームに手を伸ばし、何事もなかったかのようにドームを一瞬で消し去った。まるで紙を破るかのように容易く消滅させたその光景に、夢月は息を呑んだ。

お読みいただきありがとうございます。次回もよろしくお願いします。

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