提案
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「お二人さんや、少し話があるんじゃが、いいかのぉ?」
孝晴がそう声をかけると、夢月と朝陽は手を止め、彼の方へと視線を向けた。
「夢月ちゃんのドームや成長速度を見てのことじゃが、簡単な依頼をこなしてもらおうと思うんじゃ。バイト代も出すから、どうかのぉ?」
その申し出に、夢月は驚いた表情を浮かべた。突然の依頼に少し不安そうな顔をする彼女を見て、孝晴は笑いながら付け加えた。
「まぁ安心せい。朝陽のサポートという形で進めるし、他の者にも手伝ってもらうからのぉ。危険なことはほぼないと思ってよいぞ。それに、これは想像力の操作の練習にもなるんじゃ。」
夢月は少し考え込んだが、やがて大きく息を吸い込み、決意を固めたように頷いた。
「分かりました!やらせてください!」
力強く返事をする夢月とは対照的に、朝陽は微妙な表情を浮かべ、渋々と口を開いた。
「それって……俺も夢幻隊の活動に正式参加ってことですよね。今みたいなパトロールくらいがよかったのになぁ。」
「何を言っておる。いずれは正式に活動に加わるんじゃろう?良い機会だと思って参加せんかい。まったく、夢月ちゃんを見習ってほしいもんじゃのぉ。」
孝晴は呆れたように肩をすくめたが、朝陽はなおも納得のいかない様子でため息をついた。
そんなやり取りの中、夢月は再び想像力の操作の練習に戻った。それを見ていた朝陽は、ふと孝晴に尋ねた。
「で、じいちゃん。まずはどんな任務に行くんですか?じいちゃんが無計画に提案するとは思えないし。」
「うぅむ、そうじゃのぉ。本当に簡単なものから始めるつもりじゃ。まずは夢の世界のパトロールからじゃな。まぁ、パトロールとは言っても、あの山奥じゃがのぉ。」
孝晴が指さした先には、濃い霧に包まれた巨大な山がそびえ立っていた。
「えぇぇ!?そんな嘘だ!あそこって結構危険って聞きますよ!?」
朝陽は驚き、思わず声を上げた。その様子に夢月は不思議そうに首を傾げる。
「え?山でパトロールってそんなにヤバいことなんですか?」
現実でも山には熊や猛禽類などの危険が潜んでいることは知っていたが、朝陽の叫び方を見る限り、それ以上の何かがあるのだろうか。
「まぁ、正直に言おう。あの森は少々危険じゃ。特殊な生き物がいることも確認されておる。しかし、夢月ちゃんに頼もうとしているのは、ドームの展開と維持による安置の確保じゃ。奥まで進むわけではなく、調査隊と同行して森の入り口付近でドームを張る。それだけのことじゃ。」
孝晴の説明を聞き、朝陽は少しだけ安堵の表情を浮かべた。
「調査隊の一部だけが奥まで進み、戻ってきたらドームを解除して一緒に帰ってくる。それだけじゃから、安全面も調査隊が保証してくれるし、ドームの展開中に色々と指導も受けられるじゃろう。万が一のことがあったら、目を覚ませば済む話じゃしの。」
「なんだぁ。山のパトロールって聞いたから、山の奥まで連れて行かれるのかと思ったよ。」
ほっとした様子で息をつく朝陽。一方、夢月は興味津々といった様子で孝晴に質問した。
「あの山には何があるんですか?」
孝晴は意味深な笑みを浮かべた。
「それは、調査隊に聞いてみるのが一番じゃ。明日になればわかることじゃしのぉ。」
「え、明日!?」
驚きの声を上げる夢月と朝陽。しかし、孝晴は二人の反応など意に介さず、ひらひらと手を振ると姿を消してしまった。
「まじかよ……。」
朝陽はがっくりと肩を落としたが、夢月はすぐに気持ちを切り替え、目を閉じて精神を安定させながら起床する準備を始めた。
消えゆく意識の中、夢月は最後に、
「あのじじい!!!」
と叫ぶ朝陽の姿を思い浮かべて、思わず小さく吹き出したのだった。
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