不安の種
いつもお読みいただきありがとうございます。夢の世界が本格的に始まりますのでお楽しみください。
夢月はふと気づくと、再び平原に降り立っていた。
「お、戻ってこれたかな?」
夢月は周囲を見渡しながら、さっきまでいたはずの朝陽と孝晴の姿を探した。
「あれ、二人はどこかなぁ?」
起きる前に近くにいたはずの二人がいないことに疑問を持ちながら、あたりを歩き始めた。そのとき、少し離れた場所でドームの近くを歩く人影を見つけた。
「あれ、朝陽や孝晴さんじゃなさそうだな。誰だろう?」
その人物は白衣を身にまとい、朝陽たちとは明らかに雰囲気が違っていた。夢月は警戒しながらその様子をうかがっていると、白衣の人物はドームにそっと手を触れた。すると、そのまま吸い込まれるようにしてドームの中へと入っていった。
「ドームに入った?彼は何者?」
夢月がそうつぶやいた瞬間、ドームが光の塵となって消えていった。そこには、先ほどの白衣の人物が立っていた。
その人物はゆっくりと振り返り、夢月と目が合うと、にやりと笑い、そしてそのまま姿を消した。
「なんだったんだろう……。」
夢月はその異様な光景に呆然としていた。すると、背後から聞き慣れた声がした。
「おぉ、ここにいたんじゃのぉ。」
「ふぅ、探したぞ。寝るたびにどこに降り立つかわかんないから大変なんだよなぁ。」
少し息が荒い朝陽を見るに、彼がかなり飛び回って探していたことがわかった。
「毎回そんなに探し回っているの?」
「いや、慣れてくると大体の場所を指定できるんだよ。ここらへんの景色とかを覚えておけば、その近くに降り立てるって感じなんだが、これまた最初は難しい。まぁ、少しずつやっていこうな。」
やっとの思いで夢の世界に来られた夢月にとって、次々と積み上がる課題にめまいがした。
そんな夢月は、ふと今目の前で起きたことを思い出した。
「そういえば、今、白衣の人がドームの中に入っていったんだけど……そんなことって可能なの?」
夢月の疑問に、孝晴の気配が変わった。
「どこのドームじゃ? そいつが入ったドームとは。」
突如として張り詰めた空気に、夢月は背中に冷や汗が流れた。
「いや、すぐにドーム壊れちゃって……そのあと、いなくなったんだけど。」
「なるほどのぉ。分かった、白衣を着ていたんじゃな?」
孝晴の質問に、夢月は頷いて肯定した。すると、朝陽が口を開いた。
「俺らみたいな者は、基本的に他人の夢に関わっちゃダメなんだよ。夢月のときみたいに、ドームが壊れかけていたり、危険が迫っているとき以外はな。だからじいちゃんは、そいつが良くないことを企んでいるんじゃないかと考えたわけだ。」
朝陽の説明を聞きながら、夢月は胸の奥に小さなざわめきを感じた。確かに孝晴の反応には理由があるのだろう。だが、それ以上に、さっき目が合った白衣の人物の笑みが頭から離れなかった。
ぞくりと背筋が冷える。あの笑みには、ただの偶然や善意とは思えない、何か底知れぬ意図を感じた。
「……本当に、ただの偶然だったのかな。」
ぽつりと漏らした言葉に、朝陽が「どうした?」と首を傾げる。だが、夢月自身もそれを説明できるほど、まだ気持ちを整理できていなかった。
「ううん、なんでもない。」
そう言いながら、夢月は改めて夢の世界の奥深さと、この場所に潜む未知の存在を意識し始めた。
「まぁ、切り替えて何回か起きてみようか。」
お読みいただきありがとうございます。不定期更新ではありますが今後ともよろしくお願いします。




