儀式
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「よし、良い感じだな。ついてきてくれ」
朝陽は、外気浴をして落ち着いている夢月に声をかけ、屋敷へと足を向けた。
「ちょっと!早いって!」
慌てて夢月は朝陽の後を追う。
屋敷の中へと進むにつれて、通路は次第に薄暗くなり、やがて長い廊下が続いていた。歩けば歩くほど、ひんやりとした空気が肌を刺し、静寂が辺りを包む。
「ねぇ、これってどこに向かってるの?」
不安を感じた夢月は、朝陽に問いかけた。
「あぁ、この屋敷の地下に向かってる。傾斜が緩やかだから、気づきにくいかもしれないけどな。」
知りたかった答えとは微妙にずれていたが、突っ込む余裕もなく、夢月は怯えながら進んでいった。やがて、広々とした部屋にたどり着く。
「おぉ!夢月ちゃんや!やっとこさ来たか!」
孝晴が満面の笑みを浮かべ、手を振っていた。
だが、夢月の視線は孝晴よりも、部屋の異様な装飾に釘付けになっていた。壁には等間隔に燭台が並び、柔らかな炎がゆらめいている。和風とも洋風ともつかない独特な意匠が施され、どこか現実離れした雰囲気を醸し出していた。部屋の中央には畳の上に敷かれた大きな絨毯があり、まるで儀式の場のようだった。
「ここで何をするの?」
胸のざわめきを抑えながら、夢月は恐る恐る尋ねた。
「驚くのも無理はないかのぉ。だが安心せい——いまから精神体と肉体の分離を行う。」
「精神体と……肉体の分離?」
思わず夢月は言葉を繰り返した。
「聞いただけでは恐ろしいかもしれんが、これは夢の世界で自在に動くための大切な訓練じゃ。精神体を安定させることで、ドーム無しでも夢の世界を歩けるようになるんじゃよ。この絨毯の上で眠るだけでよい。そうすれば、あとは夢の世界で鍛えるのみじゃ。」
孝晴は微笑みながら、絨毯を指さした。
夢月は一瞬迷ったが、これまでの流れからして逃げ道はないと悟った。
(眠るだけ……眠るだけ……起きたら何もかも終わってる……落ち着いて。)
自分に言い聞かせるようにしながら、ゆっくりと絨毯の上に身を横たえた。
「では、始めるかのぉ——」
孝晴の低い声が静寂の中に響いた瞬間、部屋の灯りがふっと消え、闇が支配する。
何やら孝晴が呪文のような言葉を唱え始めたが、夢月には聞き取れなかった。次第にまぶたが重くなり、意識が遠のいていく。
重力に引き込まれるような感覚。
暗闇の中に溶け込むような感覚——。
そして、夢月の意識は、ゆっくりと深い眠りの中へ沈んでいった。
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