呪われ悪役令嬢――救ったのは王子じゃなく騎士団長の息子だった
短編8作品目になります。呪いにかかった公爵令嬢のお話です。宜しくお願い致しますm(__)m
氷の微笑を浮かべる公爵令嬢のレイアは、 “悪役令嬢”と呼ばれている。
肌の色が白く、手入れをされた肌も髪も艶やかで美しい。髪はハチミツみたいに艶やかだし、顔も小さくてクリっとした目が印象的な美人なのにだ。
「この役立たず!お茶の用意が遅い!出ていけ!」
レイアの声が広間に響いた。
メイドは涙目で部屋を飛び出していく。
(また……また言ってしまった)
廊下で囁く声が聞こえてくる。
「あの公爵令嬢、本当に恐ろしい」
「美しい顔が台無しだ」
誰もレイアに近づかなくなった。すれ違う者は皆、目を逸らす。
でもこの状況は、最初からではない。
(なぜ、こんなことに……)
レイアがうつむいていると、第二王子のシャンルがルプルを連れてやってきた。
「おいレイア!ルプルをいじめているそうだな!」
レイアはシャンルの婚約者だ。でも、シャンルはルプルを可愛がっている。
「先日は、ルプルの頬を扇で叩いたと聞いたぞ!」
「……あまりに憎々しかったので」
言いながらレイアは顔を歪めた。
シャンルの腕に抱きついたルプルは、震えながら涙を流している。
「私、レイア様が恐ろしくてたまりませんわ」
「大丈夫だ。ルプルのことは僕が守るから。レイアは以前から腹黒いところがあると思っていたんだ。いつも僕がすることを咎めるように見ているし。皆の前ではうまく装っていたようだが、ルプルが現れたことでやっと本性を出したのだな」
(私のことをそんなふうに思っていたなんて……)
いつも優しいと思っていたシャンルの言葉にレイアは愕然とした。シャンルを心から愛していた。
――半年前にルプルが現れてから状況がおかしくなった。
隣国からキレイな令嬢が留学してきたと話題になり、レイアもルプルを見た時になんてキレイな令嬢だと思った。
だが、ルプルはシャンルとレイアの前に姿を多く現すようになって、シャンルに積極的に接触を図るようになった。
最初は、シャンルも相手にしなかった。だけど、時間の経過とともにルプルに構うようになっていった。
それは、レイアが暴言を吐くようになったから……。
――ある日、ルプルに“シャンル様のことで話がある”と言われて、彼女の部屋を訪ねた。
彼女は特別留学生だから城に部屋が用意されており、用心などしなかった。
でも、それが間違いだった。
(あの時、部屋に行かなかったら……)
レイアがルプルの部屋に入ると、いきなり身体がソファに突き飛ばされた。
赤黒いモヤが身体を取り巻き、拘束されていく。動けず声も出なかった。
「訪ねてきてくれてありがとうね。……で、どこがいいかなあ?見つかりにくいところがいいわよね」
ルプルがレイアの身体を舐め回すように見た。遠慮なく胸元の布を引っ張ると、胸元を覗き込んだ。
「あんた、胸が大きいわけじゃないし印が隠せなさそう。じゃ、下かな」
ルプルは、ドレスの裾を容赦なくまくり上げ、レイアの脚の付け根を見た。
目を見開いたレイアは抵抗したくともなにもできない。かすかに動く指先を握りしめた。
指をかざしたルプルは円を描く。すると、脚の付け根にチリチリと焼けるような痛みが走って、ドス黒い百合のアザができた。
「これはね、あんたが乱暴な言動をする呪い。あの王子、魅了対策されていて全くアタシに関心を持たないんだもの。だから、作戦変更。あんたが自滅すればいい」
(呪いですって!?)
とんでもないことを聞いて驚いた。
「あ、ちなみにこの呪いはね、誰にも伝えられないから。アタシにつながることももちろん言えない。言おうとすれば身体に激痛が走る。……シャンル、イケメンよねぇ?アタシも長く生きてるけどさ、久しぶりにいい男で気に入ったわ」
レイアを部屋から放り出すと、ルプルは目を細めてニヤリとして扉を閉めた。
(すぐにでもシャンル様に報告しないと!)
すでに拘束は解かれている。シャンルの執務室に急いだ。
「なにをノロノロと仕事してるんだい!」
思っていることと全く違う言葉が口から飛び出して、すぐに両手で口を塞いだ。心臓が早鐘を打ち全身が震える。
(こんなことを言いたいんじゃないのに!……これが呪いの力)
気を付けても悪口ばかりが口から飛び出した。
「どうしたレイア。君がそんな乱暴な言葉を言うなんて。疲れているんだろう?」
困惑したシャンルは、心配してくれたが……幾日もそんなことが続くと、温和なシャンルも次第にレイアに冷たくなった。
「……聞いていれば、口汚く何の罪もないルプルを罵ってばかり!ルプルが可哀そうだ!今後一切、僕とルプルの前に顔を見せないでくれ!その顔を見るだけで不快だ!」
愛していたシャンルに嫌われ、レイアは暗く深い穴に放り込まれた気持ちになった。
あまりに辛くてレイアは教会で祈ることが日課になった。
呪いのことを話せない。だから、付けられた印を両親に見せようとドレスの裾をまくり上げようとしたら、“はしたない!”と部屋を追い出された。
呪いは文字を書くことにも影響を与えていてどうしようもない。
教会で祈る日々が続いた。
(もう……限界かも……)
教会通いをするレイアを知る人は、悪態をつくくせに何を祈るのだ、と蔑んだ。レイアは独りぼっちだった。
――そんなある日、レイアは教会でひざまずき、一心に祈っていた。
「涙が……これを使って下さい」
一人の男性に声を掛けられた。最近はレイアに声を掛ける者などいなかったから、レイアはもじもじとハンカチを受け取った。
声の主は、騎士団長の息子のライブだった。
ライブは侯爵の嫡男で恵まれた体躯に、優れた剣術と見た目の良さで評判の貴公子だ。
直接、ライブと言葉を交わしたことは無かったが、シャンルの良い臣下になるだろうと思って覚えていた。
レイアが頭を下げると、ライブが目を見開いた。
「その……普段のあなたとは様子があまりに違うから声を掛けてしまいました」
(普段は乱暴な私が涙を流しているから驚いたのね)
ライブはためらうように言った。
「あの……ルプル令嬢が現れる前、あなたは心優しい人であったはずです。彼女が憎いのは分かりますが、横暴な振る舞いでは人が離れていくばかりです。憎しみで自暴自棄にならないで下さい」
(私は……!呪いに掛けられているだけなのよ)
本当のことを伝えたくなった。
でも、口を開き、呪いについて言及しようとすると、途端にノドが締め付けられて苦しくなった。
「はあっはあっ」
「大丈夫ですか?……ノドが乾いているなら水を持ってきます」
ぶんぶんと首を振る。
「余計なことでしたか……話しかけてすみませんでした。ではこれで」
(違うの!)
去ろうとする彼の服を思わず掴んだ。
「……?もしや体調が悪いのでしょうか?」
ライブは眉をひそめつつも、もう一度ていねいに尋ねてくれた。その眼差しには心配する気持ちが現れている。
(……この方なら、もしかしたら私のことを……)
胸の奥で、小さな希望が灯った。
一瞬、ためらったが、レイアは彼を教会の外へと連れ出した。
「ちょっと、レイア嬢……、どこへ連れて行こうというのです?」
腕を掴まれて止められる。
(どうしよう。どう伝えれば)
声が出せないということを、自分のノドを指して両手でバツとしてみた。
「声が出ない……ということですか?」
レイアはうなずいた。
「では急ぎお屋敷に戻り医師に診てもらわねば……」
屋敷に戻るのはダメだと、またバツをした。悪態をつくようになってから屋敷に帰ると、お説教タイムが始まってそれどころじゃなくなる。
「戻るのはダメ、なのですか?」
うんうん。
レイアは再びうなずいた。
「……では、オレの屋敷にお連れしましょうか?」
王子の婚約者としてさすがにマズイ。バツをつくった。
「……その、もしかして人に聞かれたり、見られたりしたらマズイということでしょうか?」
うんうん!とレイアがうなずいた。
「やはりそうですか!では、ここでゆっくりとしているのもマズイわけですよね?とりあえず馬車に乗りましょうか」
察しのよいライブはレイアの家の馬車を返すと、自分の馬車にレイアを乗せた。御者に小高い丘へと進むように告げる。
「筆談はどうですか?」
ライブは軍服の内ポケットからメモと鉛筆を取り出した。
(直接的な言葉でなければ、文字は書けるわ)
レイアは鉛筆を握ると書き記した。
≪悪役令嬢は自分の意思ではありません≫
ギリギリの言葉だ。これ以上踏み込んだ内容を書くと、全身を刺されたような激痛が襲ってくる。
「え……それはどういうことですか!?まさか誰かに呪われているとか……?」
“呪い”という言葉を聞いた途端、身体が激しい痛みに襲われた。あまりの痛みにレイアは両手で身体を包むようにしてうずくまる……
――気付くとレイアは見慣れない部屋のベッドで寝ていた。
「大丈夫ですか?」
ライブの声だ。様子を見守ってくれていたらしい。
「突然、意識を失ってしまわれて驚きました。慌てて近くの宿にあなたを連れてきたのですが……調子はどうでしょう?」
太陽が西に傾いている。倒れてから時間が経ったようだ。
(私が目覚めるまでずっとそばにいてくれたということよね)
レイアは深く息を吸ってから半身を起こすと、布団をまくった。
「もう起きても大丈夫なのですか?医者を呼んでこようかと考えていたのですが……って、何をしているのです!」
レイアは自分のドレスの裾を大胆にまくり上げていた。
(印を見たら……言わなくても理解してくれるはず)
とても恥ずかしいが、呪いの印を見せねば理解してもらえないと必死だった。
「あ、あの!オレは殿下に仕える身でありまして、あなたと決してそのような関係になるわけには……!!」
ライブは勘違いしている。手をばたつかせ騒いでいた。
(勘違いしても無理もないわ)
「オ、オレは外に出ていますから」
立ち上がろうとしたライブをレイアは必死につかんだ。誘惑しているのではないという意味を込めて首を振る。
「レイア嬢……?」
彼の腕を掴んだまま、もう一度、ドレスの裾を太ももまでまくり上げると、ライブは顔をできる限りそむけた。
「おやめください!いくら殿下がほかの令嬢に夢中だからと言って、オレを誘惑するなんて!」
ライブは目をぎゅっと閉じたまま、身体を硬くしていた。
(……この方、本当にとても良い人。ずるい人ならば抱きつこうとしてもおかしくないのに)
レイアは優しくライブの顔に手を伸ばした。ライブはビクリと体を震わせる。
向かい合う形で静かに座ると……レイアはゆっくりと股をひらいた。
硬く目をつむるライブをつつくと、彼は反射的にわずかに目を開ける。
すかさず自分の脚の付け根を指さした。必死に……。
(死ぬほど恥ずかしい!……でもこれを見てもらわなくちゃわかってもらえない)
レイアも意地だった。
「……は!それは!」
ライブの視界にやっと印が入ったらしい。反応があった。
「それは呪いでは……」
“呪い”と言葉を聞いてレイアは胸を激しくしめつけられる。呪いに関する言葉は、レイア自身が言葉に出さなくても自分を苦しめる。
慌ててライブは口をつぐんだ。
「……これは先ほどあなたが“悪役令嬢は自分の意思じゃない”ということとつながることですよね?」
レイアは涙ぐみながらうなずいた。
「ひどい勘違いをしてしまい、申し訳ありませんでした」
レイアは首を振った。
「あなたがそれのせいで全く異なる発言をしていたということでよいのでしょうか?」
レイアはうなずく。
「そして……このことは誰にも言えない、ということですよね?」
レイアは力強くうなずいた。
(ライブ様は私のことを理解してくれた……!)
肩の力が抜けて涙をボロボロと流すと、ライブは唇を引き結び立ち上がった。
ひとまずレイアを屋敷まで送り届け、ライブはそのまま王宮へと急いだ。今起きている事態を王に報告するつもりだった。
王宮に着くと、ルプルの肩を抱いて楽し気に庭を歩いているシャンルを見かけた。拳を握りしめる。
(レイア嬢は呪いを掛けられて苦しんでいるというのに……)
ルプルが現れてからレイアの態度が変わったところを見ると、ルプルが怪しい。
(自分の婚約者が急におかしくなったのに、なぜ楽しそうにしている?おかしな妖術をかけられているのだろうか。一刻も早く王に報告せねば)
ライブは王に急ぎ面会を求めると、王はすぐに会ってくれた。王はライブを気に入っていた。
「一体どうした?」
「陛下、どうか人払いをお願い致します」
「お前が慌てるとは相当、急ぎらしいな」
ライブは王と二人になると、レイアのことを細かく話した。呪いの場所を伝えるのに冷や汗をかいたが……。ルプルが怪しいということも告げる。
「レイアの脚の付け根に呪いの印だと?」
「はい。わざと人の目に触れにくい場所を選び、印をつけたのでしょう」
「……なぜ、レイアはお前に見せたのだ?シャンルではなく」
「この頃のシャンル様の隣には……ルプル嬢がいますから」
「最近、シャンルが入れ込んでいるという者か。もし、その者が原因ならば急ぎ正体を調べなければならぬ」
王が命じると、ただちにルプルの情報があがってきた。
不思議なことに、彼女を知る者は誰もおらず、存在しない人物であることがわかった。
レイアの元に女医をやって脚の印を確認させると、百合の形からかつて王族にかけられた呪いと同じだということも明らかになった。
「ルプルは魔女だな。間違いない。賢いシャンルをおかしくしているのも魔女のせいだろう」
ライブは魔女をどう排除すればいいか、ひたすら調べ続けた。
――そして、今、王の間では物々しい雰囲気に包まれている。
レイアたちはもちろん、多くの貴族が呼ばれ、レイアたちの両親もいた。
王が王座から立つとシャンルに尋ねた。
「シャンル、お前の愛する者は誰だ?」
「それはもちろん、ルプルです」
「お前の妃となる者はレイアではないのか?」
「間違ってもそのようなことはありません」
シャンルの迷いのない言葉を聞いて、レイアは顔を伏せた。
「ルプル、お前は隣国からの留学生だといったな。だが、隣国にはそんな者はおらん」
「……それは勘違いでしょう。あの国はいい加減なのです」
「勘違いではない。白々しいことも言うな。……お前は妖術を使って人を操ったのだ。そういう人物が元からいたようにな」
彼女の留学に関する書類はそろっている。妖術をつかってうまく用意したのだろう。
広間は王から“妖術”という言葉が出てざわめいていた。
シャンルは口を半開きにし、困惑した顔を見せている。王はじっと、シャンルの様子を見て言った。
「シャンルの様子を見るに、お前は妖術にはかかってはいないな。お前は自分の意思でルプルといたということだ」
王は玉座に座り込むと、視線を天井や空に向けた。
「がっかりさせおって……。魔女よ、シャンルの心を手に入れて満足か?」
「私は魔女ではありません! シャンル様、王はどうされたのでしょう?」
「父上はきっと考え違いをしてらっしゃるんだ。父上こそどうされたのですか!」
王はため息をつくと、広間の中ほどで控えていたライブに手を振った。
ライブはルプルに素早く近づくと、問答無用で剣を振り下げた。
「ぎゃっ」
ライブの剣攻撃をまともにくらったルプルは倒れたが、人間なら流すはずの血が流れず黒いモヤが立ち込めた。
「わわわ……」
シャンルは尻もちをついている。
「おのれ……!いきなり剣を振り下ろすとは。姿の維持ができなくなったぞ!!」
黒いモヤの中からシワシワの肌に白髪の老婆が現れると叫んだ。
シャンルは老婆の姿を見ると、床を這って逃げていく。
「どこへ行く!大人しくしていろ!お前は私のものなんだから」
魔女は長い爪でシャンルの首元を引っかけるとヒョイと自分の横に置いた。
「ひぃ……」
シャンルは失禁し、白目を向いて気を失ってしまった。
「おやおや情けないねえ」
気を失ったシャンルが魔女のすぐ隣にいる。
(殿下が側にいると攻撃できないぞ……)
ライブは剣を構えながら睨む。
「姿を維持できなくともお前らを攻撃するくらいの魔力は残っているぞ。でも、シャンルが悲しむだろうから、止めておいてやろうかねえ」
魔女がニヤリと笑った。
「帰ったら記憶を操作してやらないとね。それにしても美しい顔だ」
魔女はシャンルの顔を見て瞳を潤ませている。心の底からシャンルが気に入っているようだ。見た目だけだろうが。
――この時だ!
ライブは隙をついて大きく跳躍した。
「お前は物理攻撃に弱いだろ!」
右肩から体重をかけて斜めに大きく切り下げた。
(先ほど切りつけた時は手ごたえが無かったが、今度はしっかりと肉を断つ感覚があったぞ)
赤黒い血があたりに飛び散った。
魔女はシャンルを放り投げるとその場に倒れ、先ほどよりもものすごい量の黒いモヤが立ち上る。急いで使用人たちが窓を開け放つと、モヤは窓の外へと消えていく。
モヤが全て消えた時には赤黒い血も全て消えていた。
シャンルは手当のために連れて行かれた。
王は貴族たちを退出させると、レイアたちの前で口を開いた。
「レイア、もう普通に話せるか?」
王の言葉にすぐにでも答えるべきだと思いながら、失礼な言葉を吐いたらとレイアは声を出せずうつむく。ライブが言った。
「心配ならばまずはオレに話してみてくれ」
レイアは頷いて、おそるおそる口を開いてみた――
「……ライブ様、色々とありがとうございました……あぁ、普通に話せます!」
普通に話せるように戻って涙が止まらなくなった。
「呪いがとけてよかったな」
「陛下、心配をおかけして申し訳ございませんでした。数多くの無礼もどうかお許し下さいませ」
レイアが深々と頭を下げると、両親がすりよってきた。
「レイア……すまなかった!お前が呪われていたとは」
何度も“呪い”について伝えようとしたのに、理解しようとしなかった両親が恨めしい。
(……でも、呪われている間の私の態度はひどかったものね)
割り切ることにした。
「ご心配おかけしました。でも、これからは私の意見をきちんと聞いてくださらねば、家出いたしますわ」
「家出?とんでもない。絶対に聞いてあげるから」
相変わらず両親は調子がいいと思った。
――扉が開いた。
急いで入ってきたのはシャンルだ。着替えを済ませ、小ぎれいな恰好をしている。
「レイア!僕は洗脳されていたんだ!」
近寄るなり、手を掴む。
(痛いわ)
かつて愛したシャンルは自分のことを釈明しようとして、握る力にも配慮できないみたいだ。手をゆっくりと振り解いた。
「レイア、なぜ手を離すんだ!僕たちは愛し合っていたじゃないか!」
「確かに少し前まで私は、シャンル様を心から愛していました。……ですが、おっしゃったではありませんか。私が腹黒いと。私はもう、シャンル様の側にいるべきではありませんわ」
「それはだから魔女のせいだ!僕たちは一緒になるべきだろう!?」
シャンルは優秀だといわれており、国の将来も安泰だと言われていた。でも、アッサリと魔女に操られたのだ。名誉挽回しようと必死である。
「シャンル、見苦しいぞ。レイアの顔を見てみろ。呆れているのがわからないのか?お前が呪いに気付いていれば、こんな事態にはならなかった。罪は重いな」
王が渋い顔をして言うと、噛みつくようにシャンルが言い返した。
「魔女に洗脳されていたから仕方ないんですよ!僕のせいじゃない!」
「洗脳されたとしてもそのような隙をつくること、そしてその甘ったれた精神……気に入らん。お前はしばらく北の塔で謹慎する必要がある。いろいろと学び直せ」
シャンルは、膝から崩れ落ちた。
「そんな、優秀な僕が……父上は僕のことがお好きなのに」
引きずり出されていくシャンルをレイアは冷めた目で見ていた。
「レイア、息子が迷惑をかけたな。すまない」
「いえ、もったいないお言葉です。私は陛下の賢明なご判断により元の自分を取り戻せました」
「いや、ライブに感謝するべきだ。ライブが呪いのことを知らせてくれたのだからな」
王に言われてライブを見ると、彼と目が合った。
「レイア嬢、本当に良かった」
「ライブ様、あなたにはどうお礼を申し上げたらよいか……」
彼らを見て、王はなんとも言えない気持ちになった。
突然、ライブが王に向かってひざまずいた。
「陛下にお願いがあります!」
「何だ?」
「レイア嬢は殿下の婚約者ではありますが……どうか私にもレイア嬢に求婚する資格を与えては頂けないでしょうか?」
(やっぱり思った通りだ)
小さく頷いた。
「構わん。もうシャンルとはうまくいかぬだろうからな」
「ありがとうございます!」
ライブが王に深く頭を下げると、王が手を振った。
「レイア嬢、良かったらオレの妻になってもらえないでしょうか?」
「……はい、ぜひ」
王は若い二人の幸せそうな顔に目を閉じた。
レイアの両親も何も言わなかった。
――求婚した日の翌日、さっそくレイアとライブは馬車デートに出掛けていた。
「ライブ様がいなければ、私は生きるのが辛くて自ら命を絶っていたかもしれません。本当にありがとうございました」
「命を絶とうなどとは……二度とそんなことを言わないで下さい。あなたがオレを信じてくれたから呪いに気付けたんです」
「ライブ様は、信じられる方だと思いましたから」
「そんなに簡単に人を信じてはいけませんよ。オレだったから良かったものの……ところで、呪いの印はきちんと消えましたか?」
「ご覧になりますか?」
レイアがドレスの裾をそっと持ち上げる。
「いやいや、そこまでは!」
慌てて手を振るので、馬車ががたつく。
「ふふ……冗談ですわ」
レイアがイタズラめいた顔をすると、ライブは口を尖らした。
「案外、意地の悪いところがあるのですね」
「そうでしょうか?結婚したらきっと何度も目にするでしょうから、意地悪だとお思いませんわ」
途端にライブの顔が爆発しそうなぐらい赤くなった。
レイアはライブの肩にそっと頭を乗せる。
「これから宜しくお願いしますね。未来の旦那様」
レイアがライブに甘えて言うと、ライブはぎこちなく手を伸ばしてそっとキスしたのだった。
作品が“気になる&いいな”と思われましたら、ぜひぜひ、【ブックマーク&評価&いいね】をお願いします(*ˊᵕˋ )⁾⁾コクコク
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ただいま、「薬師マリーン姫の“運命”の人は誰?~旅に出たら答えが出ました!~」(https://ncode.syosetu.com/n5493je/)の連載中です。姫君が仲間と旅をしながら運命の人も見つけちゃおう!というお話になっています。こちらもどうぞよろしくお願いいたします(。˃ ᵕ ˂。)




