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冷たい雨の温度  作者: カキツバタ
3/3

3. 灰色―2

こんにちは!

私の作品にご興味を抱いて下さり本当にありがとうございます。

お話によっては残酷表現が含まれるかと思いますがその場合はお話が始まる前にお知らせ致します。苦手な方はご注意下さい。

上手に書けないのでお恥ずかしい限りですが、それぞれの解釈にて少しでも希望を受け取って頂けると嬉しいです。


ご感想やブックマーク等々頂けると飛び上がって喜びます!三日三晩踊り続けます!

私は心がお豆腐のため、攻撃的、また、私自身や他の読者の皆様が心を痛める発言は静かに心に秘め、お控え下さい。

誤字脱字や言葉の間違いは腹心の友です。おめめに映ったらこっそりと優しくお教え下さいませ。



それでは、共に素敵な旅へと参りましょう!

 翌日、朝食を食べ終えた僕らは、早速グラウの家へと向かっていた。


 「ここだ。ここに、俺の母さんがいるんだ。」

 そう言ってグラウが示したのは、雨風を凌ぐのもやっと、というような小さな小屋だった。


 少し時は戻り、朝食を食べ終えて直ぐのこと。

 「それでは、グラウ。あなたがこの薬草処、リヒトを訪ねてきた理由をお尋ねしても良いでしょうか?」

 店の前に準備中の札を下げてきたヴィルフが、手近なソファにゆったりと腰掛けながら切り出した。

 「あっ! タブ、紅茶を淹れてきて下さい。タブが淹れてくれる紅茶はとびきり美味しいですからね。」

 「褒めても何も出ないぞ。自分で淹れようと思ってたけど座っちゃったから面倒くさいだけだろ。」

「いえいえ、そんなことは無いですよ。私は本当にタブの紅茶が世界一だと思っていますからね。それに、もうソファが私を離してくれないんです。」

 僕はヴィルフの冗談を無視して、人数分の紅茶と一緒にクッキーをテーブルに置いた。ヴィルフがニマニマしている。気持ち悪い師匠だ。

 紅茶をニ、三口程飲むと、グラウが口を開いた。


 「母さんは、俺が赤ん坊の頃に父さんを亡くしてから、ずっと一人で俺を育ててくれているんだ。贅沢はできないけど、庭で俺の好きな花を育ててくれたり、誕生日には祝ってくれたり、最高の生活だった。息子が楽しく過ごせるようにって、一生懸命だった。でも、一年前、俺が11 歳になった翌日から高熱が続いて。日に日に弱っていくんだ。肌も弱くなって、今は布か何かを巻いておかないと陽の光を浴びたり物に触れたり出来ないんだ。半年前からは起き上がれなくなった。村の奴等は、そんな母さんを見捨てたんだ。前は、母親一人で頑張って息子を育てているって言って応援していたのに。終いには、村の外れのボロ小屋に母さんを閉じ込めたんだ。使えないからって。村民に移ったらいけないから必要なことだって村長は言っていたけど、絶対に違う理由がある筈だ。だって! 母さんとずっと一緒にいた俺は病になってないんだ!! 母さんのために、村の人に頼まれる仕事は何でもやった。母さんを見殺しにしようとしてる奴等なんかどうなったって良いけど、そうしないと母さんの薬代も賄えなかったんだ。なあ、あんたら薬草師なんだろ? この城下町で一番って風の噂で聞いたんだ。母さんを助けてくれよ! 俺じゃ薬を買うのがやっとなんだ。それも、十分な量は買えない。何だってする。一生かかってでも代金は払う。だから。だから!!」

 ヴィルフは静かにグラウの話を聞いていた。


 そして現在。グラウの母が居るという小屋の前。

 「母さん、ただいま。城下町の薬草師の人たちを連れて来たよ。もう大丈夫だよ。きっと、元気にしてくれる。」

 グラウの母は、窓辺の小さなベッドに横たわっていた。呼吸も浅く、肌は血の気が失せていた。外界を知覚出来ているかどうかも怪しいが、グラウの声には反応しているのか、ほんの少しだけ瞼が動いた。


 ヴィルフの見立てによると、グラウの母は全身に巡ってしまった毒によって常人よりも身体機能が低下し、抵抗力が著しく落ちている、とのことだった。

 「タブ、コップ1杯分の温かい水を用意して下さい。私は先に、今後飲んでもらう薬を作っておきます。」


 毒の正体は、この村ではよく見られるという、灰色の花であった。名前は、文字通り、「灰色花」と書いて、「カイショクカ」と読む。この花に触れるのみでは害はなく、種子は薬にもなる。毒と薬は紙一重なのだ。日陰を好み、大木の下などでよく見かける花だ。


 温かい水をヴィルフの元へ持っていくと、ヴィルフは右手の小指の先を水に浸けた。すると、水は、深くも優しい青色に光りはじめ、一瞬、星空のように瞬いた。

 「何をしたの?」

 グラウが不思議そうに尋ねる。魔法を見るのは初めてのようだった。

 「これは、水に毒素を浄化する意思を伝える魔法です。この水を体内に取り込むことで、負担なく毒素を排出することができるようになります。後は、先程私が調合した、この水薬を飲ませて下さい。一ヶ月程したら、自力で歩ける程度には快復すると思いますよ。」

 グラウに、一週間したらまた様子を見に来ると告げ、僕たちは帰路についた。


 「なあ、ヴィルフ。」

 「どうしましたか? タブ。何か相談事があるのではないですか?」

 「ぐっっ。何で気付くんだよ。灰色花の毒ってさ、複雑な行程を経ないと抽出できないんだよな?」

 「そうですねえ。大体、10年程でしょうか。そして、毒を摂取してから起き上がれなくなるまで半年はかかりますね。」

 「なあ。グラウの母さんが灰色花の毒に侵されてるのってさ。 ...。グラウの村の奴等の仕業なんじゃないか?」

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