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冷たい雨の温度  作者: カキツバタ
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2. 灰色―1

こんにちは!

私の作品にご興味を抱いて下さり本当にありがとうございます。

お話によっては残酷表現が含まれるかと思いますがその場合はお話が始まる前にお知らせ致します。苦手な方はご注意下さい。

上手に書けないのでお恥ずかしい限りですが、それぞれの解釈にて少しでも希望を受け取って頂けると嬉しいです。


ご感想やブックマーク等々頂けると飛び上がって喜びます!三日三晩踊り続けます!

私は心がお豆腐のため、攻撃的、また、私自身や他の読者の皆様が心を痛める発言は静かに心に秘め、お控え下さい。

誤字脱字や言葉の間違いは腹心の友です。おめめに映ったらこっそりと優しくお教え下さいませ。



それでは、共に素敵な旅へと参りましょう!

 今は6月。雨の多い季節だ。

 僕の師匠であるヴィルフリードが営んでいる薬草処、リヒト。以前、とある老夫婦から譲り受けた建物で、広い訳では無いが居心地が良く、存外に快適な空間だ。小ぢんまりとした店の外装は、名前のない蔦に覆われている。初めて会った時にヴィルフから教えられた気がするけど、覚えていない。だから名前のない蔦、というのが名前だ。今考えた。


 カランコロン。

 店の扉に付けられた、涼やかな音を奏でるベルを鳴らした人物が、一人。

 .....。 .....? .....一人? いや、人か? 誰だこいつは。というか、何なんだこれは。

 ベルを聞きつけて扉に目を遣ると、ふらふらと揺れている大きな灰色の布。中には背の高い人間が入っていそうだが、顔があると思しき位置から視線を感じない。


 .....バタン。

 訝しく思っていると、布が倒れた。変な表現だけど。びっくりしたから。

 少しだけ。いや、かなり怖いけど、そっと近づく。すっっっっっごく怖い! お化けなんて信じてはいないけど! いるわけないし!! 会ったこともないし!? 

 でもまあ、一応は僕も薬草処の店主の弟子だ。薬草とそれに関する知識は、苦しんでいる者を助けるためにあるのだ。師匠が大切にしている、というのもあるが、何よりも僕が大切にしたいことなのだ。

 万が一、いや億が一、お化けの時は師匠に押し付けよう。そうしよう。

 そうして、灰色の布を捲ってみた。


 「ギャ−−−−−!!」


 ドタバタドッタン!!!

 「どうしました!? タブ!!」

 二階の自室から慌てた様子のヴィルフが降りてきた。

 「ギャ−−−−−!」

 「わあっっっっっ!!」

 ヴィルフは、二人の少年たちに目を遣った。一人は、痩せ細っており、青白い顔をした見知らぬ少年。ギャ−−−と叫んだ方だ。そしてもう一人は、自身の弟子のタブ。どうやら、少年は僕をみてびっくりしたらしい。僕もびっくりしちゃったじゃないか。別にお化けが怖くてビクビクしてた時に叫ばれたからとかではない。断じて違う。大きな声に驚いただけだ。

 少年は、ふらふらとした足取りで立ち上がり、僕たちと店内を見やった。足元には灰色の大きな布と長い木の棒が落ちている。長い木の棒によって、背の高い人間、つまりは大人に見せていたようだ。

 ヴィルフはすぐに理解した。見知らぬ少年はここ数日、水しか口にしていないこと。そして、何らかの労働により、かなり体力を消耗させていることを。

 そこで、少年を見て考え込んでいるタブに声を掛ける。


 「今夜の夕飯は温かいリゾットにしましょうか。私が用意しますから、空いている客間を使えるようにしてきてくれますか?」

 「そうだな。火傷すんなよ。」

 そう言って、タブは二階へと続く階段へと消えていった。

 「ええ、もちろん。それでは、灰色の布と共に来た少年。ここまで来てくれてありがとうございます。私たちはこれから夕食をとる予定でしたから、あなたも共に食卓を囲みましょう。まだ18時過ぎなので、夕食の後はお風呂で温まって、たっぷり睡眠をとって下さい。明日、朝食を一緒に食べてから、私たちにあなたのお話を聞かせて下さいね。」

 「で、でも。家で母さんが待っているんだ。帰らないと。それに.....。」


 少年の名は、グラウといった。短く切り揃えられた茶髪に、薄い素材の上着とズボンを着用している。グラウは話すこともしんどくなってきたようで、それきり、黙り込んでしまった。

 「大丈夫ですよ。あなたの母君には、あなたが明日戻ることをすでに伝えてありますから。今夜はここでゆっくり休んで下さい。明日、共にあなたの家へ向かうとしましょう。」

 ヴィルフは、グラウを安心させるように温かい笑みを向けた。

 「さてと、私は温かいリゾットを拵えるとしましょうか。グラウはテーブルについておいて下さい。すぐに白湯を持ってきますね。」

 ―――――。

 「―――――熱っっっっっ!!」

 キッチンからヴィルフの大きな悲鳴が聞こえた。


 「美味いぜ、ヴィルフ! 久しぶりにリゾットを食べたけど、すんごい美味い!」

 「それは良かったです。私も腕によりをかけて作った甲斐があるというものです。」

 「腕によりをかけてって...。単に腕捲くりしてから作っただけだろ。まだ捲ってるし。しかもしっかり火傷してるじゃないか。もちろんって言ったのに。もちろん火傷しますよって意味だったのかよ。」

 「あっはは。皿に盛る時に間違えて熱々の鍋に触っちゃったんですよね。大事に至らなかったので許して下さい。後、腕捲くりとかの形から入ることもとっても重要なんですよ、タブ?」

 「はあ!? どっちかって言うと気合いまで入れて欲しかったぜ。」

 「腕を捲っていると気合いが入っているように見えるでしょう? 便利ですよね。それに、美味しいって言ってくれたじゃないですか。ほら、グラウも美味しそうに食べています。ね、グラウ?」

 「...何で見ず知らずの、名前も知らない人間に食事と寝床を用意するんだ? 自分で言うのも変だけど見た目も怪しさマックスだ。あんたら変だよ。危機感が無い。」

 グラウは、店主とその弟子に怪しむような、観察するような視線を向ける。ヴィルフと僕は二人して顔を見合わせた。そして―――。


 「「ここが薬草処だから。」」


 向かいの席に座る少年、グラウに対する師弟の回答は同じであった。僕としては同時に言ったのは気に食わないけど。でも、発言に嘘はない。きっとヴィルフも同じような気持ちなんだろう。

 ちなみに、グラウは目を白黒させている。分かるよ。言葉が足りないことは。でも.....。

 ヴィルフが、グラウの灰色の目を見据えて口を開いた。


 「私たちは、あなたを助けたいと思った。それは、理由として十分成立するものですよ。」

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