「あこれ婚約破棄されるなぁ」と思ったら!
「おい! 貴様は何故そうも女性らしくないのだ? 毎日毎日この私が"わざわざ"茶会に誘ってやってるというのに、いつも『王妃教育も終盤に差し掛かっているから』なんて理由でそれを断って……終盤ならもういいではないか。少しくらいサボろうがどうにでも─────」
嗚呼、うるさい。
今日もいつも通り私にグチグチと意味のないお小言を言ってくる婚約者に私は「はぁ……」「そうですわね……」と適当に相づちを打っていく。
隣に居るこの馬鹿みたいに自分に自信ありげなお方はこの国の第一王子であらせられる<<リアン・ユーグリン>>殿下。
私、<<ユヒリア・サベール>>の幼少の頃からの婚約者です。
短い金髪に碧眼で高身長。Theイケメン、って感じのこの国の王子様。
対して私は長い白髪に藍色の瞳、スタイルは……まあまあと言った所でしょうか。
「そもそも貴様は可愛くないのだ。大抵の事は一人で熟し、婚約者である私を立てようともしない。もう少し可憐な乙女が好ましいと、誰もが思うだろうよ」
「そうですか……」
いや知らんがな。アンタのタイプなんて。
「王妃教育より、愛おしい婚約者に会いたいと。何故そう希わない。貴様は本当に女か? 少しは乙女らしく振る舞ってみらどうだ!!」
……っ言うことに欠いてっ、なんて失礼極まりないのかしらっ。
そうよね、どうせ私は可愛くないですよ。ごめんなさいねっ!
はぁ、ユヒリア、落ち着きましょう。
心の声が漏れてはいけないもの。
「恐れながらユーグリン殿下。他の国がどうかは分かりませんが、貴方様の母上、王妃様曰く、"王妃教育は終盤が本番だ"とのことですわ」
「はっ、それがどうしたんだ?」
「………ですから、この国のため国民のため、私は王妃教育を粗末には──────」
「ふっ、この国のことなど知ったことか」
………………はあああああっ?!
何それ!! 第一王子が言うこと?! たとえそんなこと思っていたとしても言っちゃいけないでしょうっ。思っててもダメだけど!
ホント何なのこの人?! この国の行く末が心配でならない。こんな人に国を任せたくないっ!
こんなのでも幼少の頃はマトモだったのよ。
『俺は世界で一番強い王様になるんだ』とか言っていて、その頃は私もこの人のこと好きだったから『リアン様カッコイイです。リアン様ならきっとなれますねっ』なんて言っていたのよ……。
嗚呼、私ってばなんて哀れ……私もこの人もあの頃は可愛かったんだわ……。
そんな彼も今となってはこうして私に馬鹿なことばっかり言う"馬鹿なお小言製造マシーン"になっちゃって。
人って変わるのね。
三年くらい前まではまだちゃんとした人だったし、他人からの人望も厚かったし、私もまだちゃんと好きだった。
今はこんなんで、最低なことを言ってきたけれど、それまでは私の体調とか気遣ってくれていて。互いにお茶会は苦手だからって二人きりのデートを沢山して。
素敵な関係を築けていた。
でもそれからだんだんと……疲れが溜まっていたのか、何なのか分からないけれど変わっていっちゃって……。
「おい、聞いているのか!」
嗚呼、私はいつの間にか貴方の声を聞くだけで頭痛がしてくる身体になっちゃいました。
「はい。もちろんでございます、殿下」
「ふんっ、貴様、本当に可愛げがないな」
昔は私のことも『貴様』じゃなくて『ユヒリア』って優しく呼んでいたのですがね。
そういえば、自分のことも前は『俺』って言ってたわね。『私』なんて言っちゃって。そこは品が付いたのかしら?
「申しわけございません」
「はああああああああああああああぁぁぁ、まあいい」
どデカい溜め息つくわね。
そんな肺活量あったんですか。知らなかったわ。あと何がいいのかしら?
「これで貴様ともお別れだからな」
───────え?
あ、これは。
「<<ユヒリア・サベール>>公爵令嬢!本日をもって私は」
婚約破棄、されるわ……?
確信しました。珍しく強引に宮殿で二人だけのこの茶会を開いたのは婚約破棄を言い渡すためだと。
悲しくはない。
だって別にもう好きでもないし。
私が好きだったのは五年前までの彼だし。
あの優しかった頃の彼だし。
優しい声色で私の名前を呼んでくれていた頃の彼だし。
人が全く変わってしまったこの人ではないのだし。
こんな人、私が好きだった人じゃない。
こんな人、私は知らない。
こんな人、私は好きじゃない。
その身体の中に全く別の人が入ってしまったと言われる方がまだしっくりくる。
そう、別人なのよ。貴方は。私が恋していた人とは。
こんな人、こっちからごめんです。
「貴様との婚約を、は──────」
─────────────ん?
…………何? 続きを、言わない? え?
突然動きを止めた殿下。
え? な、何?
続いてとても苦しそうに胸を抑えている。
え、ど、どうしたの???
「で、殿下………?」
流石に怖くなってきた私は殿下の肩に触れようとして────
「──────ああああああああああぁぁぁっ!!!」
「ひゃっ?!?!?!??!?!?!?!」
急に叫んだ殿下に肩をビクつかせ、目を丸くした。
な、何? 急に叫んだ?! つ、遂に完全におかしくなっちゃったの?!
この人、怖いっ!!
外で待機していた私と彼の護衛達も何事かと入ってきて私は視線で助けを求める。
「「ユヒリア様!」」
私の護衛の何人かがこちらに駆け寄ってきてくれたので私も向かおうとした。そしたら。
「──────ない、ぞ」
「……は、はい?」
殿下が急に何かボソッとつぶやいた。
「で、殿下?」
「俺は……しない」
「な、何を、ですか?」
「俺は、…………婚約破棄なんて絶対に────しないッ!!」
室内に響く彼の怒声。
え?
いや、な、何で?? だって話の流れ的に絶対に婚約破棄の…………。
「ユヒリア」
「えっ」
この人、今、何て?
今、ユヒリアって、そう、言った?
え?
「なぁ、ユヒリア。俺のこと、覚えてるか?」
「ぁ…………」
この人、知ってる。
知ってる口調。
知ってる眼差し。
知ってる声色。
知ってる。知ってる。知ってる。
この人は、私の好きだった頃の。
リアン様だ。
「リアン様…………?」
「ッ!!ユヒリアっ」
何が起きているの?
私は事態を把握出来ない。周りの護衛達も。
ただ分かるのは、彼が私の大好きなリアン様に戻ったことだけ。
…………え?戻った?
「あ、あの……ほ、本当に、リアン様なのですか……?」
「ああ。俺はリアン。リアン・ユーグだ。この国の第一王子でユヒリアの婚約者だ」
「ッ!!!」
ああ、これは。
この方は、リアン様だわ。
「ユヒリア」
「リアン様」
リアン様が私の頬に触れて、私は目をうるわせる。
「ユヒリア、聞いてくれ」
「はい、何でしょうか」
「俺は……この四年間、悪魔に身体を乗っ取られていた」
「ぇ、あ、悪魔にですか……?」
「ああ。そうだ。元々この国を狙っていたらしい悪魔は四年前、禁忌の魔法でその魂で俺の身体に乗り移った」
「禁忌の…………」
この世界にはいくつか禁忌とされている魔法がある。
それは時空を超えるもの、生死を意のままに操るもの、多くの生命を脅かすもの、そして、魂を取り扱うもの。
「で、ではっリアン様はその間は─────」
「俺は……封じられていた。この身体の中には居たのだが、そうだな。分かりやすく言えば身体の主導権を違う誰かに握られたって感じだ」
なっ、なんてことなの?!
確かに"身体の中に別の人が入ってしまったと言われる方がまだしっくりくる"とか思ってたけど、こんなっ、アリなの?!
「でっでも私……全然……っ」
気づかなかった……。
あんなに大好きだったのに、気づかなかった。
泣けてくるわね。
「いや、ユヒリアはちゃんと気づいてくれていた」
え?
「え、いえ、でも、」
「言っただろ? "禁忌"って。奴は、アイツは、その魔法を使ってお前のその時疑った記憶を強制的に消し、疑わせないように工作したんだ」
もちろん、他の者達にも同じように。とリアン様は続けた。
「そんなっ」
じゃあ、私達は悪魔の手の平の上で転がされていたってことなの?
背中に冷や汗がわく。
心なしか、身体が震えてくる。
「リ、リアン様っその悪魔は、今どこにっ────ぁっ?!」
「ユヒリアッ!!」
その時、急にバッとリアン様が私を抱きしめた。
甘い抱擁と言うより護りに近いそれに私は何かが起こったと感付く。
【あーあぁ、なぁんで出てこられたんだよ】
ゾッとした。
低い声。
また身体が震え出したのはその声に、声の持ち主に恐怖したから。
室内の気温もまるで、いえ、確実に下がっていた。それが現れた瞬間に。
【はぁーもう少しで私の国となっていたであろうに……何てことだ】
悪魔が囁く。
「………………」
リアンは私を抱きしめながらそれをただじっと睨んでいる。
【その妙に聰い小娘を排除すれば私は、この国を手に入れられただろうに。はぁ、全く参った】
私はリアンにしがみつくことしか出来ない。
「おい、悪魔」
【何だ小僧、貴様にはもう用はない。小娘もろともここで死んでもらう】
「いや、死ぬのはお前だ」
【はぁ? フッ、ハハハハハハ! 何を言っているのだ。人間の身でこの私を殺すのか?】
「ああ、そうだ」
【寝言は寝て言えこの馬鹿王子。貴様は弱い。だからあの日、私に身体を乗っ取られたのだろう】
リアン様がピクリと反応する。
「リアン様……」
「大丈夫だ、ユヒリア」
しかし私が不安そうな声を出すと彼は優しい笑みを向けてまた悪魔に果敢に向き合った。
「そうだな。俺は弱かった。だからお前の禁忌の魔法にかかった。しかしそれは過去のことだ」
【今は違うと?】
「ああ」
【ふっ、そこまで言うのなら見せてみ─────ッ?!】
そこで、悪魔は急に言葉をなくした。
えっ?
不思議に思ってリアン様に向けていた顔を悪魔の方に向けると。
そこには地面から飛び出た光の糸でグルグル巻きにされた悪魔の姿があった。
「あ、あれは…………」
光の粒子を操る魔法。リアン様がお得意な魔法だわ!!
【なっ、何だこれはっ!!】
「俺の得意魔法だよ、悪魔。あの時は不意打ちで為す術なくやられたが、今度はそうはいかない。愛しの婚約者が居るんでね」
【クッ! こんな拘束ごとき……………………っ?!】
「死ね悪魔!! マジ・デ・ラ・モート!!!」
【そっ、それは──────禁忌のっああああああああああぁぁぁ!!!】
瞬間、悪魔の身体は漆黒の闇に包まれ、それに飲み込まれる。
みるみるうちになくなっていくその身体に抵抗するという権利はなく、ただ魔法に侵されるまま、呆気なく悪魔はその命を落とした。
「……す、すごい……」
私は何もすることが出来ずに見ているだけ。
「?!」
グダっと、何かがのしかかるような感覚でハッとした。
「リ、リアンッ!」
振り向くと私に身体を預けたリアン様。私はそれに耐えきれず二人して床に座り込む。
「リアン様、大丈夫ですか?!」
「ああ、大丈夫だよユヒリア。悪いな。しかし、禁忌の魔法というのはやはりと言うか、疲れるなぁ」
ははっ、と笑うリアン様。
「リアン様……」
「安心してくれ、ユヒリア。もう大丈夫だよ」
「ですが、リアン様が」
貴方が大丈夫には見えません。
恐らく大量の魔力を消費したでしょうに。
元々王族は魔力が多い一族とは言え、禁忌の魔法を使ったのだ。
疲れる所の話ではないだろう。
「リアン様、お待ちください」
「ユヒリア?」
私の得意魔法は回復魔法。こんな私ですが、回復魔法はこの国一と言われているのです。
回復魔法と同時に私の魔力を彼に流し込めば少しは、気休め程度には楽になるはずです。
「ユヒリア、何を……」
「キュアー」
私はリアン様の胸の位置におでこをコツンと当て、祈る姿勢を取って唱える。
すると彼は流石に私のやろうとしていることが分かったのか、「ユヒリアッ!」と焦ったように私の名前を叫んだ。
でも、でもね。
もうしちゃってるから止められないんです。
だってもう唱えちゃった後ですし?
許してリアン様!と心の中で舌をペロッと出しながら彼に謝る。
だって、愛しの婚約者様のためですものね。
リアン様に魔法をかけ、魔力を送り続ける。
どのくらいが経過したのでしょうかね、リアン様が「ユヒリア、もういい」と私を強引に引き剥がした。
「これ以上魔力を送り込んでいたらユヒリアが死んでしまうぞ……」
と困ったように呟く。
「リアン様、お身体の具合は……」
「ああ、流石はユヒリアだな」
それは肯定の返事。
「良かった………」
私は今度こそ安心して身体の力を抜いた。
「助かったよユヒリア」
「いいえ、それは私のセリフですよリアン様」
そして私はリアン様の胸の中にダイブした。驚きつつもしっかりと私を抱きしめてくれるリアン様。
「うぉ?! ハハっ、どうしたんだよ」
「いいえ〜? ふふっ」
「ん?」
「何だか久しぶりですね、この感じ」
「ああ、そうだなぁ」
「お強くなられていたんですね」
「当たり前だろ? 俺はこの国の第一王子だぞ」
「カッコイイですよリアン様」
それから私達は宮殿の兵士達が来るまで護衛達ににこにこと見守られていた。
この一連の出来事はリアン様が国王様王妃様、並びに国の重鎮達に直々に報告された。私も同行したのだけれど皆様のお顔の青さと言ったら……もう、何か、可哀想になるくらいでしたよ。
重鎮の一人である私のお父様は『まぁ、何はともあれ良かった。このままリアン殿下が我が娘を蔑ろにしていたら偽物と言えども斬っておったわ』と真顔で言ってリアン様並びにその他の皆様のお顔をもっと青くさせていた。私も冷や汗が止まりませんでした。
因みに私のお父様は、国王様と幼なじみで剣の腕はピカイチ。国の重要騎士団を大陸最強と言わしめる程に育て上げた凄腕騎士なのです。
まあ、結構色々なことがありつつ悪魔の事件は幕を閉じたのでした。
それから二年後。
今日はリアン様と私の結婚式です。
私は花嫁用の純白のドレスを着て普段は下ろしている白髪を後頭部で結っている。
薄めのお化粧もした完璧な花嫁姿。
「ユヒリア様、素敵ですよ」
「ありがとう」
リアン様、何て言って下さるかしら……?
ドキドキと高鳴るばかりの鼓動を何とか抑えようと苦悶していると、扉を叩く音があった。
「ユヒリア? 良いか?」
リアン様っ!!!
勢いのまま立ったあまりガタッと椅子が音を立てる。
「? ユヒリア? 大丈夫か?」
ああっリアン様が心配してるっ、私のばかっ恥ずかしいわっ。
メイド達が私の様子を温かな眼差しで見守ってくるのが恥ずかしさに拍車をかけてる気がするわ!!
「どっどうぞ」
声裏返ってないわよね? お顔赤くない?
ガチャリと扉が空いて「失礼すとる」とリアン様が足を踏み入れる。
「ユヒリ…………ッ!!」
「……? リ、リアン様? どうなされなのですか? あっ! まさか、に、似合ってませんか?」
「い、いや違う!! 決して似合っていないわけじゃ────そのっ、と、とても」
「とても…………?」
「美しい。綺麗だよ、ユヒリア」
「?!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!
ああっ何でこういう時に限って王妃教育の賜物を発動出来ないのよ?!
あ、なんか今、王妃様の『そこは発動しなくていいのよっ』てルンルンなお声が聞こえてきたような……。
「ユヒリア」
「リアン様、その……」
「?」
「リアン様もとても素敵です」
お顔に熱が集中してることなんて忘れなさいユヒリア! リアン様のお顔を見てちゃんと素敵って言うのよ!!
「ッ!!」
自分を奮い立たせてリアン様の顔を見ながら素敵と言った私。
ああ、頑張ったよぉ。帰ったら自分を褒めなくちゃぁ。
「ぇ?!」
しかしその発想も二秒後には遥か彼方へと忘れてしまう。
何故ならば私は瞬きをした瞬間、何かに身体を覆われたから。
えっと…………んっこれは?
取り敢えず顔を上にあげてみる。すると、どういうことか。
私はリアン様に抱きすくめられていた。
「リッ?! リリリリアン様?!」
「ん?」
「あの、は、はなして─────」
「無理だなぁ」
「えぇっ!?」
「ユヒリアが可愛いのが悪いんだぞ?」
「はい?! な、何をっ?!」
「事実を言ってる」
「そういうことではなくて! ちょ、しっ式に遅れますっ!」
「少しくらい遅れても─────」
「ダメですっ! 国王様や王妃様もいらしてるんですよ?!」
「いや、でも……」
「結婚すれば抱き合うことなんていつでも出来ますから!!」
「言ったからな」
「へ?」
「じゃあ、行こう。ユヒリア」
リアン様は私に手を差し出す。
私はその手を取る。取るのだけれど…………。
「あ、あの、リアン様……」
「ん?」
「その、先程の……”言ったからな”とは……」
「そのままの意味だぞ?」
この人……まさか言わせたの?!
顔を驚愕の色に染めた私を見てリアン様は笑う。
「ごめんごめん、でも聞いてみたかったんだよユヒリアの口から。もうしないさ」
「……………………」
リアン様にエスコートされ、会場の扉の前に着く。
リアン様はそのまま入ろうとして、私が足を止めたのに気がついた。
「ユヒリア?」
「…………リアン様」
「?」
「沢山、抱きしめてくれますか?」
リアン様が目を大きくする。
「沢山、その……キスとかもしてくれますか?」
「ああ、もちろん。沢山抱きしめるしキスもするよ」
「幸せになろう、ユヒリア」
「はい、リアン様」
扉が開く音。と同時に拍手喝采。皆の笑顔。
隣の人の、リアン様の微笑み。
ああ、私、幸せだわ。
一度は婚約破棄されると思ったことだってあったのに。人生、分からないものですね。
まさかこんなに幸せになるなんて。
あの頃の私、ビックリするでしょうね。
あのね、貴女の大好きな人はちゃんとそこに居るのよ。
ずっと貴女を見てくれているわ。
こんなに素敵な結婚式もしちゃって。
ねえ、これからもっと素敵なことが起きるのかしら。わくわくするわね。
だから、もうちょっとだけ、頑張ってね?
過去の私に思いを馳せて、私は今を見る。
「新郎<<リアン・ユーグリン>>、あなたは<<ユヒリア・サベール>>を妻とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい、誓います」
「新婦<<ユヒリア・サベール>>、あなたは<<リアン・ユーグリン>>を夫とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい、誓います」
「それでは、誓のキスを」
こうして。
とある国の、婚約破棄を悟り、しかし直後にそんなことは絶対にしないと言われた令嬢は、その国の第一王子と結婚し、その生涯を国のために、そして夫のために捧げ。
また夫からもそれ以上の愛を貰い、幸せに暮らしましたとさ。
最後までお読みいただきありがとうございました。
是非、誤字報告や感想、評価にブクマ等よろしくお願い致します。
その他短編達も是非。